2012年11月9日、トヨタとマツダは、マツダのメキシコ新工場で、トヨタの北米向けを中心とした車両を生産することについて合意したと発表した。マツダのメキシコ新工場は2013年度に稼動予定だが、2015年夏頃から、「Mazda2(日本名:デミオ)」をベースとしたトヨタブランドの小型車を年間5万台程度生産し、トヨタの販売店を通じて販売する、つまりトヨタがマツダからOEM供給を受けることが決定したのだ。
マツダは住友商事との生産合弁事業という形でメキシコ・グアナファト州サラマンカ市に「Mazda Motor Manufacturing de Mexico S.A. de C.V.」(メキシコ工場)を2011年10月11日に起工している。
このメキシコ新工場は、北米向け、中南米向けに生産・輸出を行う重要な拠点という位置付けだ。フォードとの提携が終了して以来、マツダは日本国内の工場での生産が主力のため、海外輸出しても円高の影響をまともに受けて収益性が極めて低いという重大な問題点を抱えている。しかし、メキシコ工場の稼動で為替や関税の影響を抑え、収益性を高めることができるため、マツダにとってメキシコ新工場の稼動は最重要課題だった。
メキシコ新工場は、車両組立工場とエンジン組立工場で形成され、操業開始は2013年度中、生産能力は年間14万台とし、「Mazda2(日本名:デミオ)」、「Mazda3(日本名:アクセラ)」の生産拠点とする。生産された過半数をブラジルを始め中南米に輸出する計画であった。がしかし、工場の起工から5ヵ月後、思いがけない事態が生じた。
南米でクルマの最大の輸入国であるブラジルが、国内の経済事情や貿易収支を改善するため、メキシコからの完成車の輸入に関して、従来の関税ゼロから高関税に、さらにメキシコに対して完成車の輸出制限を求めたのだ。
メキシコ、ブラジル両国の交渉の結果、メキシコは2012年から14年まで輸出制限を行い、2012年は前年比の70%の自動車輸出額に抑制することで合意した。このためすでにメキシコで主力工場を稼働中の日産などが大きな影響を受けることはもちろん、2013年から新規参入のマツダはメキシコからブラジル向けの輸出は当面断念せざるを得なくなった。つまり新しいメキシコ工場の稼動率が下がることが予想される事態になったのだ。
今回のマツダ、トヨタの合意により、メキシコ新工場はトヨタ向けの5万台の生産がプラスされため、マツダが当初ブラジル向けを想定した生産台数の減少をある程度穴埋めできるものと考えられる。トヨタは、このOEM車を北米や中南米で販売するものと予想される。トヨタは北米などにおける商品ラインアップの強化、マツダは、メキシコ新工場の生産台数増加による生産効率の向上や収益向上を期待できる。
なお、トヨタ向けOEM車の生産にあたり、トヨタは能力増強分の設備投資、開発費用について応分を負担するとしている。