しかし、残念なことに100Rの改修工事が行なわれたあとの処理がまだ十分ではなく、コース自体はきれいな舗装になったものの、工事での砂の処理が残り、コース上は非常にダスティな状況だったという。そのため、ドライバーも「100Rはダウンフォースが一番欲しい場所なので、リヤウイングの形状も含めて踏みたい場所です。だけど、あの状況だと滑っちゃうので、やめときました」と井口卓人選手はコメントしている。
結局、タイムアタックは取りやめにし、ハードパーツの確認、ニュルへ出向くスタッフのコミュニケーション確認などを行なうレベルで終了となってしまった。
そして次なるテストは、2月下旬に3日間連続テストを予定していて、その最終日に一般公開する予定を組んでいた。しかし、COVID19(新型コロナウイルス)の感染拡大を防ぐために、一般公開は中止されてしまいテストのみ行なわれていた。
そこには、20年仕様のカラーリングで登場したNBRマシンがあった。ボディはルーフ、ボンネット、ドアパネルが鮫肌塗装になり、リヤ周りはスポンサーステッカーが貼られ、部分的に鮫肌塗装になっている。
新デザインは、STIのカラーイメージを踏襲し、ボディカラーを新しくしている。このWRX STIは、3月に再び富士スピードウェイでテストを行なう予定だ。その時は最終仕様となり、4月の前哨戦QF戦に参戦し、本番の24時間レースという予定だ。
NBR20MY諸元
最後にSUBARU WRX STI NBRチャレンジのおさらいを少しお伝えしよう。20年仕様のWRX STIは18年から使われているので3年目となるが、毎年、ボディの改良も含め、全領域に渡り見直しが行なわれている。パワートレーンは2.0LターボでEJ型を使う。これをレース用にチューニングしているが、レギュレーションでエアリストリクターを装着して性能調整されている。また、スーパーGTのようにターボにアンチラグ(ミスファイヤリング)は採用していない。これはターボラグを嫌うより、燃費の悪化の影響が大きいため採用していない。
トランスミッションはヒューランド製のシーケンシャル6速ドグ・ミッションを搭載し、AWDで出場している。サブフレームはラリー用に改良されたタイプを流用しているが、サスペンションなどの基本レイアウトは市販車と同じままだ。全体にレース用に改造されてはいるが、市販車両からの変更は剛性や強度といったものは変更するが、基本骨格は市販車のままというスタイル。そのため補強用のスティフナーなどは、STIから競技用、あるいはチューニング用パーツとして販売されている。また、そうしたパーツの開発も兼ねているということもある。
燃料タンクは100Lを搭載。ニュルの給油方式は市中にあるガソリンスタンドで使われるノズルと同じタイプ。そのため、タンク内のエア抜きがよければノンストップで100L給油できるが、エア抜きが悪いと94L付近でいったん止まってしまうのだという。そのため、今季はタンク形状を変更し、99Lまでノンストップで入ることを確認している。これまでの実験ではバッチリとうまくいっているようで、ピットストップ時間も1回で十数秒は短縮できる。24時間レースで16回ピットインしたとして3分近く短縮できるわけで、単純に1ラップ多く走行できるようになるのだ。
タイヤはファルケンを使用。こちらはレギュレーションの影響もあるが、市販レーシングタイヤを使っている。スペシャルタイヤではなく市販のスリックタイヤだ。またレインはインターミディエイトとヘビーレインの2種類の使用が認められているので、そちらも市販レーシングレインを使っている。