トヨタ シリコンバレーに人工知能、ロボットの研究・開発の研究所「TRI」を設立

雑誌に載らない話vol127

トヨタ TRI 設立
ギル・プラット博士と豊田章男社長

2015年11月6日、トヨタは、2016年1月に、人工知能技術の研究・開発を行なうための新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.」(TRI)を、アメリカのカリフォルニア州シリコンバレーに設立し、今後5年間で約10億ドル(1230億円)を投入すると発表した。

この研究所の最高経営責任者(CEO)には、トヨタのエグゼクティブ・テクニカル・アドバイザーを務めるギル・プラット博士が就任し、今後は約200人の優秀な研究者を集めるとともに、マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学に設立した研究センターとの連携を進めるなど、研究体制を強化していくという。

TRIのCEOに就任するギル・プラット博士
TRIのCEOに就任するギル・プラット博士
TRIはシリコンバレーに2016年1月に設立予定
TRIはシリコンバレーに2016年1月に設立予定

ギル・プラット博士はロボットなどに不可欠な人工知能研究の第一人者とされ、また2010年~2015年にはDARPA(国防省・国防高等研究計画局)の企画責任者を勤め、ロボット技術の競技大会「DARPA ロボティックス・チャレンジ」を推進した。ロボットが深刻な災害時などにさまざまな任務を行なうという想定での競技会の様子は下の画像のようなもの。

DARPAは、2004年から多くの大学の研究チームが参加した「グランド・チャレンジ」、「アーバン・チャレンジ」を実施し、アメリカの最先端技術を結集したことで現在の自動運転の基盤を作り上げる契機になっている。この自動運転を競う競技に参加したエンジニアたちが、その後の「Googleカー」の開発に加わっているのだ。DARPAという特別な部署、大学の研究チームとも人脈を持つギル・プラット博士にトヨタは今春頃(2015年)にコンタクトを取り、TRIのCEOとしてスカウトした。

設立されるTRIをトヨタは、モビリティの枠を超える技術イノベーションの拠点と位置付け、人工知能技術に関する研究・開発を加速するとしている。具体的には、人工知能技術を通じてビッグ・データを活用し、これからの社会が直面するさまざまな課題を解決し、将来のモビリティ社会の実現、知能を持った新たな産業技術の技術革新の実現を目指すという。

豊田章男社長は、当初はクルマの自動運転化には否定的であったが、人工知能化による自動運転だけでなく、人間に対する支援や、将来の産業技術のイノベーションなどを見据えた研究・開発はトヨタにとって必要だと考えるようになり、TRIの設立に踏み切った。

ギル・プラット博士は、研究・開発の目的は、人間社会にとっての安全、人間のアクセス性、ロボットの実現であるという。つまり、クルマの安全性向上や自動運転化、高齢者や障害者などを支援し移動の自由を高める、そしてより汎用のロボット技術を実現することで産業の形態を変えることだと説明、将来のトヨタにとって大きな財産になると語っている。

TRI計画

 

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DARPAロボティックス・チャレンジ公式サイト

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