トヨタ 2035年を目標に生産工場のカーボンニュートラルを目指す

トヨタは2021年6月11日、チーフ・プロダクション・オフィサーの岡田政道執行役員/生産本部本部長が、現在のトヨタの生産に関する取り組みをプレゼンテーションした。

最新の生産の取り組みをプレゼンテーションした岡田政道チーフ・プロダクション・オフィサー

その中で、「新しい時代に向かう先進のものづくり」というテーマの中で、岡田執行役員は従来のトヨタの工場におけるカーボンニュートラル達成の目標を、従来の2050年から2035年に前倒しすることを明らかにした。

2035年に生産工場におけるカーボンニュートラルを実現するために、生産の技術革新と日常的な改善により約70%のCO2を削減し、また再生エネルギー、水素エネルギーの使用とCO2クレジッドの活用ににより残り30%のCO2を削減するとしている。

現在、世界の自動車メーカーは、クルマから排出されるCO2を削減するために電動化を推進しており、そのことだけに世情の関心が集まりがちであるが、実際にはクルマを生産する工場におけるCO2排出量削減によりカーボンニュートラルを目指すことも、きわめて重要な課題となっている。

そのためには工場で使用するエネルギーの転換はもちろん、エネルギーの使用量を大幅に減らすことも求められる。

今回のプレゼンテーションでは、主として生産工場における使用エネルギーの削減の具体例が紹介された。

塗装技術

塗装技術では、通常の塗料スプレーに比べ大幅に効率を向上させた静電回転式スプレーに転換することで、塗着効率は70%から95%に向上し、塗装ブースサイズの縮小と使用電力の大幅な削減が実現しているという。

従来の塗装スプレーと静電気回転スプレー方式の比較

同じ塗装でも、新たなアイディアとしてボディパネルのプレス成形の過程で、プレス金型の中で着色するインモールド・コーティングも検討されている。この技術が実用化できれば従来の塗装工程が不要となる画期的な生産技術だ。

インモールド・コーティング

塗装に関してもう一つのアイディアは、従来の塗装に替えて着色シールを使用する工法だ。この場合、例えばルーフカラーをシールを張り替えることで後から変更するといった付加価値も生まれる。この工法はすでにダイハツでは実用化されており、有望な生産技術と考えられている。

着色シール式のカラーリング

無動力システム

トヨタらしさ満載といえるのが「からくり」(無動力システム)で、センサーや制御機器を使用せず、自動化を行なうという発想だ。この理念は以前からのトヨタ生産システム(TPS)でも推進されており、作業員による知恵と工夫による「改善」案などもこのからくりが重視されている。

着色シール式のカラーリング

からくりの機構はギヤやシャフト類を組み合わせ、動力源なしで省力、省人化、そして自動化を行なうため、究極のカーボンニュートラル・システムと位置づけられている。こうした発想はドイツ発祥の「インダストリー4.0」が製造業においてコンピュータの活用、AI(人工知能)やIoT技術を駆使するのと比べると対極の思想と言えるかもしれない。

そのため、一般化しつつあるAIによる不良品検出システムに対し、トヨタ生産システムでは不良品を作らない本質改善を行なうなど思想が異なっていることを強調。

IoTに関しては、工場全体にセンサーを配置し生産設備や工程の全体を見える化することに意義があるとしながらも、人間を機械の番人にしないという発想のもとで、生産工程、生産設備をよりシンプルにし、からくりと最小限のセンサーで工場の高い稼働率を維持するとしている。

2019年に新設したメキシコ工場の生産ライン

そして次世代は、人間とからくり技術、コンピューターが連携した生産ラインを構築するとしている。

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