スーパーGT2024 第2戦富士3時間レースがGW後半の5月3日(金)、4日(土)に静岡県の富士スピードウェイで開催され、対前年比110%超の8万8400人の大観衆の元、開催された。
見事な五月晴れ、日差しは強く、日陰は涼しい。絶好の観戦日和だ。ドライバーの井口卓人も山内英輝も開幕戦を不本意な形で終了しているだけに、富士3時間レースにかける想いはある。
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またダンロップタイヤも攻撃性の高い路面に苦しめられ、思うような結果にならなかったことにチームは捲土重来を期待したことだろう。チーム担当、ダンロップのエンジニアは「岡山の後、データを持ち帰って対策を検討し、知恵を盛り込みました」と話す。
開幕戦では厳しいBoPでありながら予選は3位となり、決勝レースでも、じつはファステスト・ラップはBRZ GT300だった。ただ、ブリヂストン勢には置いていかれる展開であり、その対策はロングスティントで摩耗してもグリップダウンしないタイヤを目指すことだった。
第2戦ではBoP+15kg、サクセスウエイト2kgが参加条件になった。燃料給油機に装着しているリストリクターは変更なしだ。すでに2023年より100kg以上重くなったマシンに対して、給油時間は従来通りという裁定に小澤総監督も苦しい。
「今年はGT3勢が速いですね。また燃費の良いマシンやロングスティントが得意なタイヤは1回交換だと思うので、BRZ GT300は2回のピットをフルサービスで、タレてきたところで追いつく作戦ですね」と小澤総監督。
今回の3時間レースは2回のピットインと給油が義務付けられており、タイヤ交換本数や無交換への制約はない。もちろん給油量≒給油時間にも制約はない。
好調の兆し公式練習
公式練習ではセットアップを決める。今季のBRZ GT300は、季節や各サーキットの路面に合わせたセットアップデータの蓄積が豊富で、走行前にセットしたデータで走り始め、確認するという手順になってきている。ジオメトリーや空力で大幅な変更はなく、まさに煮詰める状況だ。
セットアップをする山内もマシンのバランスはいいと言う。走り始めて7周目には全体4位のタイムを出し1分36秒644と予選タイムに近いラップタイムを出していた。
「ターンインでリヤが浮き上がりやすく、リヤの頑張りが弱い。フロントはよく掴んでいてその分リヤの接地感が薄くなっている」と山内は言い、タイムが伸びる可能性をトラック・エンジニアに伝えていく。そして17周を走ったところで井口に交代し、ロングランのテストに変わった。17周でのドライバー交代は、いつもより相当早くセットアップが決まったことを意味する。順調に仕上がっているのだ。
しかし、井口はシフトダウンのレスポンスが悪いと伝えてくる。「マシンの重さが効いているのか、レスポンスが悪いです。燃料が減って軽くなるとアンダーが出るし、グリップが薄い感じでずっと走ってます。このままロングを続けるとリヤのグリップダウンが心配です」と。
その後予選から決勝にかけて想定しているタイヤのセットで走ると、コースインして4周目には山内とほぼ同タイムをマークした。予選への期待が膨らんだ瞬間だ。
運ってあるな
予選はシリーズランキングの偶数、奇数順位でA組、B組に振り分ける。BRZ GT300はB組走行になった。走行順は遅いほうが路面にラバーがのり、好タイムが出る。そのため、A組、B組どちらが最初に予選を走るのかは、運次第だ。その運を決めるのは、前レースの優勝ドラバーがくじ引きをする。その結果、今回はB組が先行して予選を走ることになった。
この時点でA組がやや有利になることが想像できる。実際の予選ではグループBは#88を除くと、1分36秒台中盤から後半のタイムで、グループAでは36秒前半から中盤のタイムが上位を占める。つまり0.2秒〜0.5秒ほど後から走った方が有利というリザルトだ。
井口はB組、つまり最初のアタックで13台中5位となった。公式練習のタイムより僅かに落ちた。「1コーナーでシフトダウンが遅くてブレーキで攻め切れなかったです。シフトダウンが気になってしまいました」と。
Q2予選はQ1上位8台が各組から進出し、16台でポールポジションを競う。山内が狙うのはもちろんポールだ。ただ、すでに予選アタックに使ったユーズドタイヤでのアタックになる。グリップピークは過ぎていてもおかしくない。
ドライビングシューズの底をクリーナーで丁寧に拭き、滑らないようにしてマシンに乗り込む山内。集中力を高めてアタック。1分36秒448。井口のタイムを0.51秒上回りQ2では3番手のタイム。しかし二人のタイムを合計すると8位という順位になった。
