2017年11月16日〜18日、2017年シーズンの最終戦となる第9戦「バーレーン6時間レース」がサヒール・サーキットで開催された。これがポルシェ・ワークスチームの世界耐久選手権・最終レースとなる歴史的なレースである。
11月17日の午後5時30分にLMP1とLMP2クラスの公式予選が行なわれた。午後5時を過ぎたサーキットは闇に包まれ、1周5.412kmのコースを取り囲む照明が周囲を煌々と照らしだした。日が落ちて気温は26度に下がり、路面温度30度というコンディションで公式予選が開始された。
トヨタ・チームは、公式練習初日の好調を維持したまま公式予選に臨み、今シーズン5度目のポールポジションを狙った。最速タイムをマークしたのは7号車だったが、セッション終了間際にタイムを更新したポルシェ1号車に逆転され、ポルシェ1号車に0秒263遅れの1分39秒646で、2番手で最前列に並ぶことになった。
トヨタ8号車は最初に走った中嶋一貴がコース上の混雑に阻まれタイムを伸ばせず、チームは作戦を変更。決勝レースに向けてタイヤを温存する作戦を取り、タイムは1分40秒774でグリッドは4番手となった。
思えばLMP1クラスはポールポジション争いも僅差の勝負が続き、第8戦の上海レースが終了した時点でトヨタとポルシェは4回ずつのポールポジションを獲得していた。最終戦では5度目のポールポジションを狙ったトヨタだったが、その希望は叶えられなかった。
■決勝レース
レースのスタート時にはフォルクスワーゲン・グループCEOのマティアス・ミューラーがグリーンフラッグを振ってレースの幕が開いた。この決勝レースは4台のLMP1マシンによる僅差の激しい競り合いで幕を開けた。
しかし、スタートから15分ほど経った頃、ポルシェ2号車がなんと路肩の樹脂製ポールが壊れてコース上に転がっていたのを踏み、車体下側に食い込むというトラブルが発生。しばらくしてドライバーが異常を感じ、ピット・インし、ノーズ交換をして給油。これでほぼ1周遅れとなってしまった。その結果、トヨタ8号車がポルシェ1号車とトップ争いを展開。トヨタ7号車は3番手に付けた。
スタートから30分が経過した頃、トヨタ8号車がポルシェ1号車をかわしてトップに立ち、トヨタ7号車もポルシェを抜いて2位につけた。トヨタの2台は異なるタイヤ選定を行ない、8号車がミディアム、7号車がソフト・コンパウンドのタイヤを使用。結果的にタイヤはミディアムが適しており、8号車がタイヤ交換なしで2スティント走破してもほとんどタイムの低下はなかったが、7号車は予想以上にタイヤの摩耗が大きく苦しいレースになった。
ポルシェ1号車はトヨタの2台の直後につけていたが、終盤に周回遅れの車両との衝突で左フロント・タイヤをパンクさせピットに。フロントエンドを交換したが、衝突に対してペナルティが課せられ、ピットでのストップ・アンド・ゴーを消化したため、終盤での逆転する目論見は消え去り、3位に終わった。
ポルシェ2号車は序盤での1週遅れを挽回するためペースを上げていた。そしてレース終盤にトヨタ7号車が他車と接触してタイヤがパンクし、右リヤカウル破損のダメージを負い、6分間にわたるピットでの修復作業をおこなった。これにより2周遅れとなったため、ポルシェ2号車が労せずして2番手に浮上し、トヨタ8号車に続いてゴールを迎えた。
ポルシェが2位、3位となったこのレースで、ポルシェのモータースポーツの歴史で最も成功を収めた1章が幕を閉じた。2015年からこの日までで、ポルシェLMPチームはル・マン3 連覇に加え、マニュファクチャラーズ選手権の3連覇を飾り、ドライバーズ選手権タイトルを3回獲得した。
919ハイブリッドは、2014年のデビュー以来、34戦中17勝を挙げ、そのうち7 回は1-2フィニッシュだった。さらに20回のポールポジション、13回のファステストラップを達成している。
ポルシェのオリバー・ブルーメCEOは「ポルシェでも過去にル・マンを3連覇した例はありませんでしたが、このチームはそれを達成しました。チームに感謝し、チーム全員を誇りに思います。彼らは、大変な努力、一貫性、そして適切なアプローチによって偉業を成し遂げました。これは、ポルシェ・ブランドが約70年にわたって築いてきた精神を象徴しています。フリッツ・エンツィンガーとアンドレアス・ザイドルの率いるチームは新しい挑戦に取り組み、2019 年末から6シーズン目となるフォーミュラEに参戦します」と語っている。
ポルシェは2018年もWECにとどまるトヨタチームにエールを送り、去って行った。
■フェルナンド・アロンソがル・マン24時間レースに!?
バーレーン6時間レースが終了した翌日、11月19日にバーレーンインターナショナルサーキットで2018年シーズンのための「ルーキーテストが行なわれ、マクラーレンF1チームのドライバーのフェルナンド・アロンソが参加。トヨタTS050ハイブリッドを駆り、113周を走行した。
フェルナンド・アロンソは世界三大自動車レースのひとつ「インディ500」に今年(2017年)、電撃参戦した。日程が重なっていたモナコGPにはジェンソン・バトンを代役に立てての出場だった。
そして、次なる目標は伝統のル・マン4時間レースであり、そこで勝利を目指すトヨタのWEC2018年マシンに乗る可能性は限りなく大きい。なおアロンソはすでに2018年デイトナ24時間レースにLMP2カーのリジェに乗って参戦することを決めているが、ル・マン24時間レースこそ最終的な目標であることは間違いない。
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