【感動動画】第1章スバル 水平対向エンジンの優位性を追求 名機スバル「EJ20」型エンジンヒストリー

構造上でも有利な水平対向4気筒

水平対向4気筒エンジンは、こうした車両レイアウトにおける優位点だけではなく、エンジン本体が持つ特長にもある。それはクランクシャフト位相角が180度で、左右の気筒のピストンとコネクティングロッドが左右対称で運動するため、レシプロ運動で発生する振動を打ち消し合い、1次振動はもちろん、直列4気筒エンジンで問題となる2次振動が発生しないのだ。だから水平対向6気筒エンジンは完全バランスとなるが、水平対向4気筒ではわずかな偶力(回転方向の)振動が発生するものの、これはエンジンマウントやクランクシャフト・ダンパーで解決することができるレベルなのだ。

さらに水平対向エンジンは左右に分割されたシリンダーが、クランクシャフトを挟み込む形で締結され、クランクシャフトの保持剛性が高いことも特長となる。直列エンジンの場合は、クランクシャフトは気筒別のベアリングキャップ、またはベアリングキャップを連結した、はしご型フレームで抑え込む必要があり、剛性では不利なのだ。

この他に、水平対向エンジンは直4エンジンより低重心であり、吸気マニホールドの等長化も実現している。なお排気マニホールドは、点火順序が右1-3-左2-4のため排気マニホールドを等長化するためには前方・左右2気筒、後方・左右2気筒を集合させる必要がある。初代スバル1000で等長排気が採用されていたが、それ以後は右気筒、左気筒を集合させる不等長排気マニホールドとしていた。しかし2002年以降は排気脈動効果が利用できる等長・等爆マニホールドへと変更されている。

SUBARUはこうした水平対向4気筒の優位性を活用し、この後WRC3連覇など数々の偉業を達成するEJ20型の開発に着手する。そして現在も国内スーバーGT300クラスのBRZにも、ニュルブルクリンクチャレンジのWRXにも、改良に改良を重ねたEJ20型は現役レースエンジンとして活躍している。<編集部:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

<第2章へつづく>

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