【WEC 2013】第1戦 シルバーストン6時間 アウディが1-2フィニッシュ

完全にレースを支配したアウディR18 etronクワトロ・ハイブリッド

2013年4月14日、イギリスのシルバーストン・サーキットで開催された世界耐久シリーズ第1戦「シルバーストン6時間レース」で、2013年型R18 e-tronクワトロ・ハイブリッドを投入したアウディがレースを終始リードし、トヨタを抑えて1-2フィニッシュを果たした。

予選で1-2を絞めたトヨタTS030を先頭にレースの火蓋が切られた

2012年から新計測方式となった予選では、変わりやすい天候の中で2012年型マシンのトヨタTS030ハイブリッドがアウディを抑え1、2番手を占めた。トヨタのマシンは今回からZF製のクラッチを採用している。トヨタは2013年型マシンの開発テストをすでに行ってきており、第2戦のスパ・フランコルシャンから満を持してレースに投入する計画だ。

一方、アウディは2013年シーズンに向け改良型のR18 e-tronクワトロ・ハイブリッドを持ち込んでいる。ハイブリッドシステムと空力性能を向上させているのが主な改良点で、昨シーズン後半にトヨタTS030に劣っていた部分を見直したのだ。

決勝レースが幕を切ると、先行するトヨタをアウディはハイペースで追走し、スリリングな戦いが起こったが、アウディ2号車を駆るアラン マクニッシュが、6周目にトップに躍り出た。また1号車もこれに続き、レース序盤からアウディの1-2体勢となった。そして77周目には1号車がトップの2号車に迫る場面も訪れたが、実はレースが開始し4時間が経過した頃から、1号車の左フロント・ドライブシャフトが壊れており、前輪へのハイブリッドによる駆動力供給ができない状態となっていた。このため、1号車は優勝を諦めざるを得ない状況だったのだ。

レース序盤にトヨタTS030を抜き去ったアウディR18 etronクワトロ・ハイブリッド
アウディ1号車はフロンtドライブシャフトが壊れ2号車をかわすことができなかった

しかし2台のR18 e-tronクワトロ・ハイブリッドは、空力性能を改良し、最適なダウンフォースを得ることができたため、グリップ不足に悩むトヨタTS030を確実に上回るラップタイムを刻むことができた。しかしその一方で、エアリストリクターの径が縮小され出力が昨年よりも抑えられていることや、ディーゼルエンジン搭載のアウディはガソリンエンジンを搭載するトヨタより燃料タンク容量が20%も少なく、58Lの燃料しか搭載できないため燃費で有利なメリットが得られないどころか、TS030より少ない周回数で燃料補給を行わざるを得なかったのだ。

しかしラップタイム、ピット作業時間ともにトヨタを上回り、レース終盤にはアウディの1、2号車による接戦が繰り広げられたが、地元のA.マクニッシュが驚異的な走りでホームグラウンド優勝をもぎ取った。そしてアウディチームは伝統あるRACツーリストトロフィーを獲得した。

レース序盤のアウディ、トヨタの接戦
地元で優勝を遂げたA.マクニッシュ(アウディ2号車)

今回のレースで、トヨタは選択したミシュランタイヤのコンパウンドが路面温度に適さず、発熱が少ないためにタイヤ表面のゴムが波立ち、特にフロントにこの現象が発生してグリップが不足したためにアンダーステアに悩まされた。そのためタイヤ1セットを2スティント使用する作戦行うことはできず、アウディを追い上げることはできなかった。3位に入った8号車も196周で、アウディとは1周の差がつけられてしまった。

ZF製のクラッチを採用したトヨタTS030ハイブリッド

またGT-Eプロ・クラスに出場したポルシェの2台のワークスカー、911RSRはシャシーのセッティングが決まらず、クラス4位、6位という結果に終わった。同クラスは、アウトンマーチン・バンテージがクラス1位、2位には小林可夢偉/バイランダーがステアリングを握るフェラーリF458イタリアが入った。

今回がデビュー戦のポルシェ911 RSR
シャシーセッティングが決まらずクラス4、6位に

世界耐久シリーズ第2戦となるスパ・フランコルシャン6時間レース(5月4日)には、アウディは3台のR18 e-tronクワトロ・ハイブリッドを投入する。またトヨタはいよいよ2013年型TS030を送り込むなど、天王山のル・マン24時間レースに備えいっそう白熱した戦いが期待できる。

FIA・WEC公式サイト
アウディ公式サイト
トヨタ・モータースポーツ公式サイト

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