ダイムラートラック、三菱ふそうトラック・バス、日野自動車、トヨタは2023年5月30日、緊急会見を開催し、トヨタとダイムラートラックが両社統合の持株会社(上場予定)を設立し、株式を同割合で保有することを発表。その100%子会社として日野自動車と三菱ふそうトラック・バスを統合し、燃料電池や水素エンジン開発、CASE技術開発で協業し、競争力を加速させることに合意を発表した。
つまり、三菱ふそうトラック・バスと日野自動車は対等な立場で統合し、トラック、バス商用車の開発、調達、生産分野で協業し、グローバルで競争力のある日本の商用車メーカーを狙う。
ただし市場ではそれぞれのブランドで販売を行なうことになる。この日野と三菱ふそうの2社が統合されることで、開発コスト、部品の調達コスト、そして生産ラインの統合などで合理化が実現することはもちろん、今後のEVトラック、バスの展開、商用車用の燃料電池技術なども共同開発、共用化が期待できる。
これまでトヨタの子会社であった日野自動車は、2022年3月にトラックの型式認定の排ガス試験で不正が発覚し、型式認定を取り消されるなど、かつてない大事件が発生し、2022年度は純損益が1176億円の赤字(前年は847億円の赤字)となり、3年連続の純損失で、赤字額は過去最大。存亡の危機に立たされている。
ただ、国内販売は約40%減少と厳しいものの、東南アジア市場での販売が堅調で、輸出車の採算性向上は果たしている。
トヨタは全面的に支援するとしても本格的な再建の道のりはかなり遠いと考えられ、その対応策のひとつとして三菱ふそうトラック・バスとの統合が想定されたと推測できる。
三菱ふそうトラック・バスは、かつては三菱自動車の系列であったが、2005年に、ダイムラー・クライスラー社が85%、三菱グループ各社が15%株主となり、ダイムラー・クライスラーの連結子会社となった。そして三菱自動車の手からは離れている。
一方、親会社のダイムラー・クライスラーは、その後ダイムラーAGに改称し、2021年に親会社がメルセデス・ベンツ社となると同時に、商用車部門を分離・独立させ、ダイムラートラック社が誕生している。
このダイムラートラック社は株式上場し、メルセデス・ベンツ・グループの出資は35%程度に減少していた。こうした結果、ダイムラートラック社の三菱ふそうトラック・バスへの出資比率は89.3%で、ダイムラートラック社の子会社となっているのだ。
ダイムラートラック社のブランドは、メルセデス・ベンツ・トラック(ヨーロッパ)、フレイトライナー(アメリカ)、ウエスタンスター(アメリカ)、ライゾン(アメリカ)、三菱ふそうトラック・バス(日本、アジア、アフリカ)、バーラト(インド)などを展開しており、グローバル規模での大型トラック、バスの最大のメーカーである。
特に重量級大型商用車部門で強く、中型は三菱ふそうトラック・バス、バーラト、ライゾンなどが担当している。
ダイムラートラック社にとっては、傘下の三菱ふそうトラック・バスと日野自動車が統合されれば、開発、生産、販売面でコストダウンができ、スケールメリットの拡大が実現することになる。
一方で日野自動車は、この統合により非上場となり、現在50.1%を出資するトヨタは同社の親会社でなくなると予想されている。
またダイムラートラック社は、かつでメルセデス・ベンツがカナダのバラード社と世界に先駆けて共同開発した燃料電池技術を継承しており、商用車用燃料電池技術、特に重量級商用車用では世界トップレベルにある。したがって、より小型の燃料電池技術を持つトヨタと協業できることは歓迎すべきことなのだ。
なお、ダイムラートラックとトヨタが出資する新会社の名称、所在地、体制、協業の範囲や内容については、今後詳細を協議し、24年3月期中の最終契約締結、24年中の統合完了を目標として進めていく計画だ。
今回のトヨタとダイムラートラックの協業、三菱ふそうトラック・バスと日野自動車の統合により、日本の商用車市場はボルボと提携しているいすゞと、その傘下のUDグループとダイムラートラック、トヨタ連合に2分割されることになった。
乗用車に比べて遥かに生産・販売台数の少ないトラック、バスにとってスケールメリットが何より収益を高めるのに重要であり、さらに今後のEVなど電動化、燃料電池+水素技術、さらにコネクテッド技術やサービス、高度運転支援システムなどデジタル化分野への投資は、もはやかつてのような個別のメーカーでの負担は不可能であり、こうした商用車メーカーの統合の流れは不可避ということができよう。
ダイムラートラック 公式サイト
三菱ふそうトラック・バス 公式サイト
日野自動車 公式サイト
トヨタ 関連記事
トヨタ 公式サイト