2026年4月11日(土)、12日(日)にSUPER GT2026のシーズンが岡山国際サーキットで開幕した。
SUBARU BRZ GT300は待望のニューエンジンEG33型ツインターボを搭載し、シリーズチャンピオンを目指して参戦した。このエンジン換装はオフシーズンから話題となり、シェイクダウンテストや公式テストで多くの報道陣が訪れ記事が溢れた。それほど注目度も高く、ファンの間でも期待が大きく膨らんでいる中で開幕戦を迎えた。

金曜日は搬入日だ。いつものようにピットの設営をしマシンの走行準備に追われる一日。天気はあいにくの小雨で、昼過ぎまで降ったり止んだりを繰り返すどんよりとした天気だった。ドライバーの井口卓人と山内英輝もお昼過ぎにはサーキットに到着し、スタッフへの声がけをしている。その表情は明るくすっきりとした爽やかな笑顔を交え「お疲れ様です、よろしくお願いします」とひとりひとりに挨拶をしていく。
完璧はまだ遠く、模索の公式練習
土曜日の午前は公式練習だ。前日とは打って変わって快晴となり、日差しも強くなっている。エンジン換装後のBRZ GT300の公式戦初走行の瞬間がやってきた。チームはいつもの手順で、山内が最初に乗り込みマシンバランスをチェックしてからセットアップを始める。
小澤正弘総監督は「やっと始まります。富士のテストが終わったあと考えられる”気になるポイント”を全て見直し、部分的には対策を施し、パーツの交換やチェックもしました。ただ、世界でこの1台だけしかないのでどんなトラブルがでるのかは、正直やってみないとわからないです」と期待と不安が入り混じった表情で、公式練習が始まった。
練習序盤、山内は「マシンのバランスが悪い」とコメントしている。トラクションも薄くアンダーステアもあるという。言ってみればいつもと同じセットアップ風景で、コースによって、タイヤによってマシンバランスは変化し、また路面温度やラバーの乗り具合でも挙動が変化するシビアな世界。その中でベストマッチを探す作業が公式練習中のタスクになる。
いつもと違ったのは、山内が全体のトップタイム付近までタイムが出せるセットを作り込むのだが、今回は6番手あたりのタイムで井口に交代している。井口は通常であればロングランでのばらつきを確認しているが、すでにセットアップは決まったということなのか。
“攻め”から“勝つための走り”へ
ところが、井口からもセットアップに関するコメントが返ってくる。どうやら、井口仕様とでも言うのか、乗りやすいセットを探している様子だ。
以前、シェイクダウンの時に小澤総監督が「エンジンが変わったことで約50kg重くなってます。その分マシンバランスは変わるので、その煮詰めが重要になります。それと走り方も少しかわりますね。これまではトップタイムを出して逃げ切る戦略でしたが、そのためにはアタック時にブレーキをアペックスまで引っ張って、クルッと回ってるイメージですが、EG型になるとトルクがあるので、そこまでブレーキやタイヤに負担をかけずにコーナリングできます」と話していた。
つまりフロントタイヤをメインに旋回するイメージから旋回軸が車体の中央に変わるイメージか。それは井口の得意とする走り方でもあるので、そうした背景を踏まえると井口のセットアップというのも頷ける。

また井口のコメントには「まだアンダーがあるので、もう少しリヤ荷重にしたいけど、そうすると決勝でタイヤが壊れる可能性があると思うので、このセットでいいです」と言った。それは決勝を見据えたコメントも含まれているのだ。これは前年までで聞くことのなかったコメントの類だ。とにかくポールを目指していたセットアップとは、今季明らかに変化していることがわかる。
曇るピット、消えた余裕 厳しい予選結果
午後の予選は井口がA組でアタックをする。念入りにウォームアップを行ない、予選終了間際の1、2ラップが勝負のようだ。10分間の予選で走行でききるのはマックス6周。計測は5周目、6周目ということか。予定どおり、井口は徐々にタイムを上げ、5周目にベストラップの1分26秒871を計測。順位は13位。なんと上位9台までに残れずQ1敗退を喫してしまった。
ちなみに、前年は1分24秒579で予選3位。今季、公式テスト・練習を通じて1分25秒台は井口も山内も一度も計測できていなかった。
ピットの雰囲気は一気に曇った。快活な空気が流れ、どこか余裕を感じさせる空気は一気に吹き飛んだ。宍戸チーフメカニックも「乗りにくいクルマにしかできなかった」とボソッと呟く。予選25位が確定した。小澤総監督も「コメントしずらいですね。あとでお応えします」と。
長いチームミーティングが開かれ、対策は練られる。
迷いから決断へ BRZ、決勝に向けたセット変更
日曜日の決勝も快晴に恵まれ延べ2万5500人のファンが集まっている。前年より3000人ほど多い。ピットウォークは人間渋滞が起きるほど混み合っている。

