【スバル】次世代「アイサイト」を発表 デビューは2014年登場の新型モデルから

先行車はもちろん、走っている状態の歩行者も検知する次世代アイサイトのデモ

2013年10月2日、スバルは先進安全技術説明会を開催し、ステレオカメラシステムを全面刷新し、認識性能などを大幅に向上させ、操舵制御機能を追加し、一段と進化させた次世代「アイサイト」の概要を発表した。

■スバル「アイサイト」がアメリカ道路安全保険協会のテストで最高評価
今回発表された技術の紹介の前に、9月27日にアメリカ道路安全保険協会(IIHS)が初めて実施した前面衝突回避システムの結果が発表され、スバルのアウトバック、レガシィが最高得点を得たニュースをお知らせしよう。ユーザーサイドに立つ非営利団体IIHSが世界に先駆けて衝突回避・自動ブレーキシステムの比較を行なったのは画期的だ。

優秀グループ(SUPERIOR)の成績表
次点グループ(ADVANCED)のテスト結果
IIHSのテスト時の採点基準

テストは最新の中型セダン、SUVの74車種を対象に、12mph(約20km/h)、25mph(約40km/h)で障害物に向かい、自動ブレーキで衝突を回避できる、あるいはより速度を下げて衝突を回避できるかどうかを調べ、これらのテスト結果によりクルマは「SUPERIOR(最優秀)」、それより低い速度ながら衝突回避できるクルマは「ADVANCED (優位)」、さらにそれよりレベルが低いクルマは「BASIC(標準)」とクラス分けされている。

テスト結果では表のように7車種が「SUPERIOR(最優秀)」を獲得した。衝突警報・自動ブレーキシステムを備える他の6車種が「ADVANCED (優位)」とされている。なお、「ADVANCED (優位)」のグループに入っているボルボS60、XC60は標準のシティセーフティのみの装備車だ。

スバルの2車種、アウトバックとレガシィは二つのテスト速度をいずれも完全にクリアし、そのため最高評価グループの中でも最高得点となっており、「アイサイトver2」はアメリカにおいてきわめて高い評価となった。なおこのテスト結果が公表されると、スバルとボルボの販売店への問い合わせが急増しているという。

■アイサイトVer2
スバルは1989年にドライバー支援システムとしてステレオカメラの開発に着手し、1999年にADAとして世界初の市販化を実現した。その後は機械式スキャン方式のミリ波レーダー、レーザーレーダーとの組み合わせも試したが、その後さらにステレオカメラの精度を高め、2008年にアイサイト、2020年にアイサイトver2を市販し、衝突回避自動ブレーキシステムのリーダーとなっている。現在ではスバル車の販売台数の80%はアイサイト装備モデルで、販売累計台数は15万台を超えている。またオーストラリア、アメリカ市場にも導入が開始されている。

スバルの「アイサイト」開発の歴史とシステム
アイサイトver2の機能

アイサイトはレンズ間距離350mmのステレオカメラ方式で、前方の対象物の距離の測定と、対象物の立体として画像認識を行なう。ミリ波レーダーは対象物の形状認識ができず、単眼カメラでは対象物の物体は平面形状で認識するため、立体として検知することは難しいといったそれぞれの特徴があるが、ステレオカメラは人間の目と同様の原理となってる。したがってもちろん暗闇、濃霧、強い逆光状態では機能しないという特性になっている。

このため、現在のレーダー+単眼カメラ式の衝突回避自動ブレーキシステムはボルボのサイクリスト検知機能付きシステムを除き、自転車や歩行者を確実に識別できるシステムは存在しないが、現状のアイサイトver2は、歩行者、自転車も検知できる唯一のシステムといえる。また危険な状態になった場合の自動ブレーキによる衝突回避の速度は公称30km/hとされているが、IIHSのテストでも明らかなように実性能は40~50km/hでも機能すると考えられる。

■次世代アイサイト
今回発表された次世代アイサイトは、まずステレオカメラがカラー画像システムになり、画素数も約4倍にまで高められ、画像認識対象が大幅に向上しているという。ブレーキライト(LEDも含む)や赤信号も認識でき、天候に変化などによる影響も少なくなっている。さらにステレオカメラによる前方捕捉距離、左右方向の視野角ともに現状より約40%向上させている。より向上した認識情報により人間のドライビング操作に近い制御を行なうことができるようになったことが大きな特徴といえる。

