【試乗記】スズキ ワゴンR/ワゴンR スティングレー S-エネチャージ、ついに軽自動車に搭載されたマイルド・ハイブリッド

マニアック評価vol289

スズキ ワゴンR  FZ
S-エネチャージ搭載グレード「ワゴンR FZ」

ワゴンR「FZ」とワゴンR スティングレーの「X」グレードに、スズキが新開発したマイルド・ハイブリッド・システム「S-エネチャージ」が搭載され、早速試乗してみた。

この新機種は、軽自動車トールワゴン・クラスでトップとなる32.4km/L(FFモデル)の燃費性能を実現したことが最大にアピールポイントになっている。新機種のためでちょっと分かりにくいが、従来のエネチャージ搭載モデルとの比較で、約15万円ほど価格アップとなり、これがマイルド・ハイブリッドの値段と考えてよいだろう。

言うまでもなく軽自動車へのマイルド・ハイブリッド・システム搭載は初となるが、国産車では2010年11月に発売された日産セレナにマイルド・ハイブリッドが初めて搭載されている。したがってワゴンRが2番目となる。もちろん、コスト的に厳しい軽自動車に採用した点は他のカテゴリーとは比較にならないのだが。

スズキ ワゴンR  S- エネチャージ
改良型R06型NAエンジン
S-エネチャージ車専用リチウムイオンバッテリー
回路を新設計したS-エネチャージ専用リチウムイオンバッテリー

今回採用された「S-エネチャージ」は、スズキが採用しているブレーキエネルギー回生システム「エネチャージ」を発展させたもので、オルタネーターで発電を行なうだけでなく、駆動モーターとしても機能する「ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を採用し、減速時に回生された電力はリチウムイオン電池と鉛電池に蓄えられ、そして加速時にはリチウムイオン電池から電力を引き出し、ISGがモーターとして働き、ベルトを介してエンジンのクランクの回転をアシストする。このシステムは減速エネルギー回生だけではなくISGが2.2psの駆動を行なうため、ハイブリッド・システムとして分類されるわけだ。

スズキ ワゴンR  S-エネチャージ ISG
発電と駆動を兼用するISG
スズキ ワゴンR  S-エネチャージ ISG
ISG-クランクプーリーは専用ベルトを使用するため2本掛けに

このシステムはそれ以外に、アイドルストップをしたときのエンジンの再始動も、このISGが担当し、ベルトでクランクを回転させてエンジンをかける。通常のスターターモーターで再始動するより騒音が少なく、滑らかにエンジンをかけることができるのがメリットだ。

ワゴンRの場合はこのマイルド・ハイブリッドを単純に加速時の駆動アシストとして使用するのではなく、ISGが駆動アシストした分だけエンジンの出力を絞り、より燃費を稼ぎ出すという制御にしている。システムの詳細はシステム解説を参照されたい。

スズキ ワゴンR  S-エネチャージスズキ ワゴンR  S-エネチャージ 

スズキ ワゴンR S- エネチャージスズキ ワゴンR S- エネチャージ

実際にワゴンRのステアリングを握って加速し、モーターアシストが作動してもそのアシスト分だけエンジンは自動的に出力を絞るため、体感上はまったくわからない。システムの作動、電気エネルギーの流れはメーターパネルにある表示を見てわかる、という仕組みだ。ただし、モーターアシストは最大6秒間のため、表示も短い。

エネルギーフロー
ブレーキ回生(左上)、停止状態(右上)、ISGの駆動アイスと(左下)、エンジン走行(右下)

ISGによる駆動アシストは、車速15km/h~85km/h、CVTのトルコンがロックアップ状態の時。アクセルの踏み増し操作を行なったとき、エンジン回転3500rpm以下などの作動条件があるため、いつでもアシストが行われるわけではない。

実際に市街地で走ってみると、ゴー・ストップが続くような信号の多い道路では、ごく一瞬、作動することが多い。一方、市街地から出て信号が少ない道路で、巡航状態から少し加速するという場面ではアシストする頻度が多くなることがわかった。

スズキ ワゴンR S- エネチャージ

ドライバビリティという点で少し気になったのが、2000rpm付近からの緩やかな加速や、40km/h付近からの緩やかな加速時には、アクセルを踏み込む→エンジンの回転が上がる→加速が始まるという中で、間が空く感じが顕著なことだった。過去のCVTのようなフィーリングで、エンジンの回転が上がって少し遅れて加速が始まるという、あの独特のもたつき感があるのだ。エンジニアの話では、やはり燃費性能を最重視したためのCVTチューニングの結果らしい。

アクセルの特性は、停止状態からの発進では早開き特有の動き出しになり、アクセルは一定状態でもその後は加速感が緩やかになるフィーリングだった。つまりややリニアリティに欠けるアクセルの特性だ。もちろんアクセルをもっと深く踏み込めば、アクセル開度に応じた加速が得られる。

スズキ ワゴンR S- エネチャージ スティングレー
ワゴンR スティングレーX

ワゴンRスティングレーは、同じような視点で乗ってみると、ワゴンRに比べてアクセルに対する加速のつながりがよく、中間加速も力強く感じた。これはスロットル開度のチューニングの違いなのか、単に仕様のばらつきなのか判然としなかった。ドライバビリティとしてはもちろんワゴンRスティングレーの方が良いことは言うまでもない。

スズキ ワゴンR S- エネチャージ スティングレースズキ ワゴンR S- エネチャージ スティングレー

「S-エネチャージ」を採用したことと合わせ、アイドリングストップシステムもさらに改良され、ISGによる静かなエンジン再始動、そして再アイドリングストップが可能となる速度を下げ、アイドリングストップ頻度を増やしており、他車と比べて完成度の高いアイドリングストップシステムとなっている。

また今回の仕様変更で、「S-エネチャージ」搭載機種はLEDイルミネーションランプなどを装備し、外観でも「S-エネチャージ」の先進性をアピールしている。

またワゴンRスティングレーは、後退時に左右から車両後方に接近する移動物を警告する軽自動車初となる「後退時左右確認サポート機能」と「自動俯瞰機能」を採り入れたバックアイカメラを、スマートフォン連携ナビゲーションとセットでメーカーオプション設定(8万6500円)し、さらにターボエンジン搭載のスティングレー「T」にはクルーズコントロールシステムを採用するなど装備の充実も図られている。

スズキ ワゴンR S- エネチャージ スティングレースズキ ワゴンR S- エネチャージ スティングレー 後方確認サポートスズキ ワゴンR S- エネチャージ スティングレー 自動俯瞰 
▲バックアイカメラ  ▲後退時左右確認サポート機能   ▲自動俯瞰切り替え

スズキ ワゴンR S- エネチャージ スティングレー

特にパッケージオプションのバックアイカメラは、単にバックする時、後方をディスプレイの画面に表示するだけではなく、車両に接近する物体を認識して警報する機能が加えられたドライバー支援システムとなっており、軽自動車として衝突回避用のレーダーブレーキサポートに加え、後退アシストシステムも設定されたことは評価されるべきだと思う。

また、今回登場した「S-エネチャージ」は、今後は他車種への展開も計画されているはずで、今後の軽自動車の燃費技術のメインストリームになると予想される。

ワゴンR 装備・諸元表
ワゴンR スティングレー装備・諸元表

ワゴンR ワゴンRスティングレー価格表

スズキ公式サイト

COTY
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