スーパーGT2024 岡山公式テスト 新タイヤに合わせたセットアップと合算タイムアップを模索

スーパーGT2024のオフィシャルテストが3月16日(土)、17日(日)岡山県の岡山国際サーキットで行なわれ、今シーズンの幕を開けた。

今季は予選方式の変更やカーボンニュートラル燃料(CNF)の使用、タイヤの持ち込み本数の削減など、ルール変更が多数あり、各チームはその対応に追われたオフ・シーズンを送っていた。

SUBARU BRZ GT300も変更に対応をするため、富士スピードウェイ、もてぎリゾート、そしてこの岡山でテストを繰り返している。

★空力性能のアップデート

早速、主な変更点をチェックしていこう。まずBRZ GT300の基本骨格は前年からのキャリーオーバーで細部の修正を行なった。主に、空力性能に注力し、コーナリングスピードをさらに上げるためにフロントのリップススポイラーの両端の形状を変更。またフロントフェンダー後端の形状も変更した。

見えない部分ではリヤのアンダーガーニッシュの両端がバーチカル形状になっているが、これをボディ下部まで延長していいルールになったため、延長している

外観ではルーフに「61」のゼッケンが大きく描かれている。グランドスタンドなどファンからひと目でBRZ GT300と分かりやすくしている。

コーナリングマシンに磨きをかけるために空力特性をアップデート

★CNF対応エンジン改良

エンジンにも変更を加えた。今季はCNFを50%ハイオク・ガソリンに混流させるための対策だ。CNFはガソリンと比較して揮発性が悪く、エンジン内部でダイリューション(オイル希釈)が起き、またブローバイガスも多く吐き出すことも確認されている。そのため最悪はエンジンを壊す可能性もあるので、対策を講じたわけだ。

エンジンにも改良が加えられている

対策としてはピストンのトップリングとセカンドリングの間のラウンド形状を変更し、トップリングの張力も変更してダイリューション対策とした。また蒸発を促進するためにオイル温度を上げ、水温と油温の管理を別系統で制御している。

これらの対策を行ない、今回の公式テストに参加したが、エンジントラブルなど一切問題はなかったようだ。

新燃料のCNFはハイオクガソリンと50%ミックスして使われる

★チーム体制に変化

チーム体制では総監督をSTIの小澤正弘氏、監督はR&D SPORTの澤田稔氏と変更はない。ドライバーは井口卓人と山内英輝のコンビに変更はないものの、この岡山の公式テストにはオーディション・ドライバーとして奥本隼士(おくもとしゅんじ)選手が参加していた。そしてこの岡山でGTAのルーキーテストに合格している。

(左)オーディションドライバーの奥本隼士、(中)井口卓人、(右)山内英輝

奥本選手は1999年生まれの24歳。F4で2位2回、TGR育成ドライバー出身といった経歴だが、2021年からレースを始めたばかりという短い経歴で、GT300のオーディションまで登った才能を持っている。

小澤総監督も「このまま順調に成長してリザーブドライバーになってくれるといいですが、まだまだ成長過程にいるので、暖かく見守ってほしい」というコメントだった。

マシンやチーム体制の変更はおおむね、こうした内容で、シリーズチャンピオンを目指すシーズンになる。2021年にチャンピオンを獲得してから徐々に下降している総合成績なので、今季は奮い立ちファンと一緒に盛り上がるシーズンを目指しているのだ。

★レースフォーマットの変更

レースは300km、350km、そして3時間レースというフォーマットに変更されている。3時間レースは富士スピードウェイと鈴鹿、オートポリスが予定されているが、富士、鈴鹿では450km以上の走行距離になりそうだ。

またタイヤの持ち込み本数削減に関して、300kmレースの場合、前年は5セットだったが、今季は4セットに削減。より長持ちするタイヤが必要で、さらに路面温度の変化などに対応するワイドレンジな性能が要求されている。これはGTAが取り組んでいる「グリーンプロジェクト2023」に基づくもので、サスティナブルなタイヤ開発という狙いをタイヤメーカーに協力してもらい、変更に至った。

ルールやレースフォーマットも変更され、タイヤ性能にも期待がかかる

★予選方式も変更

今季は予選方式が変更され、Aドライバー、Bドライバーの合算タイムになった。またGT300クラスは参加台数が多いためA組、B組に分け、走行順は事前の抽選で決定し、またシリーズ順位で奇数順位がA組、偶数がB組に分かれQ1を走行する。

予選はAドラ、Bドラの合算タイムで順位がきまる

Q1は10分間、A組、B組上位8台ずつ計16台がQ2のGr1(upper)に振り分け、下位の各組9位以降がQ2のGr2(Lower)になる。Q2は8分間でQ2のGr1で出走した合算タイムで1位〜12位が決まる。またQ2のGr2で出走した5位以降を21位以下の順位とする。さらにQ2Gr1の13位〜16位とQ2Gr2の1位〜4位は合算タイムで順位を13位〜20位にする、という複雑なルールになった。そしてQ1、Q2は同じタイヤを使用し、決勝のスタートタイヤもこの予選で使用したタイヤでスタートする必要があるのだ。

