トヨタは10月28日から開催される東京モーターショー2015で、クルマの本質的な魅力である、走る喜び、使う楽しさの新たな可能性を提案する。中でも注目の的になるのは、エントリーカーで、Fun to Driveを楽しめるコンパクトFRクーペ「S-FR」だ。
出展されるのは4台のコンセプトカーの他、2015年中に発売予定の次期型プリウス、そしてFIA世界ラリー選手権参戦に向けて開発中のWRCテストカー、五大陸走破プロジェクトに使用したランドクルーザー。さらに人に寄り添うコミュニケーションパートナー・ロボット「KIROBO MINI」なども出展される。
■C-HR Concept
C-HR Conceptは2015年9月のフランクフルトモーターショーに出展されたコンパクトクラスのクロスオーバーカー・コンセプトで、日本初公開となる。トヨタの新たなデザインを具現化し、クロスオーバー市場で独自の個性を発揮する狙いのクルマだ。
デザインはダイヤモンドをモチーフにしたキーンルックの進化版となっており、コンパクトサイズながらダイナミックさを際立たせている。5ドアボディだが、居住性を重視したパッケージングというよりデザインを重視しているという。
プリウスと共通のハイブリッドシステムを搭載するが、新世代のモジュラープラットフォーム「TNGA」を採用し、高剛性のボディ、シャシーを生かして軽快で気持ちよい走りを追求している。なお2016年春のジュネーブショーには市販仕様のモデルを出展する計画で、2016年度中には発売されると推測できる。ボディサイズは、全長4350mm×全幅1850mm×全高1500mm、ホイールベース2640mmと発表されている。
■S-FR
運転の楽しみを誰でも味わうことができるトヨタのライトウエイト・スポーツモデルの系譜を継承し、意のままに操ることができ、日常でも楽しめるFR駆動のエントリーモデルのコンセプトカーだ。
往年のトヨタ800をイメージしたコンセプトカーといえるが、エントリーモデルにこだわっているため2+2のシート配列を採用している。
コンセプトとしては、軽量・コンパクトを追求し、スポーツカーという狭いカテゴリーではなく、若い世代が気軽に購入できるエントリーカーとして、シンプルな構成としているのも特徴だ。
クルマと対話できるライトウエイトならではの車両特性を重視し、思い通りにクルマが反応し、クルマの挙動を感じながらコントロールするというFR車の心地よさを狙っている。デザインは、シンプル、親しみやすさ、走りを予感させるといったテーマでまとめ、パッケージングはコンパクトサイズながらロングノーズ、ワイドスタンスで、スポーティな走りのための骨格としている。
エンジンは発表されていないが1.3L~1.5Lクラスの量産エンジンで、ハイパワーは指向していないと想像する。エンジンをフロントミッドシップに配置し、前後加重配分は50:50に。サスペンションは4輪独立式。トランスミッションは6速MTとしている。
このS-FRはコンセプトカーのため、量産用の特定のプラットフォームなどは意識していないという。東京モーターショーでの反応を見て、企画が検討されるというプロセスが予想される。
公表されている諸元は、全長3990m×全幅1695mm×全高1320mm、ホイールベース2480mm。
■FCV PLUS
水素エネルギーが普及した社会を想定したコンセプトカー。水素エネルギーが普及した社会とは、多様な1次エネルギーから水素が生産され、水素の地産地消が成立したいる状態だとしている。
この段階ではFCVは水素を消費するだけではなく、電力のスマートグリッド化に適合させ、分散型発電システムとして活用できることを提案する、将来の燃料電池車のコンセプトカーだ。
搭載する水素タンクからだけではなく、地域で供給される水素を利用し、自宅や移動先での電力源として機能する。停車中には発生する電力を地域の電力網に供給し、廃車後は発電スタックを取り外し、外部発電装置として再利用するという3点をコンセプトとしている。
パッケージは、FCスタックをフロントアクスル上に置き、水素タンクはリヤシート後方に配置。駆動モーターは4輪インホイールタイプとして、居住スペース、車両サイズの自由度を拡大できるようにしている。
デザインは空力特性を徹底的に重視し、キャビンは軽量さと高剛性を両立させる立体骨格構造としているのが特徴だ。今回のコンセプトカーは3Dプリンターなどを駆使して製作されているという。
公表ボディサイズは、全長3800mm×全幅1750mm×全高1540mm。
■KIKAI(機械)
人間の思考や情熱、知恵から生み出されたさまざまな機械は愛すべき存在であり、そんな機械のイメージを追求したコンセプトカーが「KIKAI」とされる。
精巧さ、美しさ、素朴さ、動きの面白さなど機械の本来の魅力に着目し、人と機械(クルマ)との関係を見直し、新たなクルマの魅力を訴求することをコンセプトとしている。
そのため、通常はボディの内部に隠されている機械を前面に出した革新的なデザインとし、機械そのものを見えるエクステリアとしている。そのため燃料タンクやブレーキ・リザーブタンク、エキゾーストなどの部品そのものの形にもこだわり、インテリアのメーター類、スイッチ類もアナログ形式としている。
また運転席の足元には小窓が設けられ、サスペンションやタイヤの動きがドライバーから見え、前方視界からはサスペンション・アッパーアームの作動が見えるなど、日常の運転でも走る、曲がる、止まるを実感できるようにし、機械を五感で感じられるようにしている。
パッケージングはドライバーが中心になるセンタードライバーシートとし、オフセットした3座席レイアウトにしている。公表スペックは、全長3400mm×全幅1800mm×全高1550mm、ホイールベースは2450mm。
■新型プリウス
新型プリウスは最初にアメリカで発表され、2015年9月のフランクフルトモーターショーでヨーロッパ・プレミアを行ない、ようやく東京モーターショーで日本での公開を迎える。日本での発売は2015年末が予定されている。
新型プリウスのハイライトは、トヨタ車の中で最初に新世代モジュラー・プラットフォーム(TNGA)を採用していることだ。デザイン的には従来からのトライアングル・フォルムを継承し、従来より低重心、高剛性のボディとしている。ボディフォルムでは全高は20mm低められ、よりキャビンフォワードしている。
また従来モデルの課題であったハンドリングや乗り心地はこのモデルでは大幅に向上させているという。
エンジンは熱効率40%を達成するなど改良され、モーター、変速ユニット、バッテリーを軽量・コンパクト化して燃費を向上させ、40km/Lを達成しているという。
運転支援システムは、ミリ波レーダー、単眼カメラを組み合わせた「TSS P」を搭載。車両だけでなく歩行者も検知して自動ブレーキが作動するようになっている。
今回の公表スペックは、全長4540mm×全幅1760mm×全高1470mm、ホイールベースは2700mmにとどまっている。
■KIROBO MINI(キロボ・ミニ)
トヨタが開発した人型ロボット「KIROBO」は宇宙ステーションにも搭載されたが、今回出展されるKIROBO MINIは、座高100mmと人に常に寄り添える小型サイズにまとめたコミュニケーション・パートナーだ。
人との雑談会話にも対応し、話の内容に合わせて表情やしぐさを表現。さらに会話を通じて成長するロボットとなっている。