2024年12月17日、静岡県小山町の富士スピードウェイで2025年モデルNBRマシンのシェイクダウンテストが行なわれた。
今季のNBRチャレンジは、これまで活動をリードしてきた辰己英治さんが2024年をもって引退されたため、新体制での挑戦になった。とはいえ、辰己さんの横で2008年の参戦初年度から一緒にNBRに挑戦していた沢田拓也監督がそのままチームをまとめることになる。
そして技術監督は渋谷直樹氏、チーフエンジニアは宮澤竜太氏、チーフPUエンジニアには菊地渉氏が担当し、またスバルの技術本部からも2名の若手が参加。さらに全国のSUBARUディーラーから選抜された8名のメカニックが参加し挑戦する。この日は参戦ドライバーは発表されず、年明けのオートサロンでドライバーが発表される。そのため、この日はNBRマシンの開発テストドライバーを務めてきた佐々木孝太と久保凛太郎の2名が紹介された。
ニュルブルクリンク24時間レースは2025年6月19日(木)から22日(日)にかけて開催され、これまでの挑戦記録を上回る目標でチャレンジする。2024年はこれまでで最も完成度の高いWRX S4となっていたため、多くの記録が期待されたが、決勝レースでは霧により途中で中止。7時間半の走行で終了している。
そのため2019年に記録した145周がこれまでの最多周回数となり、2025年はこの周回数を上回る目標になる。そしてラップタイムは予選中に記録するが、2024年はウエットコンディションが続き、WRX S4のベストラップは24時間レースの数週間前に開催されるクオリファイレースでティム・シュリックが記録した8分52秒がベストラップになっている。そのため、2025年は8分48秒という目標を立てている。
2022年まで使用していたWRX S4のVBA型では9分を切ることが目標の一つだったが新型VBH型にかわり名機EJ20型からFA24型になって、一気に10秒近くタイムは縮めているわけだ。そうしたマシンの進化はどうなのか見てみよう。
辰己さんは主にシャシーとサスペンション、ボディを改良することで走りを磨いてきた。今回の沢田監督はもともとエンジンエンジニアなので、2025年のWRX S4はエンジンにも手を入れているのだ。
まずはエアリストリクターを変更し39mmから41mmへと拡大し、ターボ前の吸気量を広げている。レギュレーションではその変更により最低重量を1300kgへと変更されることになる。ちなみに39mmの時は1220kgだったので重くなることになる。
この変更によりエンジンの出力を上げてしまうと燃費が悪くなるため、空気量を増やすことは燃費を良くする方向にチューンするということだ。ターボ前の負圧が下がり、背圧も下がる。その分充填効率は高くなり、点火時期を早めることができ燃費改善になる。省燃費としても、目標周回は9周と変更ないが、ピットストップでの給油時間は短縮できることになる。
マシン本体では床下をフラットボトム化し、その影響によりリヤウイングの形状を変更している。こうすることでハイスピード時のダウンフォースが増えているということだ。
他にはリヤサスペンションの上部取り付け部の左右を繋ぐドロースティフナーを新規に追加している。コーナリングスピードを上げる材料になっているという。また冷却系の見直しも行い、熱によりリスクが生じる可能性があるゴム類周辺の熱管理を徹底したという。
これらの進化により、目標達成を目指すことになる。autoproveでも現地取材を行ない、詳細をレポートしていく予定だ。