トヨタ 新型「クラウン」発表 !16代目は4タイプのボディで世界を翔ける

トヨタは2022年7月15日、16代目となる新型クラウン・クロスオーバーのワールドプレミアを行なった。なお16代目クラウンはシリーズ化され、クロスオーバー以外に、スポーツ、セダン、エステートをラインアップすることも発表された。ただしクロスオーバー以外の展示車両はモックアップ状態で、今後1〜2年かけて開発が行なわれるものと考えられる。

新型クラウン クロスオーバーは今秋に一部グレードを発売予定としているが、全グレードの生産が開始されるのは2023年1月以降となっている。また今秋の発売モデルはKINTO(サブスクリプションサービス)でも取り扱いを開始する予定だ。

まず最初に、新型クラウンのラインアップは、セダン以外はすべてクロスオーバーSUVテイストのデザインで、前後フェンダー部にはクラッディング(樹脂製オーバーフェンダー処理)が採用されている。4種類のラインアップで共通しているのはこのクラッディング付きフェンダー処理だけで、デザインテイストはそれぞれ異なっているのは興味深い。

また、クラウン セダンは存続するとはいえ、そのデザインは4ドア・クーペ風で、キャビン・ファーストのセダンというわけではない。

こうしたことからもこれまでのクラウン像は消滅したと考えてよいだろう。その背景を改めて考察してみよう。

固定観念を捨てブレークスルーした

最大の理由は、クラウンを支持してきた伝統的なユーザー層は老齢化し、消滅しつつあることだ。かつての、クラウンの典型的な富裕層の愛用者は、セールスマンが最新モデルの最上級グレードを連絡もなしに自宅に届け、ユーザーはその場で何もいわずに契約の印鑑を押すといった、最優良顧客であった。また「いつかはクラウン」のキャッチフレーズがあったように、企業の部長クラスが迷わず購入する車種とされ、細かな値引き交渉が求められるわけではなかった。

また、クラウンは公用車、法人所有でも定番モデルとなっており、日本のフォーマルカーとしても定着していた。

それでいて、クラウンは年間販売台数でトップ・レベルを維持し、トヨタの収益を支える超優良車種であったのだ。

しかし、こうした顧客層であるがゆえに、クラウンならではの独自の価値観が形成された。片手でくるくる回せる軽く、手応えのないステアリングが好まれ、シートのクッションはソファのように柔らかいものが好まれ、乗り心地は減衰の遅いふわふわしたモノでなければならなかった。

クラウン「スポーツ」と豊田章男社長

また、今では想像できないほど5ナンバー枠にもこだわりがあり、1974年〜1979年の5代目クラウンは、全幅で1695mmを守りながら全長は4765mmあり、きわめて幅狭で細長いプロポーションという、日本市場専用のスタイルが固守されていた。

しかし、バブル期に以降は輸入プレミアム・ブランドが存在感を増し、クラウンの価格上昇にともなって、日本専売モデルとしての矛盾が拡大して行く。伝統のフレーム構造を捨て、モノコック構造となったゼロ・クラウン(12代目:2003年)では、初めてBMW 5シリーズが開発時の参考車種とされた。

また伝統的なユーザー向けのロイヤルと、パーソナルカーとしてのアスリートというグレード展開など、クラウンならではの葛藤がそれ以後も継続する。14代目はピンク色の塗装を発表したり、15代目のクラウンは、BMW 3シリーズ、メルセデス・ベンツ Cクラスと同等の性能で約100万円廉価という訴求を行なったが、退潮にブレーキをかけることはできなかった。

ワールドプレミア会場では歴代のクラウンと担当主査が紹介されていた

輸入プレミアムカーの拡大、トヨタのレクサス導入により、クラウンの伝統的ユーザーがレクサスに流出した上に、セダン・カテゴリーは時代とともに衰退するなど状況はより厳しくなり、さらに公用車、法人車の需要もアルファード/ヴァルファイアに変化し、ついにクラウンの従来のブランドは終末を迎えたということができる。

