【TRW】半自動運転やさらなる安全技術実現に向けて加速するサプライヤー「TRW」の現状

TRW
TRWオートモーティブ・ジャパン本社と、US本社上級副社長ピーター・レイク氏

2014年3月4日、TRWオートモーティブジャパンがメディア向けに同社の事業戦略に関する説明会が開催し、同社の戦略や次世代戦略を発表した。

TRWオートモーティブとはどんな企業か。アメリカのミシガン州に本社を置くTRWオートモーティブは、一般的にはそれほどの知名度がないものの、源流をたどれば自動車産業の分野では100年を超える歴史を持ち、キャップ付きネジ、エンジン用バルブ、ステアリングホイールを供給する自動車部品メーカーで、大西洋を単独横断飛行を行なったリンドバーグの飛行機エンジンのナトリウム封入バルブを供給した史実もあるのだ。

TRW logo

第2次世界大戦後は、同社は企業合併を繰り返し、自動車部品だけではなく宇宙・航空産業、防衛産業、大型コンピューターなどの分野にも進出し、タイタン・ロケット、宇宙船ジェミニ、大陸間弾道弾などの開発も行なっている。しかし2002年に多分野に渡る事業の再編を行ない、自動車部品部門がTRWオートモーティブとして再スタートを切っている。

安全システム製品群
TRWオートモーティブの現在ラインアップされている安全システム製品

TRWオートモーティブは2013年現在では、世界の自動車部品サプライヤーとしては13位、ヨーロッパでは10位、アメリカでは8位に位置している。2013年度の売上高は174億ドルで、66%がアクティブセーフティに関わるシャシー部品、19%がパッシブセーフティに関わる部品、11%がボディ、エンジン部品など、4%がアクティブ&パッシブセーフティに関わる電子部品という内訳になっている。つまりクルマ作りの基本となるコンポーネンツ以外は、アクティブ・パッシブセーフティに関わる製品を多数供給しているのだ。

売り上げ種別製品・顧客・地域

現在の従業員数は6万6000人以上、拠点は世界24カ国に拠点(22のテクニカルセンターと13のテストコースを含む)を持っている。つまり主要な自動車生産国をカバーし、世界の大手自動車メーカーすべてに部品を供給している。日本では横浜本社&エンジニアリングセンター、広島県・三次工場を始め合計6拠点を展開している。

横浜のエンジニアリングセンターでは、日本の自動車メーカーに納入するためにエアバッグやシートベルトの車種ごとの適合のための試験設備が設けられており、試験のため大規模な原寸サイズに対応した空油圧式スレッド試験機(衝突試験機)を始め、自動車メーカーの要望に応えることができる試験設備が充実している。

スレッド試験機スレッド2
↑実車サイズ、ダミー搭載で衝突を再現するスレッド試験機

TRWの製品を見ると、エアバッグ、シートベルト、ステアリングシステム、運転支援システム、ブレーキ、ABS、ESCシステム、電動パーキングシステム、そしてこれらに関わる電子制御部品などが代表的だ。そしてこうしたパーツは、アメリカ市場だけではなくヨーロッパ市場にも積極的に進出している。

TRWオートモーティブの現状と今後をプレゼンテーションしたピーター・レイク氏(営業・事業開発部門担当 上級副社長)によれば、現在の世界の自動車メーカーのトレンド、消費者の動向、交通安全にかかわる政府とそれに対応した自動車産業の動向を受け、グローバル・トレンドとして自動車の安全性のさらなる向上、より多くのクルマに適合できる値ごろ感、C2/燃費の削減がテーマになっていると分析している。したがってTRRWはこれらにテーマに対応し、アドバンス・シンキング、スマート・シンキング、グリーン・シンキングという3本柱で対応する戦略を立てている。

アドバンスドスマートグリーン

アドバンス・シンキングはアクティブ、パッシブセーフティにおいて広範囲のポートフォリオと最高の専門知識を提供する。スマート・シンキングはシステム統合による付加価値の提供、低コストで拡張可能なソリューション、新興国へのさらなる投資(ブラジル/インド/中国)の拡大を意味する。グリーン・シンキングはパワートレイン以外の効率的ソリューション、ブレーキ、ステアリングなどのハイブリッドシステム化、各コンポーネンツの小型化、軽量化、環境対応だ。

今後の安全性の向上、ドライバー支援システムの高次元化に対しては「コグニティブ セーフティ システム」(認知能力を備えた安全システム)を提唱している。こうした技術を使用した先進技術としては、パッシブセーフティでセルフアダプティブ・エアバッグ、シートベルトエネルギー制御ソリューション、新型エアバッグ-形状や配置の刷新を、アクティブセーフティの分野では車線逸脱防止装置などの最新運転支援機能を実現するデーター統合機能付きカメラ、レーダーセンサー、自動緊急ブレーキ(高速)、衝突被害軽減ブレーキ(市街地走行)、さらにパッシブ、アクティブの両分野に関連してはプリクラッシュセーフティ機能、衝突回避・衝突被害軽減、セーフティドメインECU(多数の情報入力に対応したフレキシブルハブ機能を持つ統合型ECU)などを今後急速に展開するという。

またより普及の拡大を図るシステムとしては手ごろな価格の24GHzレーダーシステム、拡張モジュラー式電動パワーステアリング、拡張型カメラ、統合エレクトロニクス、低価格で軽量化されたベルトシステムや電動パーキングブレーキ、ルーフエアバッグ、新興国市場に特化したユニットなどが上げられる。

CO2、燃費向上のためには統合ブレーキコントロールシステム、電動ステアリング(EPS/EPHS)、タイヤ空気圧監視システム、引きずり低減 ブレーキシステム、軽量エアバッグモジュール、バイオ材料を使用したエアバッグなどが開発されている。

半自動運転要素技術
半自動運転のための3つの要素技術

TRWの今後に向けてのビジョンは、運転支援システムの高度化による半自動運転を当面の目標にするという。そのための要素技術として、次世代の短距離から長距離までをカバーできるレーダー(77~79GHz帯)、このレーダーと連携した全車速追従型アダプティブクルーズコントロール(ACC)、緊急ステアリングアシスト、前方衝突警報、GPSによる前方道路&交通情報の取得、車線中央維持システム、拡張型ビデオカメラによる障害物の検出などのラインアップが用意されている。

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77~79GHzの短距離から長距離までをカバーするレーダー。ACCや衝突回避自動ブレーキシステム用
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日産エクストレイルに採用されたコンパクトな多機能ビデオカメラ(S-Cam )
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フォード車、ボルボに採用されているベルトドライブ式電動パワーステア(上側)

現在のTRW製の最新システムは、日本市場では日産エクストレイルでS-Camカメラ、ECU付き電動パーキングブレーキ、ホンダ・ヴェゼルではECU付き電動パーキングブレーキがすでに採用されている。今後はどの自動車メーカーでもこれまで以上に幅広い車種でドライバー支援システムの採用が拡大される見込みで、TRWの製品が採用される例も一段と多くなるだろう。

TRWオートモーティブ・ジャパン公式サイト

COTY
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