カローラクロス試乗記(1.8Lハイブリッド AWD)アンチスポーツSUV派へ

カローラシリーズにアーバンSUVのカローラクロスが新たにラインアップし、予想を遥かに超える5倍の受注人気となっている。2021年9月に国内導入されたカローラクロスは、2020年にタイの発表から順次グローバルモデルとして各国で発表されている。今回の国内発表がオーストラリアと一緒に最後発での発表となった。

カローラシリーズにもSUVが加わった

国内では月販4400台が目標設定されているが、初動人気を踏まえても5万台の受注は驚きだ。当初カローラクロスのボディサイズは全長4490mm、全幅1825mm、全高1620mm、ホイールベース2640mmのCセグメントサイズで、幅が1825mm、全高1620mmというのがネガ・ポイントになると思った。コンセプトであるアーバンアクティブSUVというコンセプトは、都心の駐車場にはサイズ的に無理があると想像したからだ。そして同じCセグメントにはC-HRもあり、カニバリも起こるのではないか、といった理由から国内をそれほど重視したモデルではなく、あくまでもタイ、台湾、ブラジル、南アフリカなどの国々がメインだと想像していたからだ。

しかし、予想に反し大きな受注を抱えており大ヒットと言うことができるだろう。ボディサイズやポジショニングでは上のクラスにRAV4があり、下にはヤリスクロスがあり、その中間に位置しサイズ的にはC-HRと同じクラスということになる。だが、クルマが持っている方向性はそれぞれが異なっていることも分かった。

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実際に試乗してみると、ある一定層にとって魅力あふれるモデルだということが納得できる。まず、スタイリングはSUVらしい力強さがあるデザインで、真横からのルックスはスタイリッシュだ。正面の顔は好き嫌いがあるだろうが、今のトヨタデザインでまとめられ、下方向に広がる踏ん張り感のあるデザインでSUVらしいと言える。

脚の蹴り込みで開くリヤゲート。クローズ動作もスイッチで

そして装備類がオプションを含め充実しているのも人気の秘密だと思う。例えばリヤテールゲートオープナーが電動化され、脚を蹴り込む動作で開閉する。またスマホの充電も置くだけで充電できる非接触充電もできる。そしてラゲッジの使い勝手の良さ、アレンジの豊富さ、そして後席の広さなども魅力的に映るだろう。こうした、あるといいなぁと感じるものの充実度が高く、さらに配慮やおもてなし感を得られるところも高評価されているのだろう。

走行フィールもカローラシリーズとは一線を画している。カローラの歴史は古く1966年に初代が誕生し、世界150カ国で販売、5000万台もの販売実績を持っているが、そのため国内のユーザーからの支持も高く、フルモデルチェンジでドラスティックに変えることの難しいモデルでもあった。

だが、2018年に12代目となったカローラで、大きな変貌を遂げることにチャレンジしている。とりわけダイナミック性能では、欧州テイストを盛り込んだモデルを国内に投入し、高い評価を得ていた。一方で、昔からのユーザーの嗜好とは少し異なることも事実で、そうしたユーザーが納得できるというのがこのカローラクロスなのだ。

乗り心地はソフトでステアフィールも鷹揚な反応。近年の欧州テイストSUVはスポーツカーチックにレスポンスがよく、動きすぎると感じているユーザーもいる。そうしたユーザーの期待に応えていると感じるのだ。

カローラクロスのコンセプトにもアーバンアクティブがあるように本格的SUV性能をもたせるのではなく、視点の高いドライビングポジション、見晴らしの良さを持ったSUVで、最小回転半径5.2mの小ささ故の使い勝手の良さなどでアーバンライフにマッチするというわけだ。そして前述の充実した装備、おもてなし、細かい気配りといった製品づくりはユーザーに響くモデルとなったわけだ。

今後は欧州展開を考慮すれば、こうした装備類は変わらないもののダイナミック性能には手を加えることはある、と開発チーフエンジニアの上田泰史氏は話す。

この手法はカローラの伝統とでもいうのか、ボディサイズやサスペンション形式、あるいは車型の違うものでも同じカローラの名で展開をしており、最近ではヤリスが欧州モデルと国内モデルでは異なるボディサイズ、仕様になっているのが記憶に新しい。

つまり、グローバルで考えると1モデルだけですべてのニーズに応えるのは難しく、仕向地仕様があって当然ということだ。一時期、仕向地仕様はコスト増ということで、減らしていく傾向もあり世界共通仕様を推した時期もあった。だが、これはモデルが限られる。例えばスーパーカーのようなモデルには仕向地仕様は不要だろうが、量販で大衆向けとなれば、そのニーズに答えていくのは必然というわけだ。

そうした視点でみれば、カローラクロスは日本のニーズに合わせた仕様であり、ボディサイズはやや大きいものの、人気になり得るモデルということができる。

ちなみにパワートレーンは1.8Lのガソリン+CVTモデルと同じく1.8Lのハイブリッドモデルの2タイプのパワートレーンが用意され、駆動系はFFがメインでハイブリッドだけに4WDのE-Fourが用意されている。この4WDもいわゆる生活四駆で、AWDの性能を目指していない割り切りも理解できる。

装備類や乗り心地を踏まえるとエンジンカバーをし、より上級なモデルのほうが似合う

試乗したハイブリッドには2ZR-FXEのアトキンソンサイクルエンジン搭載し、98ps/142Nm、駆動モーターは72ps/163Nm、リヤモーターは7.2ps/55Nmというスペック。燃費は26.2km/Lと高い省燃費性能を持っている。試乗時の燃費もほぼカタログデータに近い24km/Lを記録していた。

最近のSUVはスポーティ過ぎきると感じている方であれば、一度試乗してみることをおすすめする。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

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