新型車 スバル「WRX S4」、「WRX STI」世界に通用する本格スポーツセダンのポジション確立を目指すニューモデル発表

スバル 新型WRX STI
新型WRX STI(クリスタルブラックシリカ)エクステリアはリヤスポイラー、ホイールを除けばWRX S4と共通

2014年8月25日、スバルは新型「WRX S4」、「WRX STI」を発表し、発売を開始した。新型WRX、WRX STIはすでにアメリカで2015年モデルとして発表済みで、日本では半年遅れの発表となった。

■ポジショニングとグレード
新型WRXシリーズとしては今回のモデルは4代目となるが、WRXのポジショニングは大きく変化している。WRXは初代インプレッサ時代から設定されたスポーツセダンだが、同時に世界ラリー選手権に出場するためのベース車という位置付けであった。このラリーベース車はその後WRX STIに発展する。そしてインプレッサWRXはインプレッサ派生のスポーツセダンとして海外でも認知されるようになったが、スバルとしてはインプレッサ標準モデルの115ps/1.6L自然吸気エンジンからWRX用の200psオーバーの2.0Lターボエンジン、さらには300psオーバーのWRX STIまで共通の骨格を使用する制約も抱えていた。

スバル 新型WRX

もうひとつ、WRXは海外市場でスバルのスポーツセダンとしてブランド名は定着してきたため、従来型モデルからインプッレッサの呼称がはずされ、WRXという単独のブランドにシフトしていた。そして2011年11月に登場したインプレッサがGP/GJ型であるのに対し、今回登場したWRX、WRX STIはVAG/VAB型となり、完全にインプレッサ・シリーズとは別の車種になっているのだ。ちなみにレヴォーグは1.6GTがVM4型、2.0GTがVMG型。

スバル 新型WRX S4
新型WRX S4/WRX STIの開発コンセプト

新型WRXはS4というサブネームが付けられたことも注目。スバルにおけるセダンのサブネームは3代目レガシィにB4が設定されたのが初めてで、レガシィ・セダンは現行モデルもB4と呼ばれている。さらに現行インプレッサにもセダンにはG4という車名が用いられており、新型WRX S4は3番目となる。

スバル 新型WRX S4v
▲WRX S4

商品ポジショニングの観点から見ると、2014年6月に発売されたレヴォーグがレガシィとインプレッサの間に新設定されたスポーツワゴンであり、今回登場したWRX S4はそれと対を成すスポーツセダンで、レガシィ・セダンB4とインプレッサ・セダンG4の中間にシフトしていることが理解できる。ただし、こうしたクラス分けではあってもWRX S4とWRX STIは共通の骨格を持つこともあり、インプレッサやレガシィよりはるかにスポーツ性能が重視され、グローバルなポジショニングでは2.0Lクラスでライバルを寄せ付けない傑出したスポーツセダンとされる。

スバル 新型WRX S4
WRX S4のインスツルメントパネル

新型WRX S4、WRX STIはスバルのスポーツ・スピリットの象徴であり、突出したスポーツ性能が求められるが、同時にレヴォーグのセダン版にふさわしい上質な質感や居住スペース、使い勝手など優れた機能性も同時に求められている。新型WRX S4、WRX STIの開発を担当した高津益夫プロジェクトゼネラルマネージャーは、「WRXはアメリカ市場では若いユーザーも多く、クルマを複数所有していないので、WRXはスポーツ性能と同時にリヤ席の広さやトランクスペースなども重視する必要がああります」と語る。

スバル 新型WRX S4 
WRX S4のインテリア

つまりWRXというブランドは並のスポーツカーを凌駕する走りの性能だけではなく、機能性も優れた万能スポーツセダンであることが求められ、これが一般的なスポーツカーと大きく異なるところと言える。

新型WRX S4の開発コンセプトはハイパワーとコントロール性の究極的なバランスを追求することで、キーワードは「Pure Power in Your Control」とされている。つまりハイパワーと、卓越したコントロール性を両立させることでスポーツカーらしいドライビングプレジャーが実感できるということを意味する。またWRX STIはレースやラリーでの使用も視野に入れたスーパスポーツセダンとされる。WRX S4をベースとしながら、より高出力で、より走りを重視したモデルであり、日本では2.0LのEJ20型、海外では2.5LのEJ25型が搭載されている。

