2015年6月26日、トヨタは衝突事故における人体傷害をコンピューター上でシミュレートできるバーチャル人体モデルTHUMS(Total HUman Model for Safety:サムス)に、人の身構え状態から脱力状態まで模擬可能な筋肉モデルを追加し、THUMS Version5として同日から発売すると発表した。
バーチャル人体モデルは、コンピューターを駆使したバーチャルな衝突シミュレーションに採用し、人体の傷害やベルト、エアバッグなどの安全システムの効果を検討するために使用する。
事故時には、約半数のドライバーが急ブレーキや操舵などで回避行動をするという調査結果がある。特に急ブレーキを踏むと乗員は身構えるため、事故前後で脱力した状態とは姿勢変化の大きさが異なる。従来のTHUMSでは、衝突後の姿勢変化を模擬可能だったが、筋肉モデルを追加したTHUMS Version5では、衝突前の身構え状態も含めた乗員の姿勢変化を模擬することが可能となった。
このためより現実の事故に近い条件でシートベルトやエアバッグなどの安全装備の効果を検証でき、プリクラッシュシステムなど予防安全技術の効果をより精度高く予測可能とし、乗員保護効果をさらに向上させた予防安全技術の開発促進が期待できるとしている。
このTHUMS Version 5は、(株)JSOL(東京都中央区)、日本イーエスアイ(株)(東京都新宿区)を通じ、自動車メーカー、部品サプライヤーなどに向け販売する。
THUMSはこれまで、国内外の自動車メーカー、部品メーカーなど数十社が採用。衝突事故における乗員や歩行者の傷害の解析に使われており、トヨタだけでなく、世界中のクルマの安全技術研究に貢献している。