井口は「ごめんなさい、予選落ちしました」と言うが山内は「ドライバーができることは精一杯やってました」とフォローしている。


決勝レース前の20分間ウォームアップ走行の時間が設けられている。BRZ GT300はセットアップを少し変更した。それは予選のあと、井口が口にしていたことで「ちょっと気になっていることがあって、リヤ荷重をもう少し上げて欲しいんですけど、そうすると他に影響が出ると思うので迷っています」と話していた。

おそらく、予選後のミーティングではそうしたテーマが話し合われ、決勝に向けてはセット変更を行なったのだろう。ウォームアップ走行ではユーズドタイヤでも想定タイムをクリアしていたようで、決勝に向けては明るい材料になった。
均衡するラップタイム 打開策見出せず
25番手からの決勝レース82周、300kmレースは2周のフォーメーションラップを終え、ローリングスタートが切られた。ドライバーは井口だ。1周目23番手で戻ってくる。そして数ラップ後に21位、20位、19位と順位が上がっていく。担当のスティントを終える段階では13番手まで順位を上げていたのだ。

ポイント圏内で戻ってきたBRZ GT300は、タイヤ4本を交換し山内に代わった。だれもが山内の追い上げに期待をした。そして山内自身も決勝前に「マクリますよ(笑)」と笑顔で話していたのだ。
23番手でレースに戻った山内はポジションをあげようと必死にドライブする。しかし思うようにタイムが伸びない。周囲とほぼ同じタイムで走っている。今季のタイヤは耐久性が高いことがわかっているので、レース終盤、最後の10ラップあたりで何かが起こるのか。そうも期待した。
しかし、終盤に近づいても順位は17位どまり。ラップタイムも周囲と変わらない。山内のイライラが伝わってくる展開だ。それでもタイムは伸びないし落ちない。それは周囲も同じだ。ダンロップだけでなく、ブリヂストンもヨコハマも似たようだ。

言葉にならない悔しさ 静かな敗戦
結局山内は17位のままチェッカーを受けた。レースはポールtoフィニッシュを#777のアストンマーティンGT3が成し遂げた。しかも同じダンロップユーザーだ。ただ、使用したタイプはBRZ GT300よりはソフトタイプだという。裏を返せば、ソフトタイプもロングの耐久性が向上していたことがわかる。
ピットに戻った山内は報道陣の取材に応え、丁寧にコメントしてインタビューを終えた。しかし山内の本心はそのコメントにはなかったはずだ。表現のしようのない悶々とした怒り、釈然としない結果。
レース後小澤総監督は「タイヤ戦略も含め、すべての見直しが必要です。期待して応援してくれたファンのみなさんには申し訳ありません」とコメントしている。
また応援に駆けつけていたSTIの賚(たもう)社長は「エンジンの耐久性は証明できました。セットアップは難しかったようですが、これも経験のひとつ。次の富士ではいろんなことに挑戦します」とコメントしている。翻って俯瞰すれば、エンジンとタイヤが全く新しくなった初戦だ。メインの武器ふたつがこれまで手にしたことのない武器で、テストではいい手応えだった。だが、実践ではもうワンランク上を目指す必要があったように見える。
次戦は5月3日(日)、4日(月)に富士スピードウェイで3時間レースが開催される。新たな武器を使いこなすレースができるか。注目してみたい。
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