【トヨタ】新型車アクア 爆発的人気となった最新の小型ハイブリッド車 トヨタ・アクアを考察

発売1ヶ月ですでに10万台というオーダーを得て、ヒットしているアクアは、最先端のハイブリッド技術を搭載し、PHVを除く量産ガソリンエンジン乗用車で世界No1の低燃費を謳っている。JC08モードで35.4km/L(全グレード共通)、10・15モードではなんと40.0km/L(Lグレードのみ。他のグレードは37.0km/L)という数値をはじき出しているのだ。そのアクアにはどんな先端技術が投入されているのか。考察してみたい。

トヨタアクア ハイブリッド
世界NO1省燃費のアクアは40.0km/Lを達成

車両のベースになるのはヴィッツだが、プラットフォームは改良版になっている。通称Bプラットフォームを採用しているが、アクアではホイールベースをヴィッツの2510mmから2550mmへと延長している。また、開発目標として軽量化と低重心化を掲げ、質量のあるものを可能な限りセンターへ集中することで、操縦性、安定性をより質の高いものへとすることを目指している。なお軽量化については、ハイブリッドシステム、専用バッテリーを搭載しているにもかかわらず、1.5Lのヴィッツと同等の1000kg台を達成している点は注目したい。

バッテリーは、これまでのプリウスではリヤシートバック後方に立てて搭載されていたが、小型化したバッテリーをホイールベース内側、リヤシート下に搭載することで低重心化・ヨー慣性モーメントを低減している。また、この移動に伴いフロア部分に補強材を追加しボディ全体の剛性アップへつなげている。また、エンジンルームではエンジン搭載位置がヴィッツとはことなるため、フロントサイドメンバー、ラジエターサポート部分を新構造としている。

また空気抵抗の低減も大きな目標で、Cd=0.28を達成している。ボディ鋼板は各所に高張力鋼板を採用し、軽量化も徹底的に実施。傾斜のきついAピラーとボンネット傾斜が直線に近いラインで結ばれているなど見るからに空力処理を徹底しているデザインに感じる。

アクア トヨタ CD値=0.28
傾斜のきついAピラーからも空力にも力が注がれていることが想像できる

ディメンションは全長3995mm×全幅1695mm×全高1445mmで、全高が低めにされているがが、ひとつ上のセグメントであるプリウスより後席ヘッドクリアランスは確保されているという。また、バッテリー自体で荷台のスペースをロスすることがないため、クラストップレベルのラゲッジスペースも確保されているのだ。

シャシーでは装着タイヤが14インチから16インチまでの幅があるが、それぞれのタイヤサイズでベストパフォーマンスとなるように、ダンパー減衰、バネレート、ステアリングギヤ比、電動パワーステアリングのアシスト量を変更し、最適化されている。ちなみに、ステアリングギヤ比は15インと16インチは同じで14インチは異なっている。

トヨタ アクア 
クリア面の多きいテールレンズとリヤバンパーの処理に特徴がある

 

ハイブリッドユニット

さて、搭載されるハイブリッドシステムだが、THSⅡを小型化した新開発ユニットになっている。エンジンの型式や排気量から初代プリウスの改良版とも想像できるが、実際にはエンジンは約70%以上が新規に設計され、エンジンブロックもまったくの新規設計になっている。また、インバーターやバッテリーなども小型化しており、これらを踏まえるとアクア専用のユニットと考えるのが自然だ。

アクア エンジンルーム THS?
トヨのハイブリッド技術THS?は、さらにコンパクト化されている。1.5Lのハイブリッド

搭載される1NZ-FXEエンジンは、1.5Lのアトキンソンサイクル運転をするエンジンで、圧縮比よりも膨張比が大きくなる特徴を持つのはご存知のとおり。燃費は良くなるが高出力が望めない部分をモーターで補うという概念で開発されているトヨタの先端技術だ。

アクアに搭載するにあたり、1NZ-FXEにはクールドEGRを採用している。この冷却された排気ガス再循環により混合気の酸素濃度が薄くなるために燃焼温度が下がる。そのため、圧縮比を上げることが可能となりレスポンスや出力の点で優位に働く。そしてインテークマニホールドでもEGRの各気筒への配分を均等化すると共に小型化もしている。

エキゾーストでは、低熱容量、高耐熱性の触媒一体型のエキマニを採用している。これは、触媒の位置が排気ポートの近くに配置できるため、暖気にかかる時間を短縮することができるため、近所へちょっと・・・という時の燃費改善になっているという。ちなみに、プリウスと比較し67%触媒暖気時間が低減できている。また、冷間時の点火時期を遅角制御し、暖気中の燃費向上と排出ガスの低減を両立している。

