2015年2月19日、スズキは2代目となる新型SX4 S-クロスを発表した。
◆ポジショニング
このニューモデルの原型は2012年9月のパリショーに出展されたコンセプトカー「S-Cross」で、それをベースに、ハンガリーのマジャール・スズキで製造するCセグメントのクロスオーバーSUVである。
初代SX4は2005年末から生産が開始されたスズキとフィアットの共同開発によるコンパクト・クロスオーバーで、2007年にはセダンも追加されている。フィアットではセディッチとして販売され、スズキはSX4の名称でアメリカ、ヨーロッパ、アジアでグローバルに販売し、生産もマジャール・スズキ、インド、日本で行なわれていた。初代SX4の日本での発売は2006年7月から開始され、2014年10月に終了している。
新型SX4 S-クロスは、スズキの新たなグローバル戦略車と位置付けられ、スズキの小型車に関する技術やSUVの技術を結集して作り上げたクロスオーバーだ。2013年のジュネーブショーでワールドプレミアが行なわれている。
開発にあたってはヨーロッパで徹底的な走り込みを行ない熟成されたという。新型SX4S-クロスはマジャール・スズキで生産され、日本へ逆輸入車として導入される。なおこのモデルは、マジャール・スズキで2013年8月にラインオフしていち早くヨーロッパ市場に投入されており、中国では重慶長安・鈴木で2013年12月から生産している。したがって日本への導入が一番最後となっている。
開発コンセプトは、乗用車としての使いやすさと、先進的な4WDシステムを備えたSUVのテイストを持つクロスオーバーとされている。ダイナミックなクロスオーバー・デザイン、従来型のスイフトのプラットフォームを使用したSX4から、一クラス上のCセグメントとし、ゆったりとした室内空間と大きなラゲッジスペースを確保する。
さらに4WDモデルには最先端の4WDシステム「ALLGRIP(オールグリップ)」を採用し、高い走破性能とハンドリング性能を両立。動力性能と燃費を両立させた新パワートレーンなどを備えている。
◆ボディ&シャシー
エクステリアは、エアロダイナミクス、エモーション、クオリティをテーマにし、ダイナミックなクロスオーバー・デザインを採用した。タイヤは、クロスオーバーにふさわしくフェンダーアーチに樹脂製オーバーフェンダーを装着している。
ボディサイズは、全長4300mm、全幅1765mm、全高1575mm、ホイールベース2600mmとCセグメントサイズにしている。
インテリアはワイド感を強調し、シンプルにまとめたインスツルメントパネルを備え、パネル前面はソフトパッド、部分的にシルバー加飾を用いるなど、簡潔さと質感の両立を図っている。装備ではクルーズコントロール、リヤシート・リクライニング、4WD車は運転席と助手席にシートヒーターなども装備している。
パッケージングはCセグメントにふさわしく、前後シートともに大人にも十分な居住スペースとし、ラゲッジスペースも420L、ラゲッジボードを取り外すと430Lの容量が得られる。このラゲッジスペースにはリヤシートを折り畳むことなく9.5インチ・ゴルフバックが3セット積載できる。
ボディはヨーロッパ製Cセグメントにふさわしい高剛性とし、シャシーも新開発されている。フロントはストラット式で、サブフレームは厚みを従来型の4倍とし、横剛性は70%向上。ステアリングラックはサブフレームにダイレクトマウントされている。リヤサスペンションは従来のトーションビーム+スタビライザーからパイプ潰し式トーションビームとし、軽量化と高剛性を両立する。これらの新シャシーにより、ヨー応答性は30%向上、ロール角は8%低減しているという。
また空力性能の向上に加え、ボディの各部に防音・防振対策を徹底し、車内騒音を大幅に低減。最新のCセグメントにふさわしい静粛性を実現している。
◆パワーユニットと最先端4WDシステム
エンジンは、スイフト・スポーツに搭載されている1.6L・M16A型DOHC/VVTを採用している。高出力・高トルクの追求とフリクションの低減による燃費の向上、さらに軽量化を図っており、出力はレギュラーガソリンで117ps/151Nmを得ている。また、新型SX4 S-クロスはエンジンマウントをヨーロッパ式のペンデュラム(振り子)マウントとし、マウント部の軽量化と振動の低減を両立させている。なお、ヨーロッパ市場ではフィアットから供給される1.6Lのターボディーゼルも設定されている。
トランスミッションは副変速機付きのCVTを採用。このCVTはパドルシフトができる7速マニュアルモードを備えている。
新型SX4 S-クロスは、FFモデルと4WDモデルが設定されているが、4WDシステムは新開発のAIIGRIPが採用されている。このシステムはFF駆動をベースに油圧多板クラッチにより後輪への駆動トルク配分を行なうが、電子制御、4モード切替、車両運動協調制御システムを盛り込んだ最先端の4WDシステムとなっている。
駆動トルク配分は、前輪がスリップしてからトルクを配分するフィードバック制御だけではなく、車両姿勢や駆動輪のスリップを予測するフィードフォワード制御も採用している。運転席の横に設置されたモード切替スイッチによる4モードは、オート、スポーツ、スノー、ロックの各モードがあり、4WD制御だけではなく、エンジン制御、CVT制御、ESPなどが統合して制御されるようになっている。
車両運動協調制御は、舵角センサーやヨーレートセンサーにより、クルマの動きをモニターし、前後輪への駆動トルク可変配分と電動パワーステアリングの操舵トルクを制御する。つまり、ドライバーの運転をアシストするシステムで、アンダーステアやオーバーステアを抑制し、言い換えればラフロードや雪道だけでなく、一般道路でもクルマの運動性能、姿勢制御を行なうという現在では最も進化した4WDシステムと位置付けることができる。