【WEC2018】トヨタ ル・マン24時間レースに挑む

2018年5月29日、トヨタのGAZOOレーシングは、6月16日〜17日に開催される世界耐久選手権(WEC)シリーズの頂点、ル・マン24時間レースに挑むチーム、マシンについてのメディア向けの事前説明会を開催した。

トヨタ GAZOOレーシング ル・マン24時間レース 中嶋一貴選手 小林可夢偉選手 小島正清部長 北澤重久部長
左から中嶋一貴選手、小林可夢偉選手、小島正清部長、北澤重久部長

この説明会には、GRマーケティング部の北澤重久部長、GRモータースポーツ開発部の小島正清部長、ドライバーの小林可夢偉選手、中嶋一貴選手が出席し、念願のル・マン24時間レース初優勝に向けての意気込みを語った。

トヨタ GAZOOレーシング ル・マン24時間レース 7号車 8号車 ドライバーラインアップ

2018年WECは、変則的なシーズンとなり、2018年から2019年にまたがるシリーズ戦設定となり、第1戦はすでに5月5日にスパ・フランコルルシャン6時間レースが開催されている。GAZOOチームは1-2フィニッシュを果たし、そして第2戦目がル・マン24時間レースだ。そして今シーズンの最終戦が2019年のル・マン24時間レースとなる。

トヨタ GAZOOレーシング ル・マン24時間レース TS050ハイブリッド
2018年仕様のTS050ハイブリッド。ノーズ先端にトヨタマークを付加

また周知のようにポルシェ・ワークスチームが2017年を持って撤退し、今シーズンはのワークス・チーム、つまりハイブリッドを搭載したチームはトヨタのみとなっている。そのためFIAは、ノン・ハイブリッドのプライベートチームと、ハイブリッドを搭載するGAZOOチームのTS050の性能の均衡化を図っているのが特長だ。ノン・ハイブリッドのLMP1クラスには5チーム、10台のマシンがエントリーしている。

ノン・ハイブリッドのLMP1マシンは、TS050より5%ほど車両重量が軽量である他、1周あたりの燃料エネルギーは34%大きく、燃料流量はTS050より7%多く、1スティント当たりの燃料重量はノン・ハイブリッドは54kg、TS050は35.1kgという差がつけられている。つまりエンジンとしてはノン・ハイブリッドの方が燃料消費が多く、よりハイパワーとなっており、TS050はノン・ハイブリッド車より1周あたり41%少ないエネルギーで走ることになるのだ。

トヨタ GAZOOレーシング ル・マン24時間レース 中嶋一貴選手 小林可夢偉選手 小島正清部長
ドライバー2名とGRモータースポーツ開発部の小島正清部長

発表会では、まず北澤重久部長がGAZOOレーシングのモータースポーツ活動全般と、2017年のル・マン24時間レースの思いを語る。そして7号車の小林可夢偉選手と8号車の中嶋一貴選手が登場し、ル・マン24時間レースに向けての意気込みや、新加入のチームメイトであり、レジェンド・ドライバーのフェルナンド・アロンソ選手の印象などについてトークショーを行なった。

注目の2018年型TS050ハイブリッドの概要は、GRモータースポーツ開発部の小島正清部長が解説した。基本は2017年型を継承しているが、ネジ1本まで耐久・信頼性を重視して再検討されているという。

細部では300kW出力のリチウムイオン・バッテリーの作動温度を従来の85度Cから95度Cまで引き上げ、結果的にバッテリーの冷却システムが軽量化できている。2016年シーズンは65度C程度で、連続使用では出力性能が低下していたが、現在では95度Cで安定した充放電特性を実現しているという。

トヨタ GAZOOレーシング ル・マン24時間レース 2018〜2019シーズン LMP1マシンの技術均衡化規定
2018年〜2019年シーズンのLMP1マシンの性能の均衡化規定

パワートユニットはV型6気筒 2.4L・直噴ツインターボエンジンを搭載し、基本的な仕様や性能は2017年型と同等だが、耐久・信頼性が高められているという。市販車のプリウスのアトキンソンサイクル・エンジンは最高出力98ps、最大熱効率40%であるのに対し、TS050用の2.4L・直噴ツインターボエンジンは、出力500psで最高熱効率44%以上を達成しているという。当然ながらガソリンの流量制限があるため、リーンバーン燃焼を行なっており、さらにサーキットのストレート部の最後ではフュエルカットをして燃費を稼いでいるという。

ハイブリッドシステムは、前後2個のモーター/ジェネレーターでブレーキ時に減速エネルギー回生を行ない、電力をリチウムイオン・バッテリーに蓄え、加速時に放出して前後のモーターを駆動して加速をブーストする。

モーターのブーストが終了するとエンジンのみでの加速となるが、この段階ではノン・ハイブリッドのLMP1マシンの方がTS050のパワーを上回り、したがってストレートの後半ではノン・ハイブリッドのLMP1マシンが追い上げるパターンとなり、TS050も決して余裕のある周回とはならないという。またレース直前には、性能均一化のためノン・ハイブリッドのLMP1マシンの燃料流量をより増量させることも想定され、TS050が楽勝といったイメージはないのだ。

トヨタ GAZOOレーシング ル・マン24時間レース 2018年のテーマ

GAZOOレーシングは、2017年のル・マン24時間レースで発生した様々なトラブルを教訓とし、今シーズンはテスト段階から、エンジニア、メカニック、ドライバーを含め、あらゆるトラブル発生を想定した訓練、テストを行なっており、こうした点は従来はなかったチームとしての改善だ。

必勝を期すGAZOOレーシングであるが、性能均衡化の規則により、ノン・ハイブリッド車との性能差はわずかで、24時間という長丁場を考えるとTS050は決して楽勝できるわけではないし、勝利を目指すためのプレッシャーは大きい。

トヨタ GAZOOレーシング ル・マン24時間レース パブリックビューイベント

6月16日、17日はGAZOOレーシングのWEBサイトでダイジェストを配信。同時に6月16日(21時〜23時)、6月17日(20時30分〜22時30分)はメガウェブでパブリックビューイングを実施する。

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