エンジンに負荷のかかるウォーターポンプが電動化された。アクアでは補機類を全て電動化し、補機ベルトをなくすことでエンジンへの負荷を減らしている。この電動ウォーターポンプはエンジンの回転数や負荷を判断し、冷却水を効率よく制御し、また、小型化にも寄与している。そして、ウォームアップの早期化、寒冷地での暖房性能向上のための排気熱回収システムはメーカーオプションとなっている点がプリウスと異なるところだ。エンジンマウントは、新たにアクア用に専用設計されている。できるだけ低くマウントし、低重心化に貢献しているわけだ。

もうひとつエンジンルーム内に搭載される重量物としてインバーター、コンバーターがある。インバーターはモーター駆動時にバッテリーからの直流電流を交流電流に変換し、また、エネルギー回生時にはモーターで発電した交流電流をバッテリーに充電するために直流へと交換する働きをするが、このユニット内素子を効率よく配置することで、小型・軽量化している。

ハイブリッド用バッテリーが発生させる高電圧を12Vバッテリーに降圧するDC-DCコンバーターも小型・軽量化され、また140Vから520Vへ昇圧させる際の昇圧比、損失も最小限に抑えているということだ。これらのモジュール内にあるIGBT(スイッチング素子)の冷却には、直接冷却構造の冷却器を新規に開発し、プリウスと比較し内部圧損の低減、軽量化を実現している。

これらパワーコントロール系ユニット全体でプリウスと比べて、重量で1.1kg軽量化でき、体積で-12%の小型・軽量化になっている。

プリウス用の巻き線 バッテリーアクア用のモーター巻き線

↑左の写真はプリウス用のモーターで、右がアクア用モーター。巻き線が角型に変更されているのがわかる

モーター部では駆動用、発電用ともに新設計のモーターを開発している。巻線を角線コイルにすることで、電気抵抗を低減でき、配線スペースが縮小でき小型・軽量化している。このモーターとセットで機能するモーターリダクション機構は、専用設計とすることで、軸間距離を短くすることができ、さらに軸受け部の最適設計により、プリウスと比較し全長21mm、重量8kgを低減しトランスアクスル全体を小型・軽量化している。

ギヤトレーンでは、リダクションプラネタリ用リングギヤと動力分割プラネタリ用リングギヤをひとつのギヤに一体化し、部品点数を減らし、ギヤ数の少ないシンプルな構造にしている。そのギヤ歯面仕上げには低振動、静粛性が高まるように研磨加工を施している。

駆動用バッテリー本体は十分な電圧を確保しつつ、1モジュールあたりのセル数を6個にして20個のモジュールでブロック化(120セル)している。168セル構成(28個)のプリウスに比較しバッテリーサイズを約29%コンパクトにしている。この小型化されたバッテリーは回復充電の最適化が行われ、充電のためのエンジン作動時間がプリウスと比べ約1/3にまで短縮できているという。

プリウス用駆動バッテリーアクア用駆動バッテリー

↑左がプリウス用の駆動バッテリーで右がアクア用。比較しにくいが小型化されている

この駆動用バッテリーは、リヤシート下にコンパクトに収納されている。もちろん、冷却風導入口も確保され、リヤシートへの熱の影響は小さく、あわせて12Vバッテリーもシーと下に収められている。その結果、クラストップレベルのラゲッジスペースを持つことができているわけだ。

駆動バッテリーはリヤシート下 
駆動バッテリーはリヤシートの下に搭載。シート厚も薄くしながら、ホールド性、すわり心地は向上している

アクティブセーフティの点でも多くの安全装置が標準装備となり、高評価できる。急ハンドルや滑りやすい路面でのコーナリング時に発生する車両の横滑りを制御するVDC(ヴィークル・スタビリティ・コントロール)と発進・加速時のタイヤの空転を抑えるTRC(トラクション・コントロール)が標準装備される。また、EBD付(エレクトリック・ブレーキフォース・ディストリビューション)ABS&ブレーキアシストも標準装備となる。走行状態に応じた適切な制動力を前後輪に配分しながらABSが作動するというものだ。さらに急ブレーキであるとこを感知し、最大限にブレーキ性能が発揮されるようにブレーキアシスト機能も搭載されている。

 

●価格 Lグレード169万円 Sグレード 179万円 Gグレード185万円 ●排気量1.5L 4気筒 FF レギュラーガソリン仕様 ●全長3995mm×全幅1695mm×全高1445mm WB2550mm ●最大出力 エンジン部54kw(74ps)/4800rpm 111Nm/3600rpm-4400rpm モーター部45kw(61ps)169Nm ●ニッケル水素バッテリー ●電気式無段変速機 ●減速比 3.190 ●燃費JC08モード35.4km/L

 

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