スバル・インプレッサWRX・STIスペックCとWRX・STI tSを新発売&考察

2010年12月21日富士重工は、スバルインプレッサWRX・STIスペックCと、インプレッサWRX-STI tSを新発売した。

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↑インプレッサWRX・STI tS442万1000円〜 →スペックC332万8500円〜

インプレッサWRX・STIモデルでスペックCの名称は、スーパースポーツモデルの位置付けで、より軽量化されたモータースポーツ用ベースモデルを意味する。もっともシンプルな仕様のスペックC RAモデルは。ジムカーナやラリーのベース仕様と位置付けられている。したがってオンロードでの快適性やプレミアム感も両立させるWRX・STIとはかなり方向性が異なるモデルといえる。

今回のスペックCのベースに選ばれたのは5ドア・ハッチバックボディのみでセダンには設定されない。この5ドアボディの軽量化とエンジン出力強化が実施されているのだ。

まず、エンジンでは、ターボのインペラーシャフト軸受けが、ボールベアリングに変更されたツインスクロールターボを装備する。ベースのWRX・STIはより静粛なメタルベアリング式のツインスクロールターボだが、スペックCはインペラーの回転時に特有の音を発生させるものの、低速時のレスポンスの点でやや有利なためボールベアリング式が選ばれているわけだ。

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このため、ベースモデルより1200rpm低い回転数で最大トルクを発生し、出力も8Nmアップしている。つまりやや低速型となるとともに加速レスポンスを高めているのだ。これに合わせECUも専用品になっているが、低中速の過給圧を少し高めていると推測できる。

このほかには、インタークーラー・ウォータースプレイを採用している。これはレースでのタイムアタック時やラリーでのSS区間で使用されているもので、クーラー部に冷却水を噴射し吸気温度を下げる効果がある。

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シャシーではフロントクロスメンバーを強化している。具体的にはエンジンマウント取り付け部やクロスメンバーとボディとの取り付け部を補強し、結合剛性を向上させることでステアリングの応答性を向上させているのだ。

またリヤデフはトルセンLSDから機械式LSDに変更している。これはモータースポーツで使用する場合に、容易にロック率を変更できる利点を求めたためだ。パワーステアリングはオイル吐出量がアップされ、急操舵時のオイル切れを防いでいる。タイヤは、ベースモデルがバランスの取れたポテンザRE050Aであるのに対し、スペックCは剛性が高く、ドライグリップ力に優れるRE070を装着する。サイズは17インチ、18インチがあり、18インチホイール車の場合は、専用の軽量ホイールを採用している。

細かなところでは、燃料タンク内の燃料ポンプが旋回チャンバー付きとなり、サーキットの高い横Gでも燃料の息付きを防止している。

スペックCの特徴でもある軽量化は、アルミ製ボンネットの採用、小型バッテリーの採用、フロントウインドウやすべてのドアウインドウに薄板ガラスを採用している。当然ながら薄板ガラスの採用により、車外の騒音の透過量がやや大きくなっている。また こうした軽量化により、ベースの5ドア車が1480kg(BBSホイール装備車は1470kg)であるのに対し、スペックCの18インチタイヤ装備車は1440kg、17インチタイヤ装備車が1420kgとなり40〜60kg軽くなっている。設定されるボディカラーは4色だが、17インチホイール車はWRブルーマイカ1色のみである。

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セダンにはtSモデルが限定400台発売

スペックCの追加と同時に、STIチューンドモデルとして、4ドアセダンボディをベースにしたWRX・STI tSとWRX・STI A-LinetSが発売された。

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tSモデルは、他車種のtSと同様に「チューンドby STI」を意味しており、このモデルは2011年3月までの受注で400台限定のスペシャル・プレミアムモデルである。

スペックCは5ドアをベースにしているのに対し、このtSは4ドアをベースにしており、tSはスペックCをベースにしているわけではないのだ。

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これまでのSTIがチューンしてきた通常のtSモデルでは、サスペンション、シャシーを中心にしたチューニング行われているが、今回のWRX・STIに関してはスペックCに準じたエンジン出力アップや軽量化も合わせて加えられ、従来とは少し性格が異なっている。しかし、モータースポーツ用のベースモデルではなく、プレミアムモデルというポジショニングは守られている。

まず、このtSのシャシーチューニングは、専用の前後ダンパー/コイルスプリングに変更され、フロントは倒立式のストラットになっている。そして、ハンドリング特性を改善する、フレキシブルタワーバー、リヤフレキシブルサポート、フロント・フレキシブルドロースティフナーを装備し、リヤサスペンションはピロボールラテラルリンクとするなど専用チューニングが行われている。これらのチューニングは、リニアで意のままに曲がるハンドリング特性を目指しており、この点はこれまでのtSと同じだ。

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エアロパーツは、フロントのアンダースポイラー、小型のトランクスポイラーを装備。また足まわりはSTI製18インチホイールを装着している。インテリアでは、アルカンターラと本革を組み合わせたレカロシート(A-Lineはオプション設定)なども装備している。

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エンジンは、スペックCと同じボールベアリング式のツインスクロールターボ(A-Lineはベース車と同じメタルタイプ)を採用し、専用ECUと組み合わせ、出力、トルクはスペックCと同じレベルになっている。またエンジンマウントなどもSTI製に変更されている。一方で、LSDはスペックCと異なり、ベース車と同じで変更はされていない。

軽量化はスペックCと同様のアルミ製ボンネットに加え、tS専用のカーボンルーフを採用している。このカーボンルーフは、総合化学企業の東レと共同開発され、さらに富士重工・航空機事業部の技術ノウハウを得ることで実現した本格的なものだ。

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当然ながらカーボンはプリプレグ・カーボン材(炭素繊維に樹脂を含浸させたもの)を使用するが、薄いルーフパネル形状のため金型に合わせてカーボンシートを配置し、金型に袋を被せて真空引きを行ったうえで加熱するというVaRTM法という新製法で生産される。この製法は金型を用いるため、生産性、成形性に優れているのが特徴である。さらにカーボンルーフの表面には紫外線劣化に強いクリア材を塗布し、10年程度の耐候性が確保されているという。また衝突試験による強度も確認されており、スチールに勝る強度が得られているのだ。

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このカーボンルーフを採用することで重量は4kg軽量化され、車両の最も高い位置にあるパネルのためロールモーメントを低減するのに大きな効果が得られるという。しかしその一方で、ボンネットのアルミ化とカーボンルーフ以外の部分ではスペックCのような軽量化は行われておらず、STI独自の部品追加もあるため(補強パーツなど)、tSのカタログ重量は1470kgでありベースモデルと同等である。

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ではなぜ、カーボンルーフをtSで採用してきたかという理由は、やはり2011年のニュルブルクリンク24時間レース参戦のためと考えられる。このレースでは、ボディ主要部分は市販採用されているパーツのみが使用できるという規則があるからだ。

スペックC価格表

スペックC価格表

tSモデル価格表

tS価格表

文:編集部 松本晴比古

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