「シフトダウンが遅かった対策は山内の時には間に合いました。井口の時は、あれでコンマ2、3秒ロスしていると思うので、申し訳なかったです」と小澤総監督。
シフトダウンのレスポンスが悪かったことで、ややロスしていることを認め、さらに予選が後半のグループで走ることができていれば、少なくとも2番、3番のポジションになっていたことがわかる。しかしタラ・レバを言い出せばキリがなくなる。
粘り強くポジションアップ
8位からスタートした決勝。山内→山内→井口のローテーションで挑む。オープニングラップ。前を走る#45 PONOS FERRARI 296のリル・ワドゥーを交わし7番手でストレートに戻ってくる。目の前はベテランの#96 K-tunes RC F GT3の新田守男/高木真一組。しかも同じダンロップユーザーで、抜くには至難の業となる速さを持つテクニシャン2人だ。
18周目、ここにきて「シフトダウンが悪い」と山内から無線が飛ぶ。ポジションは7位。ピットからはシフトプログラムの変更を伝え、なだめすかしながらの走行になる。がしかし、22周目、先行する#96高木真一を交わすことに成功した。いつもながら山内の鬼気迫る追い上げと集中力、操るテクニックには、応援するものを興奮させ、そして幸せにする。ポジションは6位に上がる。
最初のピットインはフルサービスだ。4本交換と燃料を満タンにしてピットアウト。各チームとも似たようなピットストップ作戦だ。コースに戻った山内は、見た目は16位だが実質10位。トップ2台はまだピットに入っていない状況で、山内より下位のマシンもピットに入っていないため、下位マシンに抜かれた順位に見える。
ニュータイヤを履く山内に期待がかかる。しかし、山内より上位を走行していたチームがコースに戻り始めると、順位どおりに山内の前に戻ってくる。給油時間が短いマシンはリードを広げている状況も作った。
想定どおりの展開が・・・
中盤、先行する#7 Studie BMW M4をドライブする荒聖治に接近。バトルになる。最終コーナーで山内がインに入り追い抜くとストレートで抜き返される展開に。しかし山内は攻め続け#7荒聖治の攻略に成功した。
レース開始から2時間。山内のスティントが終了し井口卓人にバトンを渡す。見た目は12位で、実質7位でコースに復帰。コース上には周回遅れがいるものの、井口はひたすら上位を目指し、ニュータイヤで追いかける展開になった。
レース前小澤総監督がイメージした「終盤、タレてきたマシンにフレッシュタイヤで追いかける」という展開になっているのだ。とくに2位を走行する昨年のチャンピオンチーム#52 Green Brave GR Supra GTはブリヂストンユーザーで、2回目のピットインでは無交換でピットアウトしている。その分トラック上のタイムは引き離されているが、ラップタイムでは井口のほうが速い。
残り時間45分になっても先行車との差は縮まらない。タレ始めているマシンはいるが、ラップタイムを見ると1秒以内という僅かな差しかない。ピットストップでは10数秒の差が生じているため、思うような展開に届かないのだ。6位を走る#2 muta Racing GR86 GTには22秒以上の差がある。残り時間を周回数に換算すると、あと20ラップ前後。1周で1秒以上縮めないと6位には上がれない。厳しい状況になってきた。
レース終盤、井口から「ガソリンがない」と無線が飛ぶ。予備タンクを使用し緊急ピットイン。スプラッシュ給油を行ない、コースに戻る。がしかし、再び燃料切れのアラートが点灯、マシンは息継ぎをし始め、セクター3の登り坂で息を止めた。
優勝は#88 JLOC Lamborghini GT3で108周をした。BRZ GT300は106周目の出来事だった。15位完走の扱いではあるものの、再び悔いの残るレースとなってしまった。
レース後小澤総監督は「レースはある程度想定内で展開できいて、タイヤも良い仕事をしてくれているので手応えはありましたが、燃費の計算が狂ったようで、申し訳ありません」とコメントしていた。
次戦は得意な鈴鹿で同じ3時間レース。しかしアクセルの全開時間が富士よりも短いので燃費の悪さが露呈しにくいという。さらに気温が高く、路面温度が高いレースでは実績があり、期待のかかるレースになることは間違いない。コーナリングマシンの性能の高さは今回も証明できている。ポイントは給油時間なのかもしれない。
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