スズキ フロンクスを公道で試乗することができたのでお伝えしよう。2024年秋にテストコースで試乗して以来の試乗で、今回、公道を走行することでより実用性が見えてくるのだ。
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じつは秋に走行したテストコースの路面はとても滑らかで綺麗なこともあり、乗り心地や市街地での扱いなどは評価しにくいコースだった。逆にワインディングでのハイスピード走行や直進性の確認などはテストしやすいという環境だった。だから双方をテストしてみて、初めて商品価値が見えてくるわけだ。
フロンクスの基本情報は、Bセグメントのクーペスタイル・クロスオーバーSUV。1.5LガソリンエンジンのK15C型+12Vマイルフォハイブリッドを搭載。101ps/135Nmにスターター・ジェネレーターは3.1ps/66Nmを発生してエンジンをアシストする。トランスミッションは6速ATパドルシフト付きで、国内モデルのみ4WDを用意している。
インドのグジャラート工場で生産される逆輸入車で、バレーノと共通のHERTECT Bプラットフォームを採用している。インドをはじめ、中東、南アフリカ、南米、オーストラリアに輸出されているグローバルモデルだ。
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さて、ボディサイズは全長3995mm、全幅1765mm、全高1550mm、ホイールベース2520mmとBセグメントだが、A+サイズのダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズとほぼ同等サイズ。ホンダWR-Vやヤリスクロスより小ぶりなサイズにまとめているのが特徴とも言える。
このように、実用車として取り回しがよく使い勝手がよいモデルを目指したモデルと言える。したがって、高級感や上質感といった付加価値要素より、実用価値をより重視したモデルというのが前提になる。
したがって乗り心地もしっとりした上級なものには感じない。ただ、試乗車は1200kmほど走行した個体で、ダンパーの慣らしはできている状況だと思うが、初期入力が硬く、突っ張った感じがする。大きなうねりがあるような路面ではしなやかな身のこなしを見せるものの、路面の継ぎ目やわずかなうねりのある路面では硬さを感じる。実用車とはいえ、ここはもうワンランク上級のダンパーにして欲しいと感じたところだ。このあたりのフィーリングはテスト時には顔を出さないものだった。
味付けの部分で気になったのはアクセル開度に対する加速度だ。いわゆる早開きと言われる制御で、実際のアクセル開度より高トルクを発揮する制御のため、ゼロ発進での飛び出し感がある。そして飛び出したあと3速へシフトアップしてしまうため、急にアクセルレスポンスが落ちたように感じるのだ。これは市街地地の実用域だからこそ感じる部分だ。
これは慣れの問題もあり、10分も乗れば慣れてしまい、わずかにアクセルを踏むように人間がコントロールするようになる。しかし、その踏み方は疲れる。実用車とはいえ、リニアな制御が好ましいのは言うまでもない。日本人ドライバーのレベルはグローバルから見るとけっして褒められたものではないが、そうした制御があるためにリニアな感覚が育たないとも言えるだろう。
一方、ステア応答はまずまず。ただアクセルのレスポンスがゼロから数%の範囲が過剰にレスポンスするので、微小舵はもう少しレスポンスしてもいいなと感じてしまうが、リニアなアクセルレスポンスであれば、現状のステア応答でちょうどよいと感じるのではないかと思う。また手応えもしっかりある。
直進性はあるもののどっしりとした感じはあまりなく、微調整したくなる動きはある。また高速での風切り音は低めに抑えられている。特にサイドウインドウからの音はよく抑えられている。反面ルーフとフロアからの音の侵入はそれなりにあり、雨やトンネルではきになったところ。
インフォテイメント系は先進性というより使い勝手だ。タッチ式ナビを装備しているが、まずまずの使い勝手で良い。アイコンのわかりやすさや使う頻度の高いものが目に入りやすいなどの工夫がある。また空調やラジオなどはスイッチが残されており、これはイージーだ。昨今、風量の変更がタッチパネルの階層の中というモデルもある中、だれもが迷わず使える実用性がある。
後席は、足元が広く、コンパクトなボディサイズとは思えないスペースが確保されている。しかし、ルーフとの境目がちょうど目線の位置にくるため、落ち着きのない行動をとることになる。景色を見る時に頭を上下に動かなければならないのだ。また頭上のクリアランスも小さく圧迫感はある。
さて、フロンクスの最大の魅力はなんだろうか。ひとつには価格があると思う。近年軽自動車でも230万円ほどになっていることを考えると、フロンクスのFFは254万1000円、4WDで279万3000円と格安感があり、実用性にこだわりつつ、可能な限り快適なモデルにしようという取り組みを感じさせるモデルだった。