【トヨタ】新型ヴォクシー/ノア試乗記 パッケージが進化し機能充実 レポート:松本晴比古

マニアック評価vol261

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ヴォクシー ハイブリッド V

日本のマーケットで大きな存在感を見せるミニバンカテゴリーの中でも5ナンバー・ミニバンはやはり中心的な存在だ。子育て世代がメインユーザーだが、スライドドア、3列シートの存在は高齢世代にも受け入れられやすい要素を持っている。

また、ユーザーの求める使用方法に特化した機能重視であることもこのカテゴリーの特徴で、軽自動車のスーパーハイトワゴンとよく似た性格を持っている。この5ナンバー・ミニバンは近年は日産セレナがトップを維持しているが、1月末にフルモデルチェンジを行なったトヨタ・ヴォクシー/ノアはセレナを撃退するという使命を持っているわけだ。

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5ナンバー・ミニバンは、全幅は5ナンバー枠に収めながら(ただしエアロパーツ付きは1730mm)、どれだけ室内空間を広くできるか、使い勝手を向上させるかという点と、現在の普遍的なテーマである燃費性能をどこまで向上できるかがポイントになる。新型のヴォクシー/ノアは、フロントセクションは従来型を採用しながらメインの骨格は新開発され、クラス随一の低床フロアを採用し、さらにプリウス用の1.8Lエンジン+THS-Ⅱを投入している。

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この結果、地上からフロア面まで360mmという低床で、室内高は1400mmとなり、いずれもクラストップである。低床フロアは、子供や高齢者が乗り降りしやすいメリットがあり、室内高は子供が車内で立ったまま着替えができる、ベビーカーの積み込みや降ろす時に姿勢が楽といったメリットがあるわけだ。

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こうした低床フロアを実現するために、超扁平な床下燃料タンクを採用。さらにハイブリッド車はニッケル水素バッテリーパックをフロント助手席下に収納し、室内容積を無駄にしないようなレイアウトにしている。なお12Vの補助バッテリーはリヤエンドの床下に収納されている。ハイブリッドモデルは従来型のフロントフレーム構造内にパワーユニットとハイブリッドシステムをまとめるために、インバーターを縦置きに変更するなど室内空間を最大限確保するためのレイアウト上の工夫もされている。

新型ヴォクシー/ノアの開発コンセプトは「スペーシアス FUN BOX」で、FUNは快適性、使い勝手、燃費を意味している。デザイン的には箱型(BOX)を意識し、特に前後から見て立方体を強調し、できるだけ大きく見えるようにしている。ノアとヴォクシーの区別は、ノアは堂々とした存在感を強調し、ボクシーはさらに挑戦的な顔付きで若さを打ち出している。

1月下旬からの販売では、ノアよりヴォクシーがやや優勢で、特にNAエンジンにのみ設定されるエアロモデルが一番人気だ。またNAエンジン車とハイブリッド車ではNAエンジン車が過半数を占め、やはりNAエンジン車より30~40万円高いハイブリッド車は高価格車と認識されているようだ。

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セカンドシートをロングスライドによりを最大限後退させた状態
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キャプテンシートのウォークスルー間隔

 

新型ヴォクシー/ノアの使い勝手は? シートポジションは当然ながらアップライトで、フロントシートの左右のウォークスルーができる。ノア/ヴォクシーもセンターコンソール部が突き出してはいるが、セレナほどの張り出しではない。セカンドシートは、7人乗りの場合は左右独立のキャプテンシート、8人乗りでは6:4分割式の3人掛けベンチシートとなる。

キャプテンシートの場合は、左右席を横スライドすることでベンチシート状態にでき、さらにこの状態では810mmのロングスライドができる。後方スライドさせた状態ではセカンドシートの前にベビーカーを折り畳むことなく楽に、余裕を持って積載できるわけだ。また左右独立のキャプテンシートは、片側にチャイルドシートを固定してある場合でも、シートの隙間をウォークスルーしてサードシートに乗り込むことができる。一方、セカンドシート、サードシートを利用してフルフラットにする場合は、やはりセカンドシートがベンチシート、つまり8人乗りの方が有利だ。ベンチシートであればよりフラットになるが、キャプテンシートの場合はどうしても凹凸が生じる。

