【薄氷】スーパーGT SUBARU BRZ GT300 蓄積したデータを活かしたセットアップでポイント獲得

スーパーGT 2019
スバル STIの先端技術 決定版 vol.33

2019年4月13日、14日に岡山県美作市にある岡山国際サーキットでスーパーGT2019が開幕した。悪天候の中、クラッシュ、リタイヤが多くレースは31周で終了してしまったが、SUBARU BRZ GT300は4位を獲得した。マシンはオフシーズンからテストを繰り返し、さまざまなデータを取ってきたことを活かしたレースになった。

2019シーズンのチームメンバー。STIは新社長平岡泰雄氏体制の元、渋谷総監督が指揮をとる
2019シーズンのチームメンバー。STIは新社長平岡泰雄氏体制の元、渋谷総監督が指揮をとる

予選はドライながら9位

しかしながらロングランテストだけは十分なテストができず、タイヤの耐久性、つまり、グリップを落とさずどこまで周回できるか?といったデータが取れていない。チームは、土曜の午前中に公式練習があり、そこである程度のロングランをして、耐久性の目安を探っていた。

予選ではハードタイプとソフトタイプをそれぞれ使い、決勝を見据え、どちらがサーキットの路面温度、グリップに適しているのかを見極めながらのアタックになる。予選Q1は井口卓人選手がハードタイプを装着して走行。6位でQ1を通過する。予選Q2ではソフトタイプを使って山内英輝選手がアタックし、全体9位という結果になった。しかし、タイムでみるとソフトを使った山内選手のほうが、ハードの井口選手より約0.7秒速いというデータはわかった。

決勝レースはヘビーレインとなってしまった
決勝レースはヘビーレインとなってしまった

ところが、日曜日の決勝は雨。前日に取ったデータとは無関係のレインタイヤを使うことになる。だが、これは各チームともイコールコンディション。レインタイヤの選択には、これまでのチームの経験を生かし、タイヤを選択する。岡山へは3タイプのレインタイヤを持ち込み、ハード、ソフト、そしてその中間というタイプから選択する。

チーム作戦としては、予選が9位という結果なので、スタート直後からできるだけ前に出る戦略を考え、後は抑え切るという展開をイメージしてのタイヤ選択をする。 そしてヘビーレインという路面状況では、車重のあるGT3マシンが有利であり、車重の軽いBRZ GT300はやや不利。そこで、マシンのセットアップも柔らかめのセッティングをする。メカニカルグリップではダンパー、スプリングをもっとも柔らかいタイプに交換し、ブレーキング時にリヤのグリップを上げる効果があるサードダンパーは採用しない。こうしたソフトなセットアップで、コーナリングスピードを上げ、前へ前へという作戦だ。

サードダンパーは今回お休みする。ダンパー本体は取り外されリンケージのみ残る
サードダンパーは今回お休みする。ダンパー本体は取り外されリンケージのみ残る

サードダンパーを採用しない理由としては、直線からのブレーキングで大きな効果を出すパーツだからだ。直線でのブレーキ時、マシンはノーズダイブし、リヤが持ち上がってリヤのグリップが薄くなる。そうした現象を防ぐ効果の高いのが3rdダンパーというわけ。したがってその効果は、リヤの浮き上がりに対して3rdダンパーは押さえつけていくので「短制動」というメリットがあるというわけだ。

ウェット用は持ち込んだタイヤで最もソフトを選択。これが吉と出た
ウェット用タイヤは持ち込んだタイヤで最もソフトなタイプ選択。これが吉と出た

今回のウェットコンディションでは、摩擦係数が低い分「短制動」は難しく、ドライバー、マシンに負荷をかけるより、コーナリングスピードを上げるほうが効果的と考え、セッティングはソフトにして、コーナリンググリップを上げ、だから3rdダンパーは外すというセットアップになるわけだ。もちろん、空力性能では、リヤウイングの角度を変更し、コーナリンングスピードを上げていくためのダウンフォースセッティングという方向に変更する。

