スーパーGT 第8戦 富士スピードウェイ SUBARU BRZ GT300は8位フィニッシュ

タイヤの影響が大きいレースとなってしまった。「タイヤの表面が通常は溶けてグリップしていますが、表面を削るような状態になって、グリップしない状況になりました。この症状は一旦出てしまうと元に戻らないので、成す術がありません」と渋谷真総監督は、レース終了後に話す。

タイヤトラブルで、ピックアップと言われる症状とはまた違った現象で、ピックアップは溶けたゴム片がトレッド面に張り付いてグリップしない症状。しかし、何かのタイミングでその張り付いたゴム片が剥がれることがあり、そうするとグリップは復帰する。だが、今回の症状はグリップの復活は期待できず、ひたすらスピンしないように守りの走行をするしかなかったのだ。

タイヤ選択から始まった

コロナ感染の影響で最終戦の開催が、例年より3週間ほど遅い開催となった富士スピードウェイでの最終戦。気温、路面温度とも低く、想定するタイヤ選択が課題になっていた。

チームは土曜に行なわれる公式練習で、A、Bタイプのどちらをレースで使うかをテストしていた。朝、気温16度、路面温度21度で山内英輝選手がセットアップを担当し走行を始める。

まずは、Aタイプのタイヤを履きダウンフォースの感触、ブレーキの調整、サスペンションとのマッチングなどの確認が行なわれる。100Rでのアンダーステアやセクター3でのグリップ感など、ここが良ければ、あそこが良くない、といった二律背反との調整でもある。だが、全体的にバランスが悪いため、これまでのデータがあるBタイプのタイヤでの走行に切り替える。このとき、路面温度は25度まで上がっている。するとセクター2で全体ベストのタイムが出た。

ピットへ戻り再びAタイプの走行をする。マシンは空力とサスペンションを変更し計測にトライする。

タイムはセクター1とセクター3で全体ベストが計測でき、ラップタイムも1分35秒417のトップタイムを出した。そこでAタイヤが本命視され、さらにセットアップを煮詰める作業がマシンに施される。

BRZのフロントサスペンションはプッシュロッドタイプで減衰調整やスプリング交換など作業性が良い

だがチームには今回のAタイプでのレース実績がなく、それは、テストの結果ではタイムは出せるがロングランに不安があるという。一方のBタイプはレースでの実績があり信頼性に問題はない。そこで、チャンピオンを狙うにはポールポジションが欲しい、だが決勝には不安が残る、という悩ましい状況でもあった。

AとBでのラップタイムの差はもあり、このタイムをどう捉えるかという判断だが、チーム、ドライバーともBタイプを選択した。やはり耐久性が見えないタイプより、実績のあるタイヤで戦うほうが戦略的にもやりやすいという判断なのだろう。

そして公式練習の後半は井口卓人選手に変わりBタイプで、決勝を想定したロングランテストをする。そこでは1分37秒台での周回ができ、状況を踏まえるといいタイムだと判断している。このとき、優勝した52号車も同じ37秒台で周回をしていたので、同様のテストをしていたと想像できる。

こうして予選にはBタイプのタイヤが選択され、決勝もBで行く決断になった。

ダンロップとブリヂストンの戦い

一方、タイヤメーカーを見渡してみると、予選結果では1位、3位、5位がブリヂストンで、2位、4位、6位がダンロップ、シリーズチャンピオンを獲得した56号車はヨコハマで7位だった。そして決勝レースを見ると、BS勢は無交換で決勝を走破し、優勝した52号車JAF GT3 SupraはBS、2位はヨコハマの56号車GT-R GT3、3位がBSの6号車マザーシャシー86、4位BS65号車AMG GT3、5位ミシュラン9号車ヴァンテージGT3、6位ヨコハマの10号車GT-R GT3という結果だった。

ダンロップユーザーでチャンピオンシップを争っていた11号車のGAINER GT-Rはタイヤ4本交換を2回行なっており、戦線離脱。BRZ GT300はルーチンだけの交換で8位フィニッシュしており、ダンロップ勢ではトップ成績という結果になった。

コースレコードの予選

Q1予選は井口選手が担当し、気温13度、路面温度17度で始まった。朝の公式練習より路面温度が8度も下がっている。タイヤの温まりは悪く計測1周目より2周目、2周目より3周目のほうがタイムはあがっている。3周目のセクター1、セクター2では自己ベストを計測し期待されたが、ダンロップコーナーの入り口で遅いマシンに引っかかり、セクター3でタイムを失う。結果Q1を3位のポジションで通過した。