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サードシートを跳ね上げ折り畳んだ状態
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サードシート下に12Vバッテリーを配置

 

セカンドシートの位置が適性であればサードシートの足元スペースも十分確保されている。そしてこのサードシートは簡単に左右に跳ね上げ、格納できるようになっている。3列シートのミニバンといえども通常の使用ではこのサードシートを折り畳んだ状態で使用することがほとんどだが、この場合は跳ね上げ格納されたシートが左右のウインドウガラスをほぼ覆ってしまうので斜め後方視界の点で難点があるが、それはリヤカメラでカバーできるということだ。

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サードシート中央席用のヘッドレスト収納状態
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セカンドシートのシートアレンジレバー(下)とリクライニングレバー(上)

 

なお低床フロアにより室内高は1400mmを稼ぎ出しているが、ライバル車と比べるとセレナ:1380mm、ステップワゴン:1395mmで、決定的と言えるほどの差はないと思う。また、フロア面の地上高が360mmとなっているが、セカンドシートに座った状態で地面への足付きはやはりそれほど楽ではない。標準装備されるBピラーに大型アシストグリップ、チャイルドグリップが装備されている点は乗り降りではメリットになると思う。

試乗は、まずヴォクシー・ハイブリッドVから。価格は297万円で、最上級グレードだ。車両重量が1620kgで、プリウスより270kgも重く、本当にプリウス用のハイブリッド・パワートレーンで大丈夫かと思われたが、最終減速比のローギヤ化とスロットルによる出力マッピングををより出力側にチューニングしてあるのだ。そのためスロットルを踏み込むと加速は滑らかで、リニア感も感じられた。少なくとも市街地や一般道での走りは十分な動力性能と言える。また絶対的な加速性能はともかく、ある意味で出力重視のパワー特性はプリウスよりフィーリングが良いともいえる。さらにブレーキもプリウスに比べてより自然な減速感が得られた。

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フロントに遮音ガラスヤ遮音材を多用するなど、ハイブリッド車は特に静粛性を高めているとのことだが、確かにこのクラスでトップレベルの静かさだと思った。乗り心地もフラットな路面を走っている限りは3列シート以外は文句なし。視界も良好だ。ステアリングのギヤ比はかなりスローで、ステアリングの切り始めの10mmくらいは反応しない。こうしたミニバンはクイックな動きは不安になりやすいので意図的に鈍くしているのだ。最少回転半径は5.5mでライバル車よりは小さいが、日常的には買い物など使用されることを考えると、もう少し小回り性を高めてもらいたいものだ。

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↑ノア Si(エアロモデル)

次はヴォクシー X。こちらは2.0Lの3ZR-FAE型、つまり連続可変バルブリフトタイプのエンジンを搭載し、変速比幅6.45のスーパーCVT-iを組み合わせている。加速時にはエンジン回転が先に上がるCVTフィーリングが多少感じられるが、加速感は高回転までリニア感があるので、高速走行ではパワー感、加速感はハイブリッドモデルより上かもしれない。ただ、エンジン音は中速域以上はややノイジー。また欲を言えばもう少し低速よりのトルク増強が望まれる。逆に中低速域での加速感の力強さや静粛性はハイブリッドの方が一枚上手だ。

ハイブリッド車のタイヤは195/65R15(6Jアルミホイール)が標準だが、ガソリン車は下級グレードは195/65R15(スチールホイール)、上級グレードはアルミホイール、最上級となるエアログレードは205/60R16タイヤ(6Jアルミホイール)という違いがあるが、いずれにしてもガソリン車は、路面の微振動がそのままボディ全体に伝わり、路面の継ぎ目の当たりもドシンという感じで伝わり、乗り心地や快適性という点ではプアな気がする。こうしたクルマはアグレッシブに走るようなシーンは想定しないだけに、キャビン内での乗り心地や快適性をもっと充実させるべきだろう。

いずれ追加されるはずだが、現状ではライバルのセレナに比べ衝突回避・軽減ブレーキの設定がない点も残念だ。

NOA 諸元表

VOXY諸元表

ノア・ボクシー価格表

トヨタ公式サイト

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