グレードは、WRX S4は2.0 GTアイサイトと、2.0 GTSアイサイトの2機種で、GTSはビルシュタインダンパーの採用や、より上級装備の充実を図った仕様となっている。一方、WRX STIは競技用のベースにもなる標準モデルとTypeSの2機種で、TypeSはビルシュタインダンパー、上級装備を備えている。

■ボディ
レヴォーグと同様に新世代のプラットフォーム、骨格が採用され、プラットフォーム部の板厚は従来より厚くされ、フロントからリヤまで、前後のサスペンションの取り付け部を含め剛性の繋がりを重視し、同時に10mmの重心低下を実現している。ボディではフロントバルクヘッド、リヤシェルフ、フロアフレームなどの補強なども行ない、従来型WRX STIと比べ、ねじり剛性は40%以上、曲げ剛性は30%以上と、空前と言えるほど高いボディ剛性を実現している。

スバル 新型WRX S4スバル 新型WRX S4

また、前面衝突時にエンジンが下方に脱落するという他車にはない水平対向式エンジンのメリットを生かした高い衝突安全性能に加え、WRXシリーズはアメリカ市場でも販売されるため、Aピラーなどの重点部にはホットプレス材を採用。IIHSのスモールオーバーラップ試験でもトップレベルの安全性を発揮できるようになっている。この点が右ハンドル専用のレヴォーグと、世界展開するWRX S4とのボディの相違点だ。

スバル 新型WRX S4

ボディサイズは、全長4595mm、全幅1795mm、全高1475mm、ホイールベース2650mmで、ホイールベースは25mm、全長は15mm、全高は5mmアップしている。つまりボディサイズは大きく変わらず、その一方で室内スペースは大幅に拡大され、大人4名が長距離のドライブで余裕のある居住性を実現している。

■エンジン、トランスミッション
WRX S4に搭載されるのはレヴォーグ2.0 GTと共通のFA20DIT型直噴・ツインスクロールターボで、最高出力300ps/5600rpm、最大トルク400Nm/2000-4800rpmと、同クラスを圧倒するパワー、トルクを発生している。エンジン特性は低中速で厚いトルクを発生する特性になっているが、最高回転は6500rpmと高めに設定。もちろん出力だけではなく、燃費、環境性能も重視され、JC08モード燃費は13.2km/L、排出ガス低減レベルは75%となっている。

スバル 新型WRX S4
FA20 DIT型エンジン
スバル 新型WRX STI
EJ20型エンジン

スバル 新型WRX  S4 /STI

トランスミッションは8速マニュアルモード付きのスポーツ・リニアトロニックだ。DレンジでSI DRIVEの「I」、「S」モードではアクセル開度が少ないときは無断変速、アクセル開度が大きくなると開度に同調したステップ変速となる。「S#」では8速ステップ変速で、もちろんパドルによるマニュアル変速でも8速となる。またこうしたステップ変速での変速速度もDCTや最新のステップATと同等レベルに感じられる。

スバル 新型WRX S4 スバル 新型WRX S4

スバル 新型WRX  S4  CVT_8speed

開発陣は最初からWRX S4にCVTのスポーツ・リニアトロニックを採用する方針であったが、メイン市場となるアメリカの関係者はCVTに対して批判的な意見が圧倒的に大きかったという。しかし、スポーツ・リニアトロニックを実体験すると、そうした批判の声は消えたという。またこのスポーツ・リニアトロニック、FA20DITエンジンはいずれも、最初にWRX S4用が開発され、やや遅れて開発が始まったレヴォーグにも適用されている。一方、レヴォーグはより燃費を重視した1.6 GT用の小容量リニアトロニックの開発に重点を置いたという経緯がある。

WRX STIは高出力で高負荷信頼性が高いEJ20型で、ポート噴射、ツインスクロールターボ、タンブルジェネレートバルブ、2次エアポンプを組み合わせている。海外仕様は2.5Lだ。EJ20型はモータースポーツ用のホモロゲーションも取得してあり、レース/ラリーではDジェトロ制御を使用するため通常は使用されない吸気圧センサーも標準装備されている。したがってエンジン本体は従来型WRX STIと変更はないが、制御ソフトには改良が加えられており、吹け上がりがよりシャープで滑らかになっている。

