スバル STI BRZ tS 2015年モデルを詳しく解説 

BRZ STI tSの2015年。ボディカラーは100台限定の専用色サンライズ・イエロー
BRZ STI tSの2015年モデル。ボディカラーは100台限定の専用色サンライズ・イエロー

STIからBRZのコンプリートカー「BRZ tS」の2015年モデルが2015年6月30日に発表・発売された。受注は同年10月12までで300台の限定モデルとなっている。BRZ tSは2013年にもコンプリートカーとして発売されたが、今回はさらに渋いレベルアップがあり、マニアにはたまらく刺激的な内容となっていた。なお試乗レポートも同時に公開したので合わせて読んでいただきたい。

◆世界NO1のハンドリング性能
STIのコンプリートカーには共通して「Sport Always」、誰がどこで乗っても同乗者を含め「気持ちがいい」と感じ「運転が上手くなる」走りができるというものがあり、目指すは走りの楽しさと質感で世界ナンバー1を目指すというものだ。

スバル STI BRZ  tS  2015モデル

この考え方をベースに、今回のBRZ tSの開発コンセプトは「シンクロナイズド・ドライビング」レースカーなみの操舵応答性に仕上げる、プラス上質な乗り心地にするというものだ。したがって、開発目標には欧州のトップモデルとなるポルシェやBMWなどがベンチマークとされ、これらよりも上のレベルを目指している。

スバル STI BRZ  tS  2015モデルスバル STI BRZ  tS  2015モデル

さて、シンクロナイズド・ドライビングの目指すものとは? 具体的な目標性能として、小型スポーツカーで世界トップクラスの操舵応答性、高速安定性、危険回避性能、ピッチングの小さいフラットライドな乗り心地、静粛性と軽快なサウンドというのがその中身だ。

スバル STI BRZ  tS  2015モデル

スバル STI BRZ  tS  2015モデルスバル STI BRZ  tS  2015モデル

それでは、具体的な技術をみてみよう。操舵に対し遅れが小さい応答性という点では、13年モデルに対して車線変更安定性、コーナリングの楽しさ、気持ち良さを引き上げているという。それには、4輪タイヤの摩擦円を最大化することがポイントになる。つまり、タイヤのグリップ性能をフルに使うということだ。

スバル STI BRZ  tS  2015モデルスバル STI BRZ  tS  2015モデル

そのやり方として、車体の剛性バランスを均一化する。すなわち、曲げ、ねじり剛性の変曲点を最小化し均一化していくこと。それプラス、STIが探求し続けているボディのヒステリシスの排除技術の適用である。その結果ドライバーの意のままに操れるクルマになる、ということだ。

また、ドライバビリティでは2013年モデルと同様にドライブシャフトを大径化することで駆動系のねじり剛性をあげてフィーリングを良く、またブレンボ製の対向ピストン、微少舵応答性に効くフロントドロースティフナー、ステアリングギヤボックスの貫通ボルト採用などで引き上げているという。

◆フレキシブルVバー
こうした13年モデルにも織り込み済みの技術にプラスして、今回はあらたな技術と考え方も投入されている。つまりパーツの投入だけでは目標性能には達せず、コンプリートカーだからこその進化を目指しているわけだ。その新たな部分として、注目したいのは「フレキシブルVバー」だ。

スバル STI BRZ  tS  2015モデル フレキシブルVバー
純正と同形状のフレキシブルVバー
スバル STI BRZ  tS  2015モデル
白い樹脂部分の内部にピロボールを内蔵

フレキシブルVバーとは、フロントストラットトップとバルクヘッドをつなぐ剛性アップ部材だが、量産モデルはここをスチール製で接続部をつぶしたリジット留めとしている。これをバーのセンターにピロボールを仕込んだものがフレキシブルVバーだ。

この考え方は、ステアして荷重が入り、車体に伝達してクルマの向きが変わり、そしてリヤのタイヤが方向を変えてコーナリングが始まる。そのタイミングを少しでも速くするためのパーツであり、ねじり、曲げに対してはピロボールでフリーに逃がし、軸方向の圧縮とひっぱりに対しては高い剛性を維持することができるという考えで、STIが探求するヒステリシスの抑制効果を創り出していることになる。

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こうすることで、車体に対する入力が早まって、車両のヨーと横G応答性が向上するわけだ。さらにピロボールによって路面の微振動がステアリングに伝わらなくなるメリットも生まれている。軸方向の圧縮やひっぱりに対してリジットであれば軸力の伝達スピードが速いことは分かっていて、だから数多くタワーバーが市販されているわけだ。だが、それではフィックスに近くなり、ねじりや曲げの力がタイヤへの雑味として伝わり、タイヤのグリップを最大に使う目標の邪魔になるわけだ。

 スバル STI BRZ  tS  2015モデル フレキシブルドロースティフナーFr
フロント・クロスメンバーとボディフレーム部を結合するフレキシブルドロースティフナー。ロッド内部にバネを内蔵

そして、従来から床下に装備するテンションを掛けたフレキシブルドロースティフナーもフロント床下に装備し、ギヤボックスの取り付けボルトを貫通ボルトにすることで、操舵応答性をアッパーボディとシャシーでコントロールしている構造にしている。

