新型クラウンのもう一台2.4Lデュアルブーストハイブリッドシステムを搭載したモデルに試乗してきた。新型クラウンはクロスオーバーデザインで登場し、2.5Lのシリーズパラレル式ハイブリッドを搭載したモデルの試乗レポートはお届けしているが、今回はもう一つのパワートレインを搭載した「RS」に試乗してきた。
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前回のレポートではクラウンが4つのキャラクターになってドラスティックなシフトチェンジを行ったことをお伝えしている。その中で今後、ロングホイールベースのセダン、スポーツ、エステートも発売になるが、国内に導入されることも確認できた。ラインアップは2023年中には4つのモデルが国内でラインアップする。詳細は分かり次第お伝えしたい。
ところが、つい先日ロイター通信からクラウンのスポーツ、エステート、セダンの開発見直し報道があった。「EV戦略見直し検討。クラウンなど開発一時中止=関係者」という報道。世界は想定していたEV化よりも早く、そしてレベルの高いプロダクトが続々と出てきており、従来のEV戦略を見直すという内容のものだ。ただし正式にはトヨタからのアナウンスは出ていない。
RSに搭載されるデュアルブーストハイブリッド
さて今回試乗した「クロスオーバーRS Advanced」は4気筒2.4L+ターボにモーターを組み合わせたハイブリッドモデルで、トヨタでは「デュアルブーストハイブリッド」と呼んでいる。仕組みはエンジンT24A-FTS型を横置きに搭載し、6速のATを組み合わせている。ATにはトルコン部にモーターを組み込み、出力軸と同軸上にレイアウトしクラッチで接続する構造だ。
縦置きであれば欧州車のプラグインハイブリッドでオーソドックスな、エンジン→クラッチ→モーター→クラッシ→ミッションという伝達方法だが、横置きでこのレイアウトになっているモデルは記憶にない。そしてリヤにもモーターを搭載したE-Fourでe Axleという水冷式を搭載したAWDモデルとしている。ちなみにバッテリーはバイポーラ型のニッケル水素バッテリーを採用している。
ハイブリッドシステムの総出力は257kW(349ps)で、エンジン本体は200kW(272ps)/460Nm、フロントモーターは61kW/292Nm、そしてリヤモーターが59kW/169Nmと強力なパワートレインとなっているのだ。ちなみに、リヤモーターのe AxleはbZ4Xのリヤモーターと共通のユニットだ。
プラットフォームはGA-Kだがクラウン用に改良された、いわばGA-K改とも言えるものでSUVの要素とセダンの要素を活かせる工夫がされたプラットフォームということだ。
さらに、このパワートレインにはDRSという後輪操舵システムも組み込まれており、かなりスポーティな仕様に仕上がっているのだ。
排気量100ccの差でキャラが激変
さて、試乗してみるとそのパワフルさに驚かされる。デュアルブースト・ハイブリッドのパワーは遺憾無く発揮され国内のどんな条件の道路でも余裕の走りを見せる。もちろん充電状況次第でEV走行もあり、クラウンに求められる静粛性も高い。
もっともスポーツモードで果敢な走行をしている時には、エンジンの音が気持ちよく聞こえるので、もっと演出されたサウンドを響かせてもいいのではないかと思えるほどだった。前回お伝えした4気筒2.5Lハイブリッドではエンジン音を抑えてほしいと思ったものだが、その違いはエンジンの音の質だ。
聞いていて「うるさい、やかましい」と感じた2.5Lには静粛性を求め、「心地よい、いい音」と感じた2.4Lにはさらなる演出を期待した。じつは2機とも同じダイナミックフォースエンジンなのだが、2.5Lはアトキンソンサイクルで運転されているエンジンであり、音の作り込みとは無縁に位置付けられているエンジンだからだろう。そうした違いは走行フィールでも味わえるので、わずか100ccの違いではあるが、クルマのキャラクターも大きく違っているというわけだ。
さて、そのパワフルなデュアルブーストハイブリッドにはDRSも組み込まれている。これが実にいい仕事をしており、AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)というトヨタの電子制御連続可変ダンパーと連動して乗り味を作り込んでいた。
後輪操舵が生み出すコーナーリング
「コンフォートモード」では高級車らしいふわりとした乗り心地で、いかにも高級セダンという印象を与える。一方で「スポーツ+」モードにするとステアリングの手応えもしっかりとし、サスペンションも引き締まる。さらにコーナリングでは踏ん張り感が増し、安心のコーナリングが可能なのだ。
これはDRSの効果が高く、車速によって同位相、逆位相に切れるリヤタイヤが作り出す新しいコーナリングの世界だ。従来は旋回と同時にリヤも操舵されているため旋回軸が車両の中心軸から外れてしまうため、ドライバーは違和感として感じ、また直線においても落ち着きのない、いわゆる座りの悪い走りになっていた。
これがモーター制御となりマイクロ秒でのコントロールができるようになったことで、ドライバーは違和感を感じることなく、安定した座りのよい走りと踏ん張りのあるコーナリングという恩恵を得ることができている。加えてE-Fourというリヤモーターの駆動力もあるため、リヤからの押し出し感も旋回力を高め、レベルの高いコーナリングを体験することができるのだ。
ちなみにDRSの制御ロジックの説明はなかったが、ステア操舵の操舵角、操舵速度、アクセル開度、アクセル開度速度、横力センサー、車速センサーなどのデータからモデル(MBD)を作り出していることが想像される。さらにステア操舵のタイミングと作動タイミングの違いの可能性もあると想像する。モデルとは、例えば車速と操舵角を縦軸と横軸にとり、微分した数値をマイクロ秒ごとに積み重ねていくやり方で、縦軸と横軸にどのデータを置くのかがポイントになっている。
このように、かつても「RS」というグレードはあったものの、ここまでスポーティに走れるモデルではなく、あくまでも高級セダンの中でのスポーティなモデルだった。しかし新型クラウンのRSはそのレベルアップの度合いは高く、高級セダン(クロスオーバー)の走りを凌駕していると言っていいだろう。
斬新なデザイン、想像を超える走行性能、あらゆるものが新設計された新型クラウンはたくさんの新しい価値を提供していると感じた。既存のクラウンカスタマーもいい方向に驚き、そして納得すると想像する。また若い世代にはクラウンという名称は古臭いかもしれないが、プロダクトの新鮮さは感じると思う。日本のどのクルマにも似ていないキャラクターを持ったクラウンは魅力たっぷりな一台だった。
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