「SUBARU WRX NBR CHALLENGE 2024」ニュルブルクリンク24時間レースはSP4Tクラス優勝を果たし、辰己英治総監督のラストレースを飾った。
SUBARU/STIのニュル24時間レースは2009年から本格的に始まり、そのリーダーが辰己英治総監督だ。COVID-19の影響で2回出場を断念しているが、あとは連続して参戦している。そして2024年は辰己総監督のラストレースで、クラス優勝が絶対という条件で開発は進められていた。
2022年、23年はアクシデントやトラブルがあり、良い結果を出せていなかったこともあり、辰己総監督自身も「忘れ物を取りに行く」と発言していた。
そしてマシン開発は順調に進められ、前哨戦のQFレースでもこれまでのWRXの最速ラップタイムをマークするなど順調な仕上がりを見せていた。
そして挑んだ2024年は、火曜日の車検から日曜のゴールまでずっと天気が悪く、雨と曇り、そして低温という天候で、一日も晴天がないレースウイークだったのだ。だから一周が23kmもある山間のノルドシュライフェは雨のところとドライのところがあり、コンディションはバラバラになる。タイヤ選択も含め難しい状況だった。
そうした中、予選は行なわれ、無事クラストップのタイムを刻み、さらに23年のベストタイムを更新する8分53秒089をカルロ・ヴァン・ダムがマークしグループ3のポールポジションを獲得した。
ニュルの予選規定は参戦ドライバー全員が2周の計測が義務付けがあり、3回の予選では地元のティム・シュリック、そして日本から開発ドライバーを務めていた佐々木孝太、新人の久保凛太郎の4選手とも計測ができ、無事スタートラインに立つことができた。
一方WRXではQ1のあと、ブローバイガスが想定より多く出ていたため、安全を期すためエンジン交換を行ない、その後Q2、Q3の予選を走っている。カルロのベストタイムはQ3で計測したものだが、路面がややウエットであったり、コース上に泥が出ている箇所があったりで、ベストコンディションではない中で、WRXのベストタイムを更新した。
そして土曜日の午後4時にスタートとなったが、フォーメーション・ラップ中に雨が降り出した。スタートドライバーの佐々木孝太はスタートラインを切らずにピットに戻りレインに交換して、ようやくレースが始まった。
その後は順調にラップ数を重ね、グループ2のGT-4を追い抜くパフォーマンスが連続することになる。GT-4はSP10クラスで15台のエントリーがあり、WRXは次々にBMW M4 GT4やアストンマーティンAMR GT-4などを交わしていく。
そして深夜11時20分濃霧のため赤旗中断となった。WRXはちょうどルーティンのドライバー交代のタイミングで、赤旗直後にピットインをし、ティムから二巡目の佐々木に変わるタイミングだった。結局佐々木はピットアウトできずに、そのまま赤旗解除を待つことになるが、オフィシャルからは翌朝8時までレースを再開することはないという情報が発せられ、チームは待機することになった。
そして夜が明けても濃霧は改善せず、昼の12時になっても中断したままだった。そして午後1時にオフィシャルから1時30分から5周のフォーメーション・ラップを行ない、5周終了時点で濃霧の改善が見られなければ、そのまま終了することが伝えられた。
佐々木は再びWRXに乗り込んでフォーメーション・ラップを走るが、結局濃霧のため、レースは中止となった。
ニュルブルクリンク24時間レースの中で、もっとも短い7時間20分のレースを歴史に刻み、幕を閉じた。
赤旗中断の時点で総合順位は40位だったが、レッドフラッグ直後のピットインのため1周減算され、またフォーメーションラップ用にグループ分けしたので、追い抜いていたGT-4がWRXの前に並ぶことになり、順位は総合51位という結果になった。
この辺りはレースフォーマットによる順位変更のため、速さで決まる順位とは言い難いもので、実際は15台のGT-4のうち12台は追い抜きに成功しており、24時間レースであれば全車ラップできた計算も成り立つのだ。それほどWRXのレベルは高いところに上り詰めていたのだ。
こうしてSUBARU WRX NBR CHALLENGE 2024は目標としていたクラス優勝を果たし、辰己総監督の花道を飾ることができた。
2025年以降の活動内容は特に発表されていないが、引き続きニュルへの挑戦は続くと思われ、全国のディーラーメカニックの選抜がレースメカをする取り組みも継続することと思う。そうしたチャレンジ精神を続けることで、マシンの進化、人財育成に位置付けるNBRチャレンジは価値あるレースというわけだ。
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