このボディ剛性のヒステリシス抑制、剛性のコントロールという考え方と技術の導入は、国内の自動車メーカーよりもリードしていると考えられるだろう。やはり、剛性を上げるだけでなく、その剛性を手の内に納めコントロールできる技術があってこそ、ドライバーの意のままに走るモデルになるということだと思う。

◆アップサイドダウンのビルシュタイン
2015年BRZ tSでは、この剛性コントロールの他に、フロントサスペンションも変更してきた。ビルシュタインの倒立タイプのストラットを採用し、剛性アップを図っている。もちろん減衰力もチューニングし、乗り心地と操舵応答性にも効いている。ブレーキでは従来のブレンボを継続採用しているが、ディスクは新たにドリルドローターを採用している。

スバル STI BRZ  tS  2015モデル フロントサスペンションスバル STI BRZ  tS  2015モデル リヤサスペンション

こうした改良は操舵応答性の実験データとして、13年モデルとの比較データを見せてくれたものの、サイトでは公表できないということだ。ただ、データをお伝えすると60km/hで走行中に1sec間で10度の速度で切った場合、切り始めてからヨーが立ち上がって、リヤがグリップしGが立ち上がるまでで、ヨーの応答時間が0.12秒から0.07秒に、横G応答時間が0.13秒から0.09秒へと向上した結果が得られている。わずかな数値だが、ドライバーにはその違いがわかるレベルの数値であり、クルマが意のままに動く楽しさが生まれているのだ。

また、この時STIのこだわりとして、ヨーの立ち上がり、Gの立ち上がりで最初に遅れがあるものの、この立ち上がりを急にする意図はなく、急にしてしまうとゲインが高すぎて、遅れがなくゲインが高いと敏感なクルマになりすぎるから、むしろゲインは上げないで遅れだけを小さくするというのがSTIの狙いでもある。

一方ビルシュタインの減衰力チューニングでは、100km/h走行時に0.5秒で5m/s2発生させる操舵をすると、ロールが始まり、ピークを迎え、ピーク付近で13年モデルは若干のぐらつくデータがあった。それを今回は一回でピークとなるように修正している。

そして舵を止めるのでロールの戻りがあり、その時ややオーバーシュート(戻りすぎ)があったがそこを自然に戻るようにも修正している。つまり、揺り返しのない凄く素直で気持のいいコーナリングができるというわけだ。また、乗り心地の点ではアウトバーンのA5号線にあるピッチングの出る箇所をスバルのテストコースに再現し、140km/hで走行しデータ収集をしたという。その結果フラットライドな乗り心地を得ることに成功しているという。

◆静粛性と軽快なサウンド
さて、これらの操舵応答性、乗り心地のほかにも静粛性と軽快なサウンドというのも注目のポイントになる。専用インシュレーターとしてインパネ、トランクルームトリム、ドア内側に吸音材、遮音材を追加し、静粛性を高めている。その結果高周波領域の音圧を下げることができ、耳障りなノイズが低減できているという。このあたりのフィーリングは実際の試乗レポートで報告されている。

スバル STI BRZ  tS  2015モデル インシュレーター
ピンク色の部分に専用の吸音材、遮音材を追加し、静粛性を向上

またインテリアの質感、品質ではサイサポートを向上させたレカロシートを装備している。サイサポートは太もも裏側をささえる部位で、座面の後傾角と微妙にリンクし、ドラ・ポジに影響する箇所であり、改良してきている。また赤をアクセントカラーにし、空調吹き出し口やドアトリム、サイドブレーキの等のステッチにアクセントがあり、専用感を演出している。

エクステリアでもひと目でSTIコンプリートと分かるアイコンとして、フロントグリル、やリヤバンパーにSTIのイメージカラーであるチェリーレッドカラーのストライプを入れ、またLEDデイライナー&デイライナーカバーエクステンション、そしてドアミラー、フェンダーガーニッシュ、ルーフアンテナをブラック化など専用としている。18インチアルミも専用デザインで新採用したドリルドディスクも覗く。もちろんSTIオーナメントがフロントに、リヤにはSTI/tSのオーナメントが装着されている。

じつはこの静粛性を高める技術では、エンジンサウンドへの影響も大きい。耳触りは高周波な音が減ることでエンジン音が届きやすくなり、「いい音がする」という結果につながっていく。エンジンやエキゾースト系では特に変更のなかった2015年モデルだが、あきらかにエンジン音が良くなり、スポーツカーらしいサウンドになっているので、試乗レポートを参考にしてほしい。

スバル STI BRZ  tS  2015モデル リヤSTiオーナメント スバル STI BRZ  tS  2015モデル リヤtSオーナメント

発表・発売は2015年6月30日。受注期間は2015年10月12日までの期間限定で300台。価格は6速ATが399万円(税込)、6MTは369万4444円。ボディカラーは4色。クリスタルホワイト・パール、WRブルー・パール、クリスタルブラック・シリカそして専用色サンライズ・イエローでこのイエローは100台の限定で2015年10月中旬から生産が開始される。

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