続くQ2はポールポジションを狙う山内選手がアタックする。気温15度、路面温度20度で、タイヤにはやや良い状況に変化。同様に十分なウォームアップをして3周アタックする。タイムアタック1周目、セクター1では井口選手のタイムを0.07秒、セクター2で0.1秒上回り期待されたがセクター3で遅いマシンに追いつき、タイムアタックを中断する。

そして計測2周目にベストの1分35秒009をマーク。コースレコードを記録した。これまでのレコードタイムは1分35秒707で、0.7秒も上回ったが、なんと上位6台がレコードを記録するというハイレベルな予選でもあったのだ。結果はポールポジションを逃し2位。

良好な耐久テスト

決勝レース前のウォームアップでは、チームはタイヤの耐摩耗性をチェックもしている。このとき装着したタイヤはかなり走り込んだタイヤを使用したことになる。タイムは1分37秒台中盤で、想定レースタイムでもトップタイムに相当する。

そして井口選手は同一仕様のまま走行。タイヤはかなり走行済みとなるが、山内選手のタイムを上回るタイムも計測できている。つまり、選択したBタイヤは62周前後が想定される決勝レースで、レース後半でもベストタイムが計測できる実力があることが証明されていたわけだ。

チームはその耐久性をみれば、Bタイヤの選択は正しく、さらに無交換も可能ではないか?という戦略も浮上し、優勝が見えてくる。

決勝

気温8度、路面温度13度という条件で決勝が始まった。フロントローから飛び出した山内英輝選手は、1コーナーでインを刺しコカ・コーラコーナー(Aコーナー)でトップを奪うスタートダッシュを決めた。決勝で装着したタイヤは予選走行したタイヤで一皮向けた状態でもあり熱は入りやすい。だが、これは各チームとも同じ条件であり、山内選手の好調さを物語るシーンでもあった。

山内英輝選手は、トップを奪ってホームストレートに戻ってきた

だがしかし、この日の52号車の速さは尋常ではなかった。9周目に再び抜き返されると、ついていくことが不可能なほど速かった。レース結果を見ると分かるが、52号車は全車ラップダウンさせているのだ。BoPで性能調整されているマシンとは思えない速さがあった。

山内選手は1分37秒、38秒台で順調に走行を続けるが、徐々にタイムが落ち始め、40秒台までラップタイムが落ちている。このとき、左側の前後ともタイヤがダメになっていると無線が入ったという。

そのため、タイヤ無交換どころか4本交換をせざるを得ない状況になっていた。ピットインまでに、BRZ GT300は41秒台中盤にタイムは落ちていた。が、他チームも同様にタイムは上がらず、ポジション2位で井口選手と交代できた。

ちなみにトップを走る52号車は28周目にピットインをしているが、そのときまで38秒台のラップタイムを刻んでおり、2位のBRZ GT300に31秒711もリードしていた。

猛追も及ばず

交代した井口選手も38秒から39秒台でラップを刻み、12位でコースに戻るもピットインしていないマシンがあるため、実質8位前後を走行している。その後6位までポジションを戻すが、このとき同じダンロップユーザーの11号車とポジションを争った。

しかし、その11号車も40周を過ぎたあたりで4本交換していながら41秒台までタイムが落ち、46周目に2回目の4本交換のためピットインしている。この時点で11号車はチャンピオン争いからは脱落した。

井口選手も39秒台中盤で走行をつづけているが、50周目付近から突如ラプタイムが落ちる。40秒台になり、周回を重ねるごとにタイムは落ち、最後は42秒台となってしまった。井口選手はスピンさせないために必死にコントロールしながらのレースになっていたのだ。

レースは8位でフィニッシュし、結果から判断するとタイヤの及ぼす影響が大きく、今回のレースではなぜ決勝だけタイヤ大幅にグリップダウンが発生したのか?その原因は、路面温度の低さなのか、または路面にのったラバーの影響なのか、詳細はわからない。逆に過去はタイヤのおかげで上位に行けたレースもあり、レースの難しさでもあったわけだ。

どんな状況にもマッチするタイヤは存在しない。マッチングの振り幅を広げれば広げるほどピークパフォーマンスは期待できない。レーシングタイヤはやはりとんがった性能であり、だからこそコースレコードが記録できるわけだ。

SUBARU BRZ GT300の2020年シーズンは終了した。チームランキングは6位、ドライバーランキング5位。渋谷真総監督、井口卓人選手は悔し涙を見せ、幕を閉じた。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>


The Mortor Weekly

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