ダイハツは2023年5月19日、緊急記者会見を行ない、新たにダイハツ ロッキーとそのOEMモデルのトヨタ ライズのハイブリッド・モデルのポール側面衝突試験(UN-R135基準)に関する認証手続きに不正がある事が判明し、この2車種の出荷・販売を停止したと発表した。
今回不正が発覚したコンパクトSUVのロッキー/ライズ・ハイブリッドは竜王工場で生産されている。発売は2021年11月で、認証が行なわれたのは2021年6月。累計販売台数は2023年5月18日現在で、ロッキーが2万2329台、ライズが5万6111台となっている。なおいずれも実際の安全基準はクリアしているとしてリコールなどは行なわれない。
周知のようにダイハツは4月28日に海外向け車両の側面衝突試験(UN-R95)の認証申請で内部通報により不正行為が発覚し公表したが、今回はその後の社内点検で、新たに5月18日に安全基準の1項目であるポール側面衝突試験(UN-R135)に関する認証手続きに不正が見つかり、翌日に国交書に報告が行なわれている。
国際的な保安基準・安全基準の共通化に従い、日本でも採用実施されているポール側面衝突試験(UN-R135基準:電信柱などポール状の障害物に側面衝突したときの乗員の傷害基準、ドアの脱落、燃料漏れの有無をテストする)では、左右の両方向からの試験を行ない、その試験データを国交省に提出する必要があるが、ロッキー、ライズのハイブリッド・モデルに関しては助手席側(左側)は立会いのもと試験を実施し、運転席側(右側)は別途試験を実施し、その社内試験データを提出すべきであったが、左側の試験結果のデータを提出したというのだ。
つまり右側の試験を省略し、テストの工数、時間短縮を図ったと考えられる。会見で奥平総一郎社長は「社内で検査した結果では閾値に対して余裕のある数字だった」ため、安全性には問題ないと説明しているが、改めて国交省と協議することになる。
またダイハツは、海外向け車両の側面衝突試験での不正発覚後に第三者委員会を設置しているが、今回の件も第三者委員会で調査が行なわれることになる。
必然的に、不正の全容解明やその原因の考察に加え、組織のあり方や開発プロセス検討を加える事が必要である。しかし、2件の不正はいずれも部署間のコミュニケーションの不足、あるいは実験部門の工数省略が行なわれており、開発期間の厳守、あるいは実験部署の人員不足など構造的な問題点が存在していると推測することができる。