ステレオカメラのカラー画像化
カメラの進化により、より長距離捕捉化、より広角視野化

次世代アイサイトは操舵制御も追加
次世代アイサイトの高機能化
新旧カメラ機能比較

車線中央維持の精度
レーンキープアシスト「車線中央維持」機能

レーンキープアシスト「車線逸脱抑制」

次世代アイサイトの新しい機能としては、まず「レーンキープアシスト」が追加される。機能的には2種類があり、一つは車線中央維持機能で、「全車速追従機能付クルーズコントロール」を作動中、約65km/h以上で走行車線両側の白線を認識して走行している場合、車線内中央を維持するよう、ステアリングの自動操舵を行ない、ユーザーの運転負荷を大幅に軽減する。ただしドライバーがハンドルを操作している状態を判定し、無操作状態の時には機能を停止する。もう一つは車線逸脱抑制で、自動車専用道路などを約65km/h以上で走行している場合、車線からはみ出しそうになると、従来の車線逸脱警報(表示+警報音)に加え、ステアリングにトルクを加えることで車線内側方向に操舵する制御を行なう。これらは自動車専用道路や高速道路を走行する状態を想定した機能だ。

対歩行者性能の向上
対車両の衝突回避性能の向上

衝突回避のプリクラッシュブレーキは、 自動ブレーキにより対象物との衝突回避、被害の軽減が可能な相対速度を、これまでの公称30km/hから約50km/hへ向上させている。これはカメラの性能向上による認識範囲の拡大に合わせ、より早い段階から歩行者や自転車、クルマを認識し、車両制御することで実現している。

先行車のブレーキランプ認識による減速制御
先行車認識性能の向上

先行車のブレーキランプ点灯を認識した状態

全車速追従機能付クルーズコントロールは、新たな機能として先行車のブレーキランプ点灯を認識できるようになったことと、カメラ性能の向上により、先行車への加速・減速応答性を高めるとともに、先行車との間への他のクルマの割り込み、コーナー追従性を向上させている。これらは、ステレオカメラのカラー画像化により、先行車のブレーキランプの点灯状態を検出し、全車速追従機能付きクルーズコントロールと連動させることで、追従時に従来機能と比べてより早めの減速を可能とする制御となっているのだ。

トルクベクタリングと操舵トルクアシストを併用した危険回避アシスト

さらに新機能として危険回避アシストが採用される。先行車など前方障害物と衝突可能性が高いと判断した場合、VDCの車両統合制御技術により、ブレーキ・トルクベクタリングを作動させ衝突回避操舵をアシストする。このトルクベクタリングを併用することでヨーレイトは約15%向上するという。また、この新機能により、次世代アイサイトは、走る、止まるに加え、曲がるという車の基本性能の全般を制御できるようになったともいえる。

AT誤後進抑制制御

また新機能としてAT誤後進抑制制御、つまりバックする時の誤発進を防止するシステムも合わせて採用している。もちろんこれはステレオカメラとは関係なく、バック時のアクセルペダルの踏み込み速度をモニターし、アクセルの急な踏み込み、速い後退速度を検出した場合、警報(表示+警報音)すると同時にエンジン出力を制限し、急な後退走行を抑制するというものだ。またこの機能と合わせて、ドライバーが設定できるバック速度リミッターも装備されるという。

今回の発表会においてスバルは、先進ドライバー支援システムを追及することで自動車事故ゼロを目指すとともに、高度ドライバー支援システムとして熟成し、高速道路での自動運転、全方位衝突回避システムを目指すというロードマップも明らかにされたことも注目したい。

次世代アイサイトの新機能
アイサイトの機能比較表

スバルのドライバー支援システム開発のロードマップ

なお次世代アイサイトの価格は現状と同等とする方針だ。またアイサイトは日立オートモーティブとの共同開発だが、コンティネンタル製のVDC(ESP)を採用している車両は、制御アルゴリズムはスバルとコンティネンタルとも共同で取り組んでいるという。いずれにしても、ステレオカメラ技術を24年以上自社開発してきたスバルの、サプライヤーに依存しない独自の技術蓄積は大きな財産になっているのだ。

スバル公式サイト
IIHS(アメリカ道路安全保険協会)公式サイト

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