BoPの凄さ
「あと数馬力あれば・・・」という展開なのはライブ配信を見た全員が思ったことだろう。だが、冒頭書いた性能調整されているため、そうはいかないのがスーバーGTでもあるわけだ。
この違いはピークパワーには大差ないものの、トルクの出方にはエンジンの素質によって違いが出る。ランボルギーニの5.2L・V10という大排気量NAエンジンの太いトルクと小排気量ターボのトルクの出力曲線の違いがあの映像ということになる。こうした不利をどこでカバーしてきたのかと言えば、ブレーキングとコーナリングだ。しかし、追いつけても抜けないのだ。ここが来季の課題になる。BoPの中で、どこまで性能アップできるのか、スバルの技術に期待したい。
また、スーパーGTでは連勝はかなりレアケースであり、連続表彰台も難しい。主催側としては全戦で勝者が代わり、最終戦でチャンピオンが決まるというシナリオを理想としている。だから、ハンディウエイトといった制度や過給圧制限、吸気制限(エアリストリクター)、給油速度制限などによって、レースがコントロールされている。
したがって、チームとしては勝ちに行くレースとポイントを取るレース、そしてウエイトを下ろすためのレースといった戦略が重要になり、BoPに合わせた戦い方が必要になってくるわけだ。盲目的に、すべてのレースで優勝を目指すわけではないのがスーパーGTの本当の姿だ。応援するのであれば、このあたりにも注目してみると面白いと思う。
チームによってはあえてQ1をクリアしない戦略もあるという噂だ。タイヤの温存作戦だ。これまでのBRZ GT300ではあり得ない作戦でもある。シリーズチャンピオンを取るためには、ありとあらゆるケースを想定し、英知を集めストラテジーを組み立てる必要があるだろう。
内容の充実
さて、12位に沈んだ最終戦だったが、内容はトップチームに匹敵するものだった。すべてのシーンでミスがなく、スムーズに展開した。マシンは安定し、ただただ、順位を挽回する走りに徹することができていた。
これまでトラブルが出た部品に対しては、新たにサプライヤーの協力を得たり、違うサプライヤーへと変更したりとパーツの管理を徹底する施策が取り入れられている。またエンジンやミッションといった駆動系のパーツ管理も徹底し、絶対にトラブルを出さない取り組みを行なっていた。
2018年試行錯誤した空力性能もひと段落し、コースごとに、あるいはコーナーごとにタイヤにかかる荷重の計測からボディ形状、サスペンション設定、ジオメトリーなどの関連付けが深まるようになっている。前回もレポートしたがSTIが取り組む解析技術によって、セットアップに迷うことが少なくなっているわけだ。
ちなみに、今回装着していたフロントスプリッターは第3戦の鈴鹿で使った仕様になっていた。菅生、オートポリスとも異なるエアロパーツをチョイスしている点でも、そうした技術的裏付けがあるからこその判断であるのは言うまでもない。
そしてタイヤの性能についても、コーナーごとの最大荷重、横Gなどのデータから、タイヤ性能の向上に役立っているのは間違いない。その結果がこの最終戦でのタイヤ無交換作戦の成功につながったわけだ。
EJ20型エンジンの終焉?
スバルファンには常識だが、BRZ GT300にはEJ20型+ターボを搭載している。その市販車に搭載するEJ20型は30年の歴史に幕を閉じた。スーバーGTのBRZとニュルブルクリンク24時間レースに出場しているWRXは、市販エンジンのEJ20型をベースにレース向けにチューニングしたものだ。また90年代に大活躍したWRCでもこのエンジンを使い、世界チャンピオンに輝いている。
しかし、次期型ハイパフォーマンスエンジンの話は聞かない。2020年のスーバーGTに参戦するとすれば、どんなエンジンでどんなマシンになるのか?期待は膨らむが、現状体制のままで、より研ぎ澄まされた戦略で戦うのではないかと予想する。スーパーGTのスバル/STIチームを運営するR&Dスポーツ代表の本島氏も「チャンピオン取るまでは止められない」と話す。どこかで次期レースマシンの情報を得たら報告したいと思う。