【スズキ】新型ワゴンR FXリミテッド/スティングレー試乗記 走行中でもアイドリングストップする新型ワゴンR

マニアック評価vol135
新型ワゴンRは、NAとターボ搭載モデルのスティングレーの2タイプがあり、今回のフルモデルチェンジにおけるハイライトはエコクール、エネチャージ、新アイドリングストップという3つの低燃費化技術を搭載したことだろう。もちろん、フルモデルチェンジであるため、エクステリア、インテリアなど全てにおいてオールニューになっている。

新型ワゴンRはキープコンセプトのエクステリアだ

最初に試乗したのはNAモデルで、エクステリアの印象は、大きな冒険はしていない印象で、継続性の強いデザインという感じだ。

乗り込んでのファーストインプレッションはやはり、広さを感じることだ。そして、いい意味での大きさも感じるインテリアだった。実際、ホイールベースで+25mm、室内長で+115mmあり、サイズもアップしている。しかしながら軽ワゴンで最軽量の780kg(FF)と、大きくなりながら軽くなり、JC08モード燃費も28.8km/Lで軽ワゴンNO1の省燃費となっている。

さてエンジンスタート。

走り出しての印象は、非常に乗り心地がよくソフトで、硬い入力はなくマイルドな入力。そのため、上質なフィールを味わう。ただし、エンジン音ははっきりと車内に入り込み、フル加速時には軽自動車らしいサウンドになる。とくに4000rpm付近からは大きくなる。

とはいえ、NAモデルを選択するユーザーの使い方をシミュレーションすれば、そこまでアクセルを踏み込むケースは極わずかなのだろうか。音量を下げる、あるいは音質を変えるなどの工夫をすれば、即、価格に反映してしまい、NAモデルとしての商品力をスポイルしてしまうということかもしれない。標準車の価格は110万9850円。

しかしながら、パワーやトルク感に不満はなく、また、アクセルペダルの早開きの調整がよく、少しの操作で力強く加速体勢に持っていけるので、パワーに対する不安はない。また、先代はCVT、4AT、5MTとラインアップされていたミッションだが、今回は副変速機付きのCVTのみの設定で、巡行運転をするとエンジン回転は下がり、静かに走行でき、しっとりとした乗り心地にフィットしたサウンドとなる。

ハンドリングは穏やかだ。ただ細かいことを言えば、カーブでの保舵や微小舵角のステアをしたときに、電動アシストのゲインを感じるケースがあったが、乗り心地を考えるとこのあたりも上手く処理したい。また、直進性は高く、修正舵をする必要もないが、直進時の座りの良さをもっと強く感じられるといい。

長距離・長時間の運転時に影響することだが、乗り心地がよいだけに、このあたりのレベルも上げて欲しくなる。つまり、これらの要求は、官能品質のレベルを揃えたいという欲が顔を出すということだ。

フロントはベンチシートで乗り降りがしやすい

着座位置は高く前方の視界は広い。キャビンフォワードされた室内も十分な広さがあり、Aピラーの死角も上手く処理されコーナーで気になることもなかった。フロントシートはベンチシートタイプで、着座姿勢はベンチに腰掛けるようなイメージ。そのため、乗り降りがしやすく、楽に車内に乗り込める。座面には後傾斜角があるので、前のめりになってしまうということもない。

↑↑ リヤのレッグスペースは広い。スライド量も十分ある ↑↑

反対にリヤシートは背もたれに十分な傾斜角とリクライニング機能があるため、ゆったり座るイメージだ。前席のシートバックからの余裕の広さがあるので、軽自動車とは思えないほどゆったり座ることができる。そうなると、シートへの要求も高くなり、贅沢な要求へと加速していく。

さて、肝心の低燃費化技術の体感だが、実際に体感できるのは新アイドリングストップだ。減速して時速13kmの車速になるとアイドリングがストップするというアイテムで、試乗でも頻繁にアイドリングストップは行われた。信号での停止はもちろん、止まれの標識でも走行中からエンジンは停止する。しかし、ブレーキペダルの踏力をほんのわずか緩めるだけですぐに再スタートする。

そのため、減速中にエンジンが止まり、再加速をする場面でも即座に再始動され、クルマの動きがギクシャクするようなことはない。ただ、ブレーキ踏力には敏感に反応するので、車両停止直前に停止ショックを和らげるために踏力を弱めると再始動してしまうのだ。そして、そのまま車両停止すると再びエンジン停止。停止、始動、停止という少しビジーな面もあった。

エコ運転しているとブルーのメーター照明がグリーンに変わる。

また、エネチャージは、アクセルペダルを戻すと回生が始まっている状況を示すバッテリーのアイコンがメーター内で点灯する。この点灯はリニアに点灯している(エンジン設計部 法師人克人氏)ということだ。このランプが点灯したからと言ってクルマの挙動、そのほかで感じるようなことは何もない。また、燃費効率のいい状況になるとメーター照明もブルーからグリーンに変わり、エコ運転アシストをしているわけだ。

エコクールに関しては、アイドルストップ中に冷却された蓄冷剤を通過した冷気が車内へと展開するというものだが、試乗日の天気が猛暑ではなかったので、アイドルストップ中にエアコンの効き具合が変化するかどうかは体感できなかった。それよりも、アイドリングストップ自体が始動したり停止したりを繰り返したので、エコクールを見極める状況までに至らなかったというのが正直なところだ。

さて、ターボモデルのスティングレーだが、こちらは車内へ入り込むNVH対策がしてある。

スティングレーのターボ搭載エンジン

例えばNAモデルとはインシュレーターに違いがあり、音という点では大きく異なっていた。エンジン音自体も静かで、加速時でもあの軽自動車らしいという音ではなく、気にならないレベルで聞こえるほどだ。また巡行速度になると、NAと同じようにエンジン回転が下がり60km/hで1300rpm程度なので、非常に静粛な車内になる。振動音自体の入り方も吸音されるので、マイルドな印象となった。

パワー、トルクは当然NAより力強く、特に低速域でのトルク感がしっかりあるため、非常に扱いやすく乗りやすい。力不足という印象はまったくない。また、CVTの制御でもターボのトルクとリニアと感じられるようになっており、加速感とエンジン音の変化がナチュラルと言える。また、加速中にアクセルを抜けば副変速機の威力で、ステップ式ATのトップギヤに入ったように、エンジン回転は下がり静かな走行へすぐさま移行する。

↑↑ スティングレーにはパドルシフト付き ↑↑

パワーステアリングは駐車時の操舵が軽く、女性や年配者への運転しやすいような配慮だ。速度感応タイプのパワーアシストであるため、車速があがれば手応えは少し重くなり、安心感へと繋がる。

ハンドリングはNAとターボでの違いは特に感じられず、同じように直進性はあるが、もう少し座りのいい直進性がつくられることを希望したい。また、コーナーというほど、連続するようなカーブもない試乗コースなので細かな部分まではわからないが、クセもなく適度な手応えを感じながらのハンドル操作だった。

また、カーブ路面に加工された速度を減速させるためのゼブラゾーンでは、入力の吸収は追いつかず、車体は大きく振動していた。路面のうねりや荒れた路面となると、乗り心地に関して違った評価となる可能性もあった。とはいえ、スティングレーではもはや1.0Lクラスのコンパクトカーとの違いがないほどの仕上がりで、軽自動車としてはトップクラスといえるだろう。

 

主要諸元表 (左:ワゴンR、右:ワゴンR スティングレー)

ワゴンR 価格表

 

スズキ ワゴンR 公式サイト

スズキ ワゴンR スティングレー 公式サイト

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