【WEC2012】ル・マンに挑戦 TS030ハイブリッドを発表 

2012年1月25日、トヨタはフランスのポールリカール・サーキットで世界耐久選手権(WEC)の参戦体制と参戦マシンのTS030ハイブリッドを発表した。

TS03
トヨタTS03はハイブリッドの耐久マシン。ポールリカールでシェイクダウンテスト

トヨタWEC参戦のチーム名は「TOYOTA Racing」で、参戦マシン名は「TS03ハイブリッド」と発表された。チームの本拠地はドイツのケルンにあるTOYOTA Motorsport GmbH(TMG)だ。そしてチームの初戦は、5月5日にベルギーで開催されるスパ・フランコルシャン6時間レースとしている。2012年WECシリーズはシリーズ全8戦が予定されており、3月17日のセブリング12時間レースが初戦、スパ・フランコルシャン6時間レースがシリーズ第2戦となる。そして第3戦がシリーズの頂点ともいえるル・マン24時間レースだ。

したがってトヨタは、ル・マン24時間レースの前の、熟成のための実戦テストは1戦のみということになる。なおトヨタはル・マン24時間レースには2台体制で出場する。スパ・フランコルシャン6時間とル・マン24時間レース以外のレースへの参戦は未定としている。当然、日本の富士スピードウエイで開催されるWEC IN JAPANにも期待されるが、未定とされている。

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ドライバーはアレックス・ブルツ、ニコラス・ラピエール、中島一貴の3名

ドライバーは、アレックス・ブルツ、ニコラス・ラピエール、中嶋一貴の3名は確定しているが、ル・マンに出場するもう1台のドライバーは未定。ただし、21歳のアンドレア・カルダレッリは、研修生的な位置付けとされるジュニアチーム・ドライバーとなっている。

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ポールリカールでのテスト風景

トヨタの参戦は、ハイブリッド・システムを採用してのFIA世界耐久選手権出場を発表した世界初の自動車メーカーとなる。TS03ハイブリッドは、3.4LのV8型自然吸気ガソリン・エンジンに、日清紡ホールディングスと共同開発したキャパシタ(蓄電器)を備えるハイブリッド・システムを採用している。キャパシタは、本来は2次電池のようなエネルギー密度を持たせるのは難しいものの、低い内部抵抗による瞬発力を持っており、現在ではエネルギー密度が高く、充放電の速度が速い蓄電システムとして注目されている。

トヨタはモータースポーツでのハイブリッドにおける実戦経験は、2005年にレクサスRX(ハリアー)ハイブリッドでの初挑戦から始まり、このときすでにキャパシタを搭載していた。さらに2006年の十勝24時間レースにはレクサスGS450hで参戦し、2007年の同レースにはGTレースカーのスープラをベースにした、スープラHV-Rで優勝を遂げている。このスープラHV-Rの前輪にはインホイールモーターを配置し、ブレーキ時に発生するエネルギーを回収するブレーキ回生システムを搭載。また、急速な大量充電の効率を向上させるため、専用設計のキャパシタも搭載していた。このようなレース用のハイブリッド技術は「THS-R技術」と名付けられている。

実は今回の発表前の1月11〜13日に、ポールリカールでシェイク・ダウンテストを行っているが、ここしばらくはポールリカールでテスト走行を繰り返す予定だ。ちなみにこの先行テストの模様はフランスの自動車雑誌にスクープされ、WEBに画像がアップロードされている。

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テストにはもう一人の日本人ドライバー候補、石浦宏明選手が参加していた

この最初の3日間のテストは、夜間も連続して走行し数100kmを走破したという。このシェイク・ダウンテストは、アレックス・ブルツとニコラス・ラピエール、そしてドライバー候補である石浦宏明選手が担当した。

当初のテストの目的は、アイシンAW製フロント・モーターシステムとデンソー製リヤ・モーターシステムが、現行レギュレーションの下でどのようなメリットがあるかを評価するとしている。現在のレギュレーションは、ブレーキングの間に駆動アシストへ使用できるエネルギーを500kJ(キロジュール)に制限すると共に、エネルギーの回生は2輪のみからと限定されている。 したがってアイシンAW製フロント・モーターシステムは小型のインホイール型モーターであり、デンソー製のリヤモーターが駆動用と推測できる。

ちなみに、オール・カーボンファイバー製のシャシーは、F1で手馴れたTMGで開発・製造され、マシンの組み立てもTMGが行っている。

●トヨタTS03ハイブリッド 主要諸元

マシンタイプ:ル・マン・プロトタイプ (LMP1)

ボディワーク:カーボンファイバーコンポジット

フロントガラス:ポリカーボネート

ギヤボックス:横置きシーケンシャル6速ギヤボックス

ギヤボックスケーシング:アルミニウム

ドライブシャフト:CV式三叉プランジジョイント・ドライブシャフト

クラッチ:マルチディスク

デファレンシャル:ビスカス式LSD

サスペンション:プッシュロッド式独立懸架ダブルウイッシュボーン(前/後)

スプリング:トーションバー

アンチロールバー:前/後

ステアリング:油圧式パワーステアリング

ブレーキ:2系統油圧式ブレーキ・システム  モノブロック軽量合金キャリパー(前/後) カーボン製ベンチレーテッド・ディスク(前/後)

ホイール:マグネシウム鍛造ホイール

ホイール:前14.5 ×18 インチ 後14.5 ×18 インチ

タイヤ:ミシュラン・ラジアル  前36/71-18 後37/71-18

シートベルト:タカタ

ボディサイズ:全長4650mm 全幅 2000mm 全高 1030mm

燃料タンク容量:73L

パワートレイン:TOYOTA HYBRID System – Racing (THS-R)

エンジン:90° V8型 自然吸気エンジン 4バルブ

燃料:ガソリン

エンジン排気量:3400cc

エアリストリクター径: 43.3mm

キャパシタ:日清紡ホールディングス

前輪ハイブリッドモーター:アイシン・エィ・ダブリュ

後輪ハイブリッドモーター:デンソー

COTY
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