また、クラウンは、かつてはアメリカに輸出されたが撤退し、その後、中東や中国でも販売されたがいずれも成功せず、日本専売モデルであることも事業としては大きな制約となっていた。

これらをブレークスルーし、クラウンのブランドをグローバル・ブランドに方向転換することを決定し、実現したのが今回の16代目クラウンなのである。

TNGA-Kプラットフォームを採用

新型クラウンは、大型FF用のTNGA-Kプラットフォームを採用している。今回登場したクロスオーバーのボディサイズは、全長4930mm、全幅1840mm、全高1540mm、ホイールベース2850mmで、同じプラットフォームを採用するレクサス ES、トヨタ カムリ、トヨタ アバロンとほぼ同サイズになっている。

なおアバロンは、北米市場、中国市場ではトヨタのフラッグシップとされているが、販売的には不振のため、グローバル市場で見るとアバロンの代わりに新型クラウンが投入されるということになる。

新型クラウン クロスオーバーのグレードは、2.4Lターボ+パラレル・ハイブリッド(デュアルブーストハイブリッドと呼称)+リヤ・モーターの「クロスオーバー RS」と、2.5Lエンジン+THSハイブリッドの「クロスオーバー G」、エントリーグレードの「クロスオーバー X」の3機種で、装備トリムにより、Advanced、Leather Packageなどが設定されている。

デザインは、クーペ風のクロスオーバーで、クロスオーバーらしさは前後フェンダーの黒いクラッディング、そして大径タイヤで表現している。タイヤは225/60R18〜225/45R21サイズで、外径は730mm程度となっている。

また着座位置も通常のセダンよりは高めに設定して、クロスオーバーらしくしている。ただし最低地上高は145mmで、セダンと同等になっている。

インテリアは、ディスプレイや操作スイッチを水平方向に集約した水平基調のデザインとし、仕上げはシンプルさ、上質感を追求している。

デュアルブーストハイブリッドを採用

パワートレインは、「クロスオーバー RS」はT24A-FTS型ターボ(272ps/460Nm)+モーター(82.9ps/292Nm)+6速ATを組み合わせたパラレル式ハイブリッド(デュアルブーストハイブリッド)で、リヤにe-アクスル(80.2ps/169Nm)を組み合わせたプロペラシャフトなしのAWDだ。またこのモデルは、よりモーターの出力を引き出すために、高コストなバイポーラ式ニッケル水素バッテリーを搭載している。

2.4Lターボとパラレル・ハイブリッドの組み合わせ>

新型レクサス RXで初採用されているが、ついにトヨタも高出力モデルでは従来からの遊星ギヤを使用したスプリット(シリーズ・パラレル)ハイブリッド(つまりTHS-Ⅱ)から、ヨーロッパ式の2クラッチ式のパラレル・ハイブリッドに路線変更したことは注目されてよいだろう。

2.5Lアトキンソンサイクル・エンジンとTHS-Ⅱの組み合わせ

標準モデル「クロスオーバー G」、「クロスオーバー X」は、従来からある2.5LのA25A-FXS型アトキンソン・サイクル・エンジン(186ps/221Nm)と遊星ギヤ式のTHS-Ⅱの組み合わせとし、バイポーラ式ニッケル水素電池を組み合わせている。モーター出力は119.6ps/202Nm 、リヤ・モーターは54.2ps/121Nmで、電気式AWDだが、「クロスオーバー RS」よりリヤのモーター出力は小さく、補助的な駆動になる。

なおWLTCモード燃費は、「クロスオーバー RS」は15.7km/L、「クロスオーバー G」、「クロスオーバー X」は22.4km/Lで、標準モデルは燃費指向のモデルということができる。

運転支援システムは、トヨタセーフティセンス、高度運転支援技術のトヨタ チームメイトを搭載。渋滞時の安全運転を支援するアドバンスト ドライブ(渋滞時支援)や駐車を自動で行ないリモート操作も可能なアドバンストパーク(リモート機能付)なども装備している。

このように、新型クラウンは従来のイメージとはまったく異なるグローバル・モデルに変身しており、いわば新しいクラウンのスタートとなるモデルとなっている。

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