【スバル】3モーターのPHV+AWD「スバル・ヴィジヴ・コンセプト」の全貌が明らかに 2年後にはデビューか

スイングアップ式のドアを持つヴィジヴ・コンセプト

2013年3月5日からスイス・ジュネーブで開催された第83回ジュネーブ国際モーターショーで、スバルはコンセプトカー「SUBARU VIZIV CONCEPT (スバル ヴィジヴ コンセプト)」のワールドプレミアを行ったが、このほどその詳細が発表された。デザイン的には次世代コンパクトCセグメントのクロスオーバーSUVをイメージしたスタディ・モデルだが、ハードウェアは市販化が近いと感じさせる内容であった。

開発を担当している商品企画本部長の増田年男氏は、「富士重工の創立60周年、スバル・ブランド55周年という節目に、安心と楽しさというブランド・ステートメントをベースにした、近未来の方向性を示すコンセプトモデルとして開発した」と語っている。しかし、その一方でVIZIVが採用しているプラグインハイブリッドAWDシステムの台車(先行開発試作車)はすでにテストコースを走っていることも明らかにしている。ちなみに「VIZIV」とは、Vision for Innovationの略を使用した造語で、コンセプトとしてはCセグメントのクロスオーバーSUV。3ドア・4人乗りのパッケージングを持つ。

商品戦略的にも、アメリカ市場、日本市場でハイブリッド・モデルは必要不可欠と認識し、特にメインマーケットのアメリカでは、2017年以降に関しACC(アドバンスド・クリーンカー)プログラムが環境保護局(EPA)の承認を受けたことにより、CO2排出レベルを2014年レベルの75%とされ、そのためハイブリッドモデルの投入は避けられなくなっている。したがって開発に拍車がかかっているわけだ。

そのためスバルの先進ハイブリッドモデルは、2〜3年後には市場投入する計画と考えられる。「そんなに先ではなく、早い時期に市販したい」と増田氏も語っていた。

商品企画本部長・増田年男氏
新解釈のヘキサゴングリルとホークアイ・ヘッドライト

 

「VIZIV CONCEPT」のデザインは、新世代のクロスオーバーカーのスタディモデルで、塊感、厚み、躍動感を新しい表現で形にしており、アッパーキャビンはシューティングブレイクを想起させるウィンドウグラフィックとしている。その一方でスバルのアイコンとなっているヘキサゴングリルや特徴的なヘッドライト・デザインを継承している。

ボディサイズは全長4320mm、全幅1900mm、全高1510mm、ホイールベース2640mmと、VXとほとんど同等のサイズで、グローバルでのCセグメントより少し小型だ。パッケージングは2ドア、4人乗りとされているが、これはコンセプトモデルならではだろう。

「VIZIV CONCEPT」のドライブ・トレーンは水平対向エンジン、リニアトロニックCVTと一体化された発電・駆動アシスト用フロント・モーター、リヤ左右独立の2個のモーター、フロア下面に配置された大容量のリチウムイオン電池で構成される進化型シンメトリカルAWD。リヤの駆動をモーターが担当することでプロペラシャフトが不要になっている。スバルとしては、今後もシンメトリカルAWDを基盤としたハイブリッドシステムで行くことを明確にしている。

ジュネーブショーで発表された「VIZIV CONCEPT」は、水平対向4気筒のディーゼルターボを搭載していたが、増田氏は「ヨーロッパのショーなのでディーゼルを積みました。もちろんシステムとしてはガソリン・エンジンでも問題ありません」と語っている。トランスミッション部分のリニアトロニックCVT+モーターのユニットは、2013年内に発売される予定のインプレッサXVハイブリッドとほぼ共通のコンポーネンツと考えられる。

ハイブリッドシステムのレイアウト

リヤは左右独立2モーターのため、システム的に駆動力、減速(回生)によるトルクベクタリングとブレーキ制御によるトルクベクタリングの両方を採用しており、これが進化型AWDの大きな特徴になっている。これまでの前後輪への駆動トルク配分と合わせることで、AWDならではの優れた運動性能を実現できるのだ。

つまりコーナリングや危険回避のためのステアリング操作に応じて、前後の駆動力配分と左右輪の駆動力配分を瞬時に変化させ、コーナリングでの曲がりやすさ、コーナリング後の安定性向上に大きな効果を発揮することができる。具体的には、ハンドルを切った時はリヤの駆動力を増やし、またリヤでは旋回外側のモーターの駆動力を高め、旋回内側のモーターを回生状態にすることで旋回方向のヨーを発生させ、ドライバーの操作に俊敏に反応する特性となる。ハンドルを戻した時にはフロントの駆動力を増やし、ボディのヨーが大きすぎる場合はリヤの左右のモーターの駆動力を制御することで安定性を確保する特性となる。

 リヤ駆動を担当する左右の独立モーター

ハイブリッドシステムは、発進や低速走行ではモーターを使用し、中速域以上ではエンジンとモーター駆動を併用する。したがってモーターのみで走るEVモードでは後輪駆動にもなり、高負荷走行ではフロントモーターがエンジンをアシストするブーストモードにもなる。

EVモードでの走行。エンジンとフロントモーターは停止
パワートレインと協調制御する進化型アイサイト

 

加速時にはエンジン+フロント・モーター、リヤのモーターが作動

「VIZIV CONCEPT」はハイブリッドシステムの他に、進化型アイサイトを採用しているのも注目される。進化型アイサイトは、対象物の認識・識別能力が一段と向上しているのはもちろん、運転状況と協調制御できることが大きな特徴だ。

「Hybrid SI-DRIVE」を採用し、「インテリジェント」、「スポーツ」モードに加え、アイサイトとの協調制御による「エコクルーズ」モードを設定。アイサイトのカメラが捕捉、検知した走行状況に応じてエンジンとモーターの出力を緻密に制御し、安全と環境性能を高めるインテリジェントドライブができる。つまり進化型アイサイトは危険回避だけではなく、パワーユニットのフィード・フォワード制御のためのセンサーとしても使用され、結果的により早いタイミングで前後・左右の駆動トルクを制御することができるのだ。

「進化型のアイサイトは白線、ガードレール、道路標識、信号などを識別し、さらに前方の動く物体の形状の把握や、歩行者の接近や自転車の割り込みなどを認知できるように技術を高めている」と増田氏は語っている。

コーナリング時、リヤの右側モーターが駆動し、左側モーターは回生状態

増田氏は、「スバルのハイブリッドは燃費向上のためだけのシステムとは考えていない。走る楽しさ、安心感の向上と環境性能を両立させるシステムと位置付けている」と語っており、「VIZIV CONCEPT」はそのコンセプトを実現したコンセプトカーである。3モーターによるプラグインハイブリッド・システムそのものは、今すぐにでも市販化できるほど現実的なものだ。今後は進化型アイサイトとの協調制御を熟成させることで、より先進的なハイブリッドカーとなるはずだ。そして市場投入はそう遠い話ではない。

スバル公式サイト

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