実は、こうしたマシンセッティングがウインターシーズンでのテストから得られたもので、タイヤの条件を変えた時に、サスペンション、空力をどのように組み合わせるのがいいかというデータが増えて、選択の幅が広がったというのが今季のBRZの特徴でもある。

わずかな違いがあってもいけない

さて、Q2予選終了間際にマシントラブルという情報もあった。これはドライバーから加速が悪いという指摘があったからだ。そのためチームは加速に影響する部位を洗い出すことになった。考えられるものとしては過給圧があがらない、燃焼に問題があるなど、排気系、燃料系、電装系、制御ソフトの不具合などがリストアップされ、全部で15箇所ほどチェック項目がでてきたという。

疑わしくかつ、交換可能なものは交換していく
疑わしくかつ、交換可能なものは交換していく

そうした中で、ハードパーツの不具合は見つからないものの、インジェクターなどの部品は交換をし、また制御ソフトに関しては、データの確認作業を行なったという。そうした中、燃料が濃くなっているデータが見つかったという。そのため、万全を期すためにソフトをインストールしなおし、実績のある制御ソフトにしたという。

右)土岐エンジン担当エンジニアと渋谷総監督
右)土岐エンジン担当エンジニアと渋谷総監督

加速が悪いとはいえ、トップとの差はわずか0.6秒。だがドライバーは1周0.1秒〜0.9秒以内でコンスタントに数回するテクニックがあり、そうした中でラップタイムの遅れを敏感に感じ取ったわけだ。それが「加速が悪い」というコメントになる。したがって、0.6秒というトップとの差を縮めようとした時には、加速の悪さが顕著に伝わり、もっといえば、その不調を感じ取らなければ、決勝レースでライバルを追い詰めるようなレースができなかった可能性もあったわけだ。

スーパーGT SUBARU BRZ GT300

山内選手の猛プッシュ

こうして、決勝レースは総点検を行なったマシンで走行することになる。ドライバーの山内選手は、「マシンのバランスがいい」というコメントを発しており、ソフト目のセッティングがうまくいっていることを物語っている。したがって、山内選手はヘビーレインの中、猛プッシュが続く。

総点検を終え、決勝レースを迎えるパワートレーン
総点検を終え、決勝レースを迎えるパワートレーン

レースは通常のローリングスタートではなくセーフティカー先導でスタートする方法でレースが始まり、各ドライバーは路面コンディションを確認しながら、マシンを左右に振りタイヤに熱を入れる。そして3周終了時点でSCがコースアウトし、マシンは全開走行に入る。

山内選手の鬼気迫る雨中の猛プッシュで4位浮上
山内選手の鬼気迫る雨中の猛プッシュで4位浮上

山内選手は9位からのスタートだったが、SCコースアウト直後では6位までジャップアップする。しかし、あちこちでコースアウト、スピン、クラッシュがあり、中断、SCが繰り返されるレース展開となっていた。途中、赤旗中断は2回あり、その再スタート後も山内選手のペースは落ちず、前を行くマシンを猛プッシュ。ダブルヘアピンの右コーナーで前を行くGT-R2台がコーナー外側に膨らんだ隙をついて2台を一気にパスし4位に浮上した。まさに、ヘビーレイン用のセットアップがピタリとハマった印象の展開となった。

そしてレースは31周目に多重クラッシュからの赤旗中断〜そのままフィニッシュということになり、その時走行していた順位が確定順位となった。BRZ GT300は4位を走行しており、4位フィニッシュという結果になった。BRZ GT300はここ5年間ノーポイントのレースが続いており、マシン特性としてはマッチする岡山であるのに、ポイント獲得ができなかった悔しさを少しは跳ね返すことができただろう。それもオフシーズンのテスト結果の蓄積によるものということが証明されたレースだったといえよう。

平岡康雄STI新社長と19年BRZ GT300
平岡康雄STI新社長と19年BRZ GT300

次回へ課題としては、予選の時に起きた燃調が狂ってしまった点だ。大事には至らず原因も究明できたためレース中は問題なかったが、再度確認し次回の富士スピードウェイではストレスの残らないレースを展開期待したい。

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