スバルは2019年5月10日に2019年3月期の決算を発表した。周知のようにスバルは2018年10月以来、完成車検査における不正の発覚、さらには完成車検査での燃費測定時の不正や大規模リコールが続いたことに加え、2019前半には納入された電動パワーステアリングに不具合が見つかり、1月の下旬、1週間にわたり群馬製作所の全生産ラインがストップするという未曾有の事態が発生するなど、踏んだり蹴ったりの状態が続いた。
スバルのダメージ
そのため、5月10日に発表された決算では、販売台数は前期の106万7000台から99万9000台に減少し、売上高も3兆2300億円から3兆1600億円にダウンしている。しかし、それよりも営業利益が前期の3794億円から48.5%減となる1955億円となっている。したがって、営業利益率も前期の11%から6.2%へと低下した。
予想されていたとはいえ、厳しい状態だ。販売台数で見ると、国内は登録車が2万2900台の減少、軽自動車が5300台の減で、合計2万8100台の減少となっている。メインのアメリカ市場は、フォレスターのモデルチェンジによるタイムラグで11.2%の減となっているが、こちらは織り込み済みだ。
業績、特に売上高の減少は、完成車検査問題と、2019年1月に発生した電動パワーステアリングの納入部品の不具合による1週間の操業停止が大きく響き、営業利益は、販売台数の低下に加え、リコールによる対策費用の大幅な増大により減益となっている。
アメリカ市場は暦年ベースで見ると、2018年はフォレスターのモデルチェンジにより一時的にフォレスターの販売が減少したが、2018年第2四半期にアメリカ市場専用のミッドクラスSUV「アセント」を投入。アセントは予想を上回るほど順調に販売を伸ばしており、2018年12月末で見ると、アメリカ市場での販売台数は68万4500台と、2017年よりさらに3万4000代ほど台数が伸びており、市場シェアは3.9%に達している。
好調な北米マーケット
スバルはアメリカ市場でのシェアは5%を目標にしているが、2019年4月のデータでは4.2%に達しており、年度としても目標を達成できる見込みだ。アメリカ市場で日本の自動車メーカーは、トヨタも含め軒並み業績を悪化させている中で、スバルだけは例外的に販売台数を伸ばし、利益率を確保している。
スバルは、アメリカ市場全体が僅かに減速してこともあり、従来よりは販売奨励金を100ドルほど増大させ2100ドルとなっているが、利益率は健全レベルで確保しており、アメリカでは「しっかり稼ぐ力は持っている」と中村知美CEOは語っている。また、2019年はアウトバック/レガシィのモデルチェンジを行ない、年内に販売台数70万台を目指している。
生産ラインの大幅刷新
スバルは、完成車検査で過去から継続的に不正が行なわれ、また不正の範囲も最終的に自社内でのブレーキ検査工程でも問題が見つかるなど多岐にわたっていることが明らかになり、これによって生産台数、販売台数もダウンせざるを得ず、特に日本市場での販売を大きく減速させる要因になっている。
実際、販売店ではリコール対策などに追われ、落ち着いて販売促進ができる状態ではなかったが、2019年2月以降は受注ベースでは徐々に回復傾向あるという。
スバルは、これまでの生産体制そのものが問われる事態になっており、その背景には生産台数の大幅な増大、完成車検査の設備が古いままで、検査ラインの停止が許されない状況にあった。そのため、中村CEOの就任時に発表された中期経営計画の中で、モノつくり=品質改革が現在の最大のテーマとなっており、検査設備の刷新、組織変更、検査への取り組みの変更など大幅な改革が進められている最中だ。
そのため、現時点では生産ラインのスピードも落としており、まだ100%稼働に至っていない状況となっている。これは新検査設備の導入と稼働により、下期には通常ペースに復帰できると見られている。また設備等関連では約300億円をすでに投入している。
そのため、2019年の後半にはかつての生産、販売ペースになり収益体制も向上するとみられるが、依然としてアメリカ市場での生産、販売に依存した事業形態であることは、当分続きそうだ。
スズキのダメージ
スズキは5月10日に決算の発表会を行なった。スズキもスバルと同様に、完成車検査の不正が当初の発表より大幅に拡大し、2019年4月の時点でなんと29車種、約202万1590台(2015年5月〜2019年2月製造)という大リコールにまで発展しており、これが収益にも影響を及ぼしている。
スズキの2019年3月度の売上高は前期比3%増となる3兆8715億円で、過去最高だ。しかし営業利益は498億円減少し3244億円となり、4期ぶりの減益となっている。したがって営業利益率も前期の10%から8.4%へと減少した。もちろんそれでも自動車メーカーとしてはトップレベルの利益率ではある。なおリコール対策費用は813億円を計上している。
好調を維持するインド市場
4輪事業の海外売上高は、新興国の通貨安の影響により前期を下回っているが、国内売上高がスペーシア、クロスビーなどの好調により前期を上回ったことでカバーし、4輪事業の売上高は3兆5325億円と前期に比べ967億円(2.8%)増加した。
4輪生産台数では、通期では339万4000台と1.7%増の過去最高を記録しているが、2019年1月〜3月はインドでの生産減少の影響を受け4.7%ほど減少している。なお、モデル・ラインアップの中でマイルドハイブリッドを含むハイブリッド車の販売は、日本では52.7%、インドで8.5%、グローバル合計で16.9%と増加している。そのため、今後もハイブリッド化を一層推進していくとしている。
日本市場では、軽自動車のスーパーハイトワゴンのスペーシア、小型車のクロスビー、さらにモデルチェンジしたジムニーなどが好調で、販売台数は8.5%増加し、軽自動車を除く登録車では17.3%増の初の13万台超えを記録している。
ヨーロッパでは、イグニスやスイフトが健闘したものの、ハンガリー工場は減産し、前年比1%減の27万8000台となった。スズキにとってメイン市場のインドでは175万4000台を販売し、6.1%増の過去最高となっている。インド市場は2030年には1000万台規模に膨らむと予想されており、スズキとしては引き続き生産、販売を強化する方針だ。またASEAN5カ国では17万8000台を販売し、これも前期比4%の増加となっている。インドネシアでは販売が低減したが、ミャンマーでは販売が3倍も増大している。
来期予想はインドでの販売増加を見込むものの、増収減益傾向は続くと予想されている。スバルと同様に、5年で1700 億円の設備投資を計画しており、それは主に完成車検査関係の対策で、例えば完成検査や抜取検査に関する多岐にわたるデータの速やかな判定システムの構築や、検査の自動化などのIT化へむけた投資、さらに国内各工場における検査ラインの増設やリニューアル投資などが含まれる。
また、メインのインド市場への取り組みは、2030年に500万台体制を目指しているが、その一方で今後は排ガス規制対応、電動化などに重点を置くため開発コストの増加を避けることはできない状況が続くと予想されている。特にハイブリッド車を積極的に投入することなどにより、これまでのような営業利益率の確保は難しいと見られている。