EVからの給電で停電時にエレベーターを稼働 日産と日立ビルシステムが協業へ

日産自動車と日立ビルシステムは2023年1月27日、電気自動車からの給電で停電時のエレベーター利用を可能にするV2X(電気自動車とさまざまな外部のモノとの接続)システムの普及に向けて協業を開始したと発表した。

第1弾の取り組みとして、軽の電気自動車「サクラ」と日立標準型エレベーター「アーバンエース HF」をV2Xシステムで接続し、電気自動車からの給電でエレベーターを継続運転させる実証実験を共同で実施している。

自然災害により停電が発生した際に、社会生活を継続できるようにするための対策に注目が集まっている。特に高層ビル・マンションなどでは、停電時にエレベーターなどの共用部設備が使用できなくなる事態を回避するため、非常時電源として蓄電池などを整備する動きが進んでいるが、導入コストなどが課題となっている。

このような背景の下、日立ビルシステムは、電気自動車の普及によりビルの非常時電源として活用できる可能性が広がっていくことを見据え、V2X技術で電気自動車からエレベーターなどのビル設備に給電を行ない継続利用を可能とするシステムを開発し、2023年中の実用化に向けて準備を進めている。

日産は、電気自動車活用による社会変革や地域課題の解決を図るべく、2018年から「ブルー・スイッチ」活動を推進しており、全国の自治体や企業・団体など、さまざまなパートナーと共に取り組みを行なっている。

今回、両社の想いが合致してそれぞれの持つ技術やノウハウを共有しながら、V2Xシステムの普及などに向けた協業を開始することになったのだ。

協業の内容は、企業や自治体などへのV2Xシステム導入に向けた普及活動の推進、日立ビルシステムが進めるV2Xシステムの実証実験への日産の電気自動車を活用した実用化の加速、子供たちへの環境教育での協力など、脱炭素社会に向けた活動連携などとなっている。

今回の実証実験は、エレベーターの稼働電力を電気自動車からの給電に切り替え、停電時に使用する低速運転モードで、6階建ての試験棟で10時間連続往復運転を実施(1階および6階でドア開閉、実利用を想定した重り搭載)する。エレベーターは日立標準型エレベーター「アーバンエース HF」で、「サクラ」(バッテリー容量20kWh)の電力を使用。エレベーターの連続稼働時間、昇降回数、電気自動車のバッテリー残量が計測された。

実験結果は、エレベーターの連続昇降回数は263回(往復)、「サクラ」のバッテリー残量(100%→46%)となり、10時間連続でエレベーターを稼働可能なことを実証した。なお、同条件で「日産リーフe+」(バッテリー容量60kWh)を用いてエレベーターの10時間連続稼働を行なった場合の理論値は、連続昇降回数263回(往復)、バッテリー残量(100%→72%)となる。

今後、電気自動車のバッテリー残量のリミットまでの長時間連続稼働の実証実験を行なうとしている。

日立ビルシステム 公式サイト

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