従来のノックアウト方式ではQ2を走らないマシンがあったり、タイヤの温存などもできたが、この方式ではドライバー全員がコンマ秒の争いをすることになり、より白熱した予選になると想像できる。

★公式テスト

さて、こうしたさまざまな変更があるなか、金曜から公式テストにむけて準備してきたチームだが、キーになるのはタイヤとのマッチングだ。ダンロップの担当者によれば、前年までのタイヤを全て見直し、耐摩耗性をあげながらグリップ力を落とさないタイヤを目指しているということで、レンジ幅を広げたタイプを開発したという。

このタイヤ開発がシーズンオフでのテスト走行のメインメニューだったが、井口はロングでのテスト結果がいいものを得ているという。あとはマシンとのバランスがキーになるとも。

そうした状況の中で公式テストが行なわれた。

土曜日は快晴で路面温度16度からテストが開始された。前年までは予選で井口がQ1を走り、Q2を山内でポールを狙うという戦略が定着し始めていた。が、今季は合算となるため、0秒以下のタイムも重要になってくる。つまりマシンのセットアップを二人が乗りやすい方向を目指す必要があり、従来より、さらに緻密なセットアップが要求されているわけだ。

キーとなるのは前後バランスで、コーナリング、ブレーキングでのバランスを良くし、コーナリングスピードを上げていくセットアップだ。そのためジオメトリーが細かく調整される。もちろん、路面コンディションの違いでセットアップも変更されるし、タイヤの違いによっても変更は必須項目になる。

そのバランスをとるジオメトリーはロールセンター、キャスター、キャンバーといった項目で、そこにダンパーの減衰調整、スプリングのバネレート変更が加わり、さらにエアロによるダウンフォース調整といった項目からベストなセットを探るテストになる。ちなみに調整は1mm単位、角度は0.3度といった微調整で、誤差とも思える調整領域で作業されている。ロールセンターを1mm変更、キャスターは0.3度寝かすなどのレベルということだ。

★Session1

テスト初日のセッション1は3時間の走行枠があり、上記の内容をさまざまなジオメトリーとタイヤの組み合わせで井口、山内の二人が交代でテストを繰り返した。タイムこそ1分26秒台だが、内容は良いという反応だ。この岡山国際サーキットのGT300のコースレコードは2022年にスーパーGT開幕戦で山内が出した1分24秒286というタイムが残っている。

そのタイムからすると、おおきな差があるものの、テスト項目がふんだんにある中で、いいテストになっているというのだから少しは安心だ。ちなみにセッション1での順位は6番手で井口、山内ともに26秒台前半のタイムで揃っている。トップは88号車で25秒台。BRZ GT300との差は0.388秒だった。

★Session2

つづくセッション2は新予選方式の練習としての模擬予選を行なった。Q1を山内が走り9番手となり、Q2はグループ1のUpper groupに入れず、この時点で13位以下が確定した。

タイミングモニターを見つめ、タイム差の確認やライバルチームの動向も気になる

Q2ではユーズドになったタイヤで井口がグループ2のLower groupで走る。井口は3番手のタイムを出し、総合13位〜20位の順位入れ替え枠に滑り込んだ。その結果グループ1の下位2台を上まわり、総合15位の順位となった。ちなみにQ1の山内は1分26秒826でQ2井口がユーズドで1分26秒977だったので、ほぼ同タイムを出せたマシンのセットアップは正解だったという見方ができると思う。

ちなみにトップとは合算で1秒584差で31号車のapr LC500 GTがトップタイムだった。2位52号車で前年のチャンピオン、埼玉グリーンブレイブ。3位45号車ポノスフェラーリ296で、ここはBドライバーが不参加なのでAドライバーのケイ・コッツォリーノが2回走行している。

★Session3&4

さて、2日目のセッション3はどんよりとした曇り空で、気温は前日よりやや低い程度の14度で始まった。BRZ GT300は前日に続いてマシンのセットアップを繰り返す。この日は主に山内を中心にセットアップをしていくが、前日とほぼ同タイムの1分26秒台にとどまったままだ。セッション後半になると雨が降り出し、レインタイヤのテストへと移行した

雨の中、新レインタイヤのテストも行なわれた

ドライバーは井口に変わり、レインタイヤも今季は新規製作されたものになった。見た目はトレッドデザインが変更されており、雨量変化などに対応できるよう3種類のレインタイヤがテストされていた。そして公式テストのラストセッション4はレインで始まり、ドライアップしていくという変化の中でレインタイヤからスリックへ交換するタイミングなどの確認が行なわれて、全セッションを終了した。

公式予選終了後、小澤総監督は「テストはおおむね想定内の内容で、いろんなデータを取ることができました。とにかくタイヤとのマッチング、セットアップの方向を見つけていく作業だったので、いいテストになったと思います」と回答している。

つづく公式テストは翌週3月23日、24日に富士スピードウェイで開催される。マシンに関しては大きな変更予定はなく、順調に出来上がっているようで、富士に合わせたセットアップを探すというテストになるということだ。

今季はレースフォーマットが大きく変化しているため、戦略も含め多少の混乱はあるかもしれない。そうした中で確実にポイントを稼ぎ、全戦ポイントを取ることができればチャンピオンも見えてくる。今季のBRZ GT300に期待したい。

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