世界耐久選手権(WEC)もいよいよ終盤戦に入り、WECマシンはアメリカから太平洋を渡り、富士スピードウェイにやってきた。2016年10月14日~16日、富士スピードウェイで富士6時間レースが開催された。
10月15日に行なわれた公式予選では、ホームコースで期待を抱かせたトヨタは5号車が3番手、6号車が4番手となった。ただしこれまでと違って5号車はトップから0.17秒遅れ、6号車は0.2秒遅れと差はわずかだ。
ポールポジションを獲得したのはアウディ8号車だった。後半戦に入ってアウディはエアロダイナミクスとコーナリング性能のバランスに優れ、予選での速さは著しい。アウディ7号車は0.28秒遅れで5番手となった。一方、ポルシェは1号車が2番手、2号車は6番手となり、直線が長い富士スピードウェイでパワーと空力バランスの点で課題を抱えていた。しかし、いずれにしてもこの富士ではアウディ、ポルシェ、トヨタの各車の差は小さく、レースの行方はまったく予想できない状態だった。
■決勝レース
レースの火蓋が切られると、アウディ8号車がまずレースをリードしたが、ポルシェ、トヨタも僅差で続く。アウディにとっての最初の不運は、7号車に降りかかった。
4番手を走っていた7号車は序盤にフロントのモーターが壊れたのだ。ピットでフロントのドライブシャフトを除去して走行しようとしたが、それは車両規則に反すると判定され、リタイアとなってしまったのだ。
ポルシェも2号車はマシンのバランスが悪く、さらに走行中にタイヤ滓(かす)がフロントカウルに大量に入り込み、空力バランスも悪化。ピットでフロント部を交換するなど、思い通りのペースで走行できない状態で最後まで走らざるを得なかった。それでも1周遅れの5位でレースを終えている。
こうした状況の中、アウディ8号車、ポルシェ1号車、トヨタ6号車がその差10秒以内というトップ争いを演じ、トヨタ5号車がやや遅れて追走するという展開が終始繰り広げられた。そのためピットインして燃料を補給するタイミングでトップの座は変わる展開。
このような状況は5時間を過ぎても変わらず、最後の燃料補給のタイミングが勝負となった。トヨタ6号車は、燃料補給のみでタイヤ交換なしでレースに復帰。ポルシェ、アウディはタイヤも交換し、追撃する。
タイヤ交換の有無でトヨタ6号車は11秒の差をつけてトップに立ったが、フレッシュタイヤのアウディ8号車が猛追し、最終的に1.4秒差まで追いついてきたところでチェッカー旗が振られた。トヨタにとって2014年のバーレーン戦以来、今シーズン初優勝を飾ることができた。
ポイント・ランキングは、ポルシェ:263、アウディ:204、トヨタ:174。ドライバー・ランキングは、ポルシェ2号車組:140、トヨタ6号車組:117、アウディ8号車組:111.5、ポルシェ2号車組:93.5、アウディ7号車組:78となっている。
なお、ポルシェ・チームのマーク・ウェーバー選手は今季限りで引退することを発表した。さらに10月26日、アウディ・ワークスチームは今シーズン限りで世界耐久選手権シリーズから撤退することを発表し、一つの時代が終わろうとしている。
編:アウディは次の開発ステージにフォーミュラEを選択した。WECはハイブリッド、ディーゼルという当時としてはレーシングカーの常識を覆すパワーユニットで参戦し、その技術は市販車に見事に活かされている。そして次なるステージがEVというわけだ。
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