スバル 新型WRX  STI dccdスバル 新型WRX  STI STI hericalスバル 新型WRX  STI Irtorsen
▲WRX STIのDCCD,フロント・ヘリカルLSD、リヤ・トルセンLSD

WRX STIのトランスミッションは6速MTのみの設定だ。6速MTは従来型のユニットを採用しているがニュートラルポジションを明確化し、さらに各ギヤへの滑らかで節度感のあるシフトが実現するなど改良を加えている。4WDシステムは従来通り電磁クラッチを使用したDCCD式で、オート、オート・プラス、オート・マイナス、マニュアルというマルチモードを備え、前後トルク配分は41:59~50:50。4WDシステムは遊星ギヤを使用した可変制御のVTD式となっている。

スバル 新型WRX  S4/STI

■シャシー
新型WRX S4、WRX STIの開発コンセプトであるドライバーの意のままのコントロール性を実現するため、シャシーの開発はかつてないほど細部までこだわって熟成が行なわれている。開発のターゲットは、当初はハンドリング性能で定評のあるBMW Mなどを想定したが、最終的には世界トップの性能を誇るポルシェ・カレラSをターゲットにしている。特にステアリングの応答性や、ダブルレーンチェンジの性能、フラットな姿勢などでは同等のレベルまで作りこんでいる。

スバル 新型WRX  S4/STIスバル 新型WRX  S4/STI

その前提となるのが強固で剛性の高いボディであり、これを前提としてさらにサブフレームやステアリング剛性、そしてスプリング、ダンパーまで煮詰めている。新型WRX S4、WRX STIともに前後のサブフレームは大幅に強化され、さらに取り付けも補強が加えられている。そして、サブフレームに取り付けられるステアリングギヤのブッシュは従来比200倍、WRX STIは400倍に硬度がアップされている。ステアリングはWRX S4は電動ピニオンアシスト式で、ギヤ比は14.5、WRX STIは油圧式でギヤ比は13.1で、いずれもクイック化されている。

スバル 新型WRX  S4スバル 新型WRX  STI

サスペンションはフロントはストラット、リヤはダブルウィッシュボーン式で、横剛性はフロントが14%、リヤは38%高められている。サスペンション取り付け点も大幅に強化され、スプリング、ダンパー減衰力も20%アップされている。一般的にはスプリングレートやダンパー減衰力を高めると乗り心地が悪化するが、ボディ、サスペンションの取り付け点を強化したことで、よりフラットで応答性の優れたサスペンションが実現している。

スバル 新型WRX  スバル 新型WRX  S4/STI

チューニングとしては、スプリングレートや減衰力を高めるのに合わせてアンチダイブ特性を従来よりやや弱め、さらにリヤのグリップ力の向上を図るため、イニシャルトーインの増大、ダンプ時のトーイン変化の増大を行ない、圧倒的高いリヤグリップ力を実現している。つまり特別な装置を使うことなく、シャシーの基本要素を煮詰めることで、スポーツ性能と意のままのコントロール性の高いハンドリングを達成しているといえる。

なおWRX S4、WRX STIともに「S」はビルシュタイン製ダンパーを採用しており、フロントは倒立式ストラットとなる。倒立式は通常タイプに比べ横剛性が1.5倍となり、より滑らかで正確なハンドリングが得られるメリットがある。

またホイールはWRX S4は17インチと18インチ、WRX STRIは18インチという設定で、全車がPCD:114.3mmとなっている。

スバル 新型WRX  STI
WRX STI

スバル 新型WRX  STIスバル 新型WRX  STI

スバル 新型WRX  STI
WRX STIのインテリア

■インテリア、装備
インテリアのデザインはレヴォーグと同等で、ステアリングはDシェイプ。上級グレードのSモデルはアルカンターラ表皮のシートで、インスツルメントパネルや、シート、ステアリングは赤糸のステッチが採用され、上質でスポーティな見栄えとなっている。メーターは赤色のイルミネーションを採用し、タコメーターとスピードメーターの間にマルチインフォメーション・ディスプレイを配置。この部分にギヤポジションや、アイサイトの表示、車速燃費オドメーターなどが表示される。なおWRX S4は最新のアイサイトver3が標準装備され、WRX STIには装備されない。

スバル WRX S4 諸元表

WRX S4 価格表スバル WRX STI 諸元表

WRX STI 価格表

スバル公式サイト

ページのトップに戻る