スーパーGT SUBARU BRZ GT300 STI渋谷総監督「来季に向け発進」[2/2]

雑誌に載らない話vol272

スバル STIの先端技術 決定版 Vol.24

vol.1では非定常流れ解析によるシミュレーションにより、多くのデータが揃い始め、「感覚の見える化」が今季の大きな収穫だったとお伝えした。今回は、それら得た知見から2019年シーズンはどんなマシンを造っていくのか、そのアウトラインと抱える課題を整理してお伝えしよう。

2019年のマシンは非定常流れ解析がポイント

STI渋谷総監督:「実は、11月の末に富士スピードウェイでテストをしました。やはり昨季と同じですが、空力性能はひとつの要になります。しかし、データが揃ってきたことがあり、今回のテストでは、切り貼り状態の空力ボディですが、トップスピードが1~2km/hあがり、ダウンフォースもしっかりある。そしてラップタイムも上がる結果が出ました。ドライバーの井口君も100Rが乗りやすくなりネガも無いというコメントでしたので、こうしたデータ解析を基にしたマシンづくりを各サーキット仕様として作っていくことになります」

STI渋谷真総監督
STI渋谷真総監督

SUBARU BRZ GT300は優勝した菅生大会でボディを大きく変更していた。今回のテストではそのボディをベースにして、ダウンフォースをキープしつつ空気抵抗を6.5%程度さげるトライをしたという。非定常流れ解析の結果をベースに、主にフロント周りを改良してテストし出た結果ということだ。ちなみにトップスピードが2km/h上げるには、馬力に換算すれば15ps程度出力を上げないと達成できないという。また、「非定常流れ解析」とは時間の経過とともに変化する流れを解析する技術のこと。

ピットストップの短縮化はできるのか?

一方、もうひとつの問題が燃料の給油時間だ。他のチームより4.3秒~8.6秒余分にかかっている。スーパーGTでは給油ノズルにリストリクターが装着されており、吐出量の制限を各チームは受けている。GTAが決めるリストリクターのサイズは、GT3マシンは車種によって異なるが、JAF勢は一律27.5φとなっており、これでほぼ同等のピットストップ時間になる計算だ。もちろん、燃費が悪ければその分給油量が増えるのでピットストップは長くなる。


SUBARU BRZ GT300はJAF規定で製作されたマシンなので、他のJAF勢とおなじリストリクターを装着している。が、よく見ればライバルは、ハイブリッドマシンとNAマシンなのだ。BRZはターボ車。しかも小排気量(2.0L)であるため過給圧は高く燃費が悪くなってしまっている。給油装置のリスが他のJAF勢と同じ扱いなので、ピットストップ時間は他のJAF勢より長くなっているわけだ。

最終戦のレースでもピットストップで順位を落とすという展開があったように、チームが抱えている大きな問題でもある。

タイヤのレベルが変わってきた

スーパーGTはよくタイヤ戦争だという言葉を聞く。確かにタイヤが影響することは事実だが、今季、無交換作戦、2本交換作戦というのを目にした。一方、BRZでは良くて2本交換、通常は4本交換せざるを得ない。そうした中、かつては「予選は遅いけどピットストップの時間が短いので、順位が上がる」という戦略があった。

しかし、今季のレースではヨコハマ、ブリヂストンともに予選も速く、決勝でもライフが長いというタイヤが出現してきている。SUBARU BRZ GT300はダンロップを装着するが、他のダンロップユーザーも無交換作戦は取れていない。つまりヨコハマとBSを比較すると、ダンロップは予選は速いがライフが短いというキャラクターのタイヤと言える。

渋谷:「1レース300km、戦えるタイヤが必要になってきていると感じています。今季は特に思い知らされました。ですから、ダンロップさんには300km走り切れるタイヤ開発を一緒にやっていきましょう、というスタンスを投げかけています」

まとめ

今季の課題点を踏まえ、来季のマシンづくりが見えてくる。それは各サーキット毎のシミュレーション結果をもとに、空力とダウンフォースを変更し、サスペンションをセットアップしていく。燃費に関してはエンジンそのものを燃費が良くなるように変更するには、規則の中では厳しいものがある。そのため、ハイブリッド、NAと同じ規則下にあるターボ車には、不利であることをGTAに認めてもらうことを嘆願中である。そしてグリップが高くロングライフのタイヤを開発する、といったあたりが目標となるだろう。

とは言え、燃料給油時間、タイヤともにチーム側だけでは課題解決できないことも知っておきたい。そして得意なサーキットでは優勝を目指し、不得意なコースではできるだけ多くのポイントを稼ぐことを目標に戦えれば、シリーズチャンピオン争いの土俵にいることは間違いない。このあたりが2019年の見どころとなるだろう。<レポート:編集部>

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*取材協力:SUBARU TECNICA INTERNATIONAL

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