2014年4月20日、FIA世界耐久選手権(WEC)第1戦、シルバーストーン6時間レースで今シーズンが開幕した。トヨタ、アウディ、ポルシェと3ワークスチームが顔を揃えたこの開幕戦は不安定な天候に翻弄されるレースとなり、波乱含みの展開となった。
2014年のWECの開幕戦、イギリス・シルバーストーンではトヨタの新型マシンTS040HYBRIDの登場や、ポルシェの参戦など話題は豊富。しかし天候は不安定でレース終盤には雨が強まり、予定の30分前に豪雨のため短縮終了してしまった。
レースはスタートから最後までポジションをキープしたトヨタ・レーシングのTS040 HYBRID が1-2位を独占。新型TS040のデビュー戦はチームにとってWECで初の1-2フィニッシュとなった。
公式予選では、3ワークスチームはきわどいタイム競争を繰り広げた。3チームはそれぞれ異なるハイブリッドシステムを採用しているが、少なくともラップタイムではほとんど差がないのだ。
アレックス・ブルツと中嶋一貴が予選アタックを担当した7号車のTS040 は、アウディR18 e-toron にわずか0.005秒差を付けてトップタイムとなった。トヨタ8号車は、予選直前に不調のキャパシターを交換し、予選でもアタックのタイミングが確保できず予選5番手となった。
アウディは1号車が紙一重の差でトヨタに敗れ予選2番手、2号車は4番手となった。予選3番手に割って入ったのがポルシェ14号車でトップのトヨタ7号車とは0.1秒差だった。しかし、決勝レースでは速さだけではなく、トータル燃費と平均燃費の規制がかけられる。この条件の下で各社はどんな走りを見せるか?
◆決勝レース
スタートこそドライだったが、その後のコースコンディションはウエット、ヘビーウェットとめまぐるしく変わり、難しいレース展開となった。レースはスタート直後から激しい順位争いとなったが、やがてトヨタ7号車がトップに立ち、8号車も5番手スタートから1周目に3位へと順位を上げた。
トヨタの2台は雨が降り始める40分過ぎ前後まで、首位争いを展開し雨が降り始めた中での最初のピットインで、7号車がウェットタイヤを、8号車はインターミディエイトタイヤを選択。そして雨が小降りになったため8号車がトップになり、その後コースが乾き始め、いかに早くスリックタイヤに交換するかがポイントになった。
↑2台ともクラッシュという最悪の結果となったアウディR18 e-tronクワトロ
アウディは、スタート後22分で2号車がトップに立った。一方、1号車は降り始めた雨の中でコースアウトしリタイヤしてしまった。そしてさらにその後2号車もコースアウトし、4周分を失い、その上ドライバー交代をした直後にまたもコースアウトしてリタイヤした。結局アウディは2台のアクシデントにより、WECで初めて2台全滅という事態となったが、その原因はスリックタイヤ、インターミディエトタイヤで引っ張り過ぎにあったようだ。
↑1台はメカトラブルで失うも、20号車はノートラブルで3位となったポルシェ919ハイブリッド
ポルシェは、14号車が1時間45分ほどでトラブルのためリタイヤするという予想外のできごとがあったものの、もう1台の20号車は終始トヨタのすぐ後ろを追走し、終盤には2番手のトヨタ7号車との差をじわじわ縮め始めていた。しかし、レースも終盤になって雨が激しくなり、セーフティカーが導入され、残り約30分でレースの打ち切りが決定された。このため、トヨタ8号車、7号車、そしてポルシェ20号車という順位でチェッカードフラッグを受けた。
木下美明 トヨタ・レーシング代表のコメント
「今シーズン開幕戦のシルバーストン6時間レースで、最高のスタートを切ることができた。チーム全員の努力に感謝している。TS040 HYBRIDの開発に我々は冬の間全力を傾けてきたが、その努力が報われてとても嬉しい。ここシルバーストーンで信じられないくらい多くの観客を前に、最高の雰囲気の中で、ライバルとの素晴らしいレースを見てもらえたことを誇りに思う。今日の天候は非常に不安定だったが、我々は慎重にレースを進め、戦略も見事に当たった。チームスタッフ全員がこの結果を嬉しく思っているが、アウディ、ポルシェとの戦いは非常に接近しているだけに、次戦スパ・フランコルシャンも気を抜くことなく全力でチャレンジしたい」
ポルシェAG研究開発担当役員ヴォルフガング・ハッツ氏のコメント
「本当に誇らしく感じています。このレースは、耐久レースのトップクラスへの正式なカムバックとなるものでした。準備、オペレーション、ピットおよび2台のポルシェ919ハイブリッドのコックピットでも、非常によく統制が取れていました。レースそのものも興味深く、技術的に大きな自由度が与えられているにも関わらず、というより与えられているためなのかWECの新レギュレーションはしっかりと機能していることがわかりました。3メーカーが、3種類の革新的なハイブリッドシステムで、最高レベルのエキサイティングな戦いを展開するのです。個人的な意見を言わせてもらえるなら、これこそがロードカーの開発に寄与するモータースポーツだと思います」