2014年11月18日に発表されたトヨタの新型車「MIRAI」にいち早く試乗しているので、そのレポートをお送りしよう。
いよいよデビューとなったMIRAI(ミライ)は昨今話題の燃料電池車で、ガソリンを一切使わず、エンジンも搭載していない。エネルギー源として水素を使い、水素と酸素を反応させて発電し、その電力でモーターを動かすEV駆動の新型車。それがミライだ。
試乗場所は伊豆のサイクルスポーツセンターを占有に貸切っての試乗で、モデルはプロトタイプで最終仕様ではないとのことだった。
主要諸元では車重が1850kg、最小回転半径5.7m。全長4890mm×全幅1815mm×全高1535mm、ホイールベースは2780mmとなっている。最高出力は114kwで最高速度は175km/h、水素充填時間は約3分、航続可能距離は650kmというスペックのFFモデルとなっている。
仕組みなど詳細は別項を参照していただくとして、実際に運転してみて、ガソリン車の代替になるのだろうか? 普通に乗れるのだろうか? という疑問もあるだろう。BMWは次世代ビークルの位置つけとしてサブブランド「i」を立ち上げ、ボディの造り方から動力源に至るまで、これまでの概念とは異なるやり方でi3、i8をデビューさせた。
ミライはその正反対のやり方ではないだろうか。つまり、これまでのクルマと違和感無くフツーに乗れることを目指して開発されていると感じた。その外観は個性的なフロントマスクをしているが、全体の印象としては驚くような奇をてらったものではない。いわゆる正常進化という表現がいいと思う。
インテリアにおいても同様で、コクピットまわりはプリウスに乗ったことがあれば、しっくりくるデザインだと思う。プリウスと共通の部品というのは、それほど多くはないということだが、デザインのベクトルは揃っている。したがって普通に操作でき、なんの説明がなくてもすぐに走り出すことができた。
使用するバッテリーはリチウムイオンではなくニッケル水素を採用し、リヤアクスル付近に搭載。FCスタック、水素タンクなどはボディのセンターに集中するようなレイアウトとしている。もちろん操安性への影響を考慮してのものだ。
走りだしはモーターの音かポンプの音か、うい~んという音と共にスタート。EVらしく力強い加速をする。速度域が低い日常の走行状況では、静かでロードノイズも取り立てて気になるレベルではないが、試乗車はプロトタイプということで、高速域になると音が気になった。開発者の話によればポンプの音ということで、市販までには解決したいと説明していた。
これが車速と連動してしまうため、せっかくのEVであるにもかかわらずCVTのネガを耳にしているように車速とのズレを感じてしまった。しかし、開発陣もしっかり認識しているため、安心だ。また、乗り心地もゴトゴト音があり、こちらも市販までには修正してくるものと思われる。
ボディの剛性感も試乗して感じるレベルの高さにある。高い捻り剛性とするために、ブレース類の追加を最適化し、特にサスペンションまわりに注力した剛性アップを行なっている。操安を意識したチューニングと言える。また、空力を考慮し床下はフルアンダーカーバーで覆われ、操安や静粛性にもメリットがある。
その操安だがVSCのセッティングがまだ煮詰まっていないためか、右コーナーだけ妙に早い段階での介入があり、まさにプロトタイプであることが理解できる。もちろん、スタッフも承知のものなのでこれも問題とはならないだろう。
ステアリングは穏やかで、キビキビしている方向ではなくゆったりとした方向で設定されていた。このあたりからもMIRAIの位置付けは万人が何のストレスもなく、普通に乗れることを目標にしているのだろうと想像できる。
こうして、多くのユーザーが乗ることによって、エコカーは普及してこそ環境への貢献となるというトヨタの指針によって、普及していくのだろう。結論として水素ステーションさえあれば、ガソリン車の代替として使用できるのは間違いない。ただ、個人所有の乗り物として考えたとき、もう一つ何か惹かれる魅力が欲しいという気もする。
■トヨタ・ミライ主要諸元