2016年9月1~3日、メキシコのエルマノス・ロドリゲス・サーキットで、世界耐久選手権(WEC)第5戦、が開催された。WECもいよいよアメリカ大陸ステージに場所を移した。このメキシコの次はアメリカ。そして10月には太平洋を渡って日本の富士スピードウエイが舞台となる。
■予選
このメキシコのエルマノス・ロドリゲス・サーキットでのWECは初開催のため、9月1日は合同テスト走行が行なわれたが、トヨタ6号車のサラザン選手がスピンしてピットウォールに激突。モノコックまでダメージを受けてしまった。このため、モノコックを交換するという大修理を行ない公式練習に臨んだ。
またトヨタ5号車はアンソニー・デビッドソン選手は、8月のテスト時に負った肋骨打撲の影響が大きく、メキシコの出場を見送り、次戦のアメリカから復帰することになった。5号車は中嶋一貴、セバスチャン・ブエミの二人が乗り込む。
なお合同テストでは、トップはポルシェ1号車、2番手はアウディ8号車、3番手ポルシェ2号車、4番手アウディ7号車、そしてトヨタが続いた。この時点ではトップのポルシェとトヨタとは4秒もの差がついていた。
公式予選では、アウディ8号車がポールポジションを獲得し、2番手にポルシェ2号車、3番手にアウディ7号車、4番手がポルシェ1号車と交互にポジションを取り、トヨタは5、6番手に終わった。上位4車は0.2秒、0.3秒の差だが、トヨタは5号車が0.9秒遅れ、6号車は1.1秒遅れで、相変わらずダウンフォースが不足している状態だ。
■決勝
9月3日、決勝レースの火蓋が切られた。時々空が暗くなり、途中で雨も降るという不安定な天候の中でのレースとなった。ポールポジションから飛び出したアウディ8号車、そして7号車がポルシェ勢と接戦を演じながらもレースをリード。しかしトップを走っていたアウディ8号車は3番目のドライバー、ジャービスがステアリングを握っている140周目に左フロントのハブベアリングが壊れ、コースアウトしボディを大破してしまった。この修理に30分を費やし、後退した。
レース中盤、5番手を走っていたアウディ7号車は天候の悪化を予測し、いち早くインターミディエトタイヤを装着し、これが当ってトップに立った。しかし次のピットインのときにピットレーンでガス欠ストップし、ピットに帰るのに時間を浪費。さらに終盤にはブレーキトラブルも発生するなど、アウディにとっては散々なレースとなり、それでも7号車は2位でフィニッシュした。
ポルシェは4番ポジションからスタートした1号車が、レース序盤にアウディ2台に次いで3番手に付け、35周目にはアウディ7号車を抜いて2番手に。その後、フルコース・イエロー後の再スタートでアウディ8号車を交わしてトップに立ち、リードを10秒に広げた。
ところがその後のフルコース・イエローになったタイミングで、ポルシェ2台に同時にピットイン指令が出たため、ポルシェ1号車は慌ててピットロード入り口のラインをカットし、ペナルティを受けることになった。このためアウディ8号車が再びトップに立つが、この8号車はコースアウト。この結果、ポルシェは1-2体制となった。
しかし最後はアウディ7号車とポルシェ1号車が激しく戦い、互いのタイヤ交換のどちらが正解かが勝負の分かれ目になり、スリックを選択したポルシェ1号車は、雨の中でコースアウトするシーンもあったが辛くもトップを守りきって優勝した。
ポルシェ2号車もピットストップの作業の遅れにより、トヨタ5号車、その後は6号車と接戦となった。さらにLMP2車との接触により、リヤボディ交換が必要となる。その後もタイヤ選択を失敗することが重なり、トヨタ6号車が3位に、ポルシェ2号車は4位に終わった。ポルシェは今回のレースではピット戦略とタイヤ選択に成功しておらず、1号車が優勝したものの不満足な内容となった。
トヨタは、レース開始後1時間の時点で6号車は他車と接触し、20秒のペナルティを受けた。さらにその直後に5号車は電気系トラブルでリタイヤとるなど多難なレースとなった。残った6号車は、目まぐるしく変わる天候に合わせたタイヤ選択がうまく当り、さらに終盤の3スティントは連続でサラザンが圧巻の走りを続けたことで3位に入賞することができた。