2017年9月6日、日産は第2世代となる電気自動車「リーフ」のワールドプレミアを行なった。リーフは2010年に発売された量産の電気自動車のパイオニアで、世界的に注目を浴びる中で7年振りのフルモデルチェンジとなった。
リーフは日産の掲げる「インテリジェント・モビリティ」を象徴するモデルで、電気駆動のリーダーシップを確立するために2010年12月に発売したが、その販売状況は必ずしも目論見通りではなく、日本市場では2016年時点で累計8万台、グローバルで25万台というレベル。当初の目標台数を下回っているわけだ。
しかし、2016年のリーフの販売台数を見るとグローバルで5万1000台に達しており、かろうじて採算ラインに乗っていることがわかる。日産としては初代リーフはEV市場の先駆けと位置づけ、7年間の販売によりEVのイメージを確立したとしている。第2世代のリーフはEV市場の拡大の先頭に立ち、より広範なユーザーを獲得し、EVのリーダーとしての地位をグローバルで確立するという役割を担っている。
初代リーフが思うように市場を広げられなかったのは、調査データによれば車両価格が高い、充電設備が少ない、充電時間が長くかかる、航続距離が短いといったユーザー層の声が大きかった。
しかし、初代の登場した時と現在では、グローバルでも社会状況は大きく変化し、特に中国やヨーロッパはクルマの電動化に向け急速に加速しており、新型リーフに対する期待は格段に大きくなっている。
また充電設備に関しては、2017年現在の日本では、急速充電設備は7018基、普通充電器との合計は2万8260基に達し、リーフのデビュー当時とは違って充電インフラは大幅に拡充されているのも追い風となるはずだ。
■新型リーフの訴求点
新型リーフの商品訴求のキーワードは、「未体験の驚きの走り+未来の運転でワクワクを」だ。つまり単なる排出ガスゼロのエコカーというだけでなく、運転の楽しさやEVならではの気持ちよさを前面に押し出している。
新型リーフは電気自動車ならではの、強力なモーターによるレスポンスの良い、力強い加速、ヨーロッパ・プレミアムDセグメント車並みの静粛性、そしてノート e-POWERから採用されたeペダルドライブ、さらに改良された40kWhという大容量のバッテリーにより400kmの航続距離を実現することで、今までにないパフォーマンスや実用性を獲得している。
さらにドライバーを支援するプロパイロットと、新採用の自動駐車技術「プロパイロット・パーキン」グにより先進的なクルマであることもアピールしている。
デザインは、2015年東京モーターショーに出展された「IDSコンセプト」をベースにしており、エクステリアは「ハンサム・ルッキング&クール・テック」をテーマに、インテリアは「リラックス&クール・テック」をテーマに、先進的でありながらダイナミックさを併せ持ったスタイリングとなっている。
ボディ・フォルムでは全高が従来型より10mm低められ、全幅は+20mmと広げられ、腰高感を抑えたソリッドなフォルムになっている。また電費に大きく影響する空力性能も徹底的に追求され、ハッチバックスタイルとしてはトップレベルのCd=0.28を達成しているという。
インテリアは大幅に質感が高められ、メーターパネルは7インチTFTディスプレイを採用し可変表示式としている。
グレード展開は、G、X、Sの3種類で、最上級のGグレードはLEDヘッドライト、17インチタイヤを装備している。ボディカラーは2色が追加され全14色で、6種類のツートーン・カラーも設定されている。
■加速性能と新採用されたeペダル・ドライブ
新型リーフは従来型を上回る加速性能を実現している。新開発された高出力型インバーターの採用により、これまでの出力80kW(108ps)から110kW(150ps)へと出力をアップ。ちなみにモーターは従来型リーフの後期型と同じEM57型を新型も採用している。したがって出力80kW→110kW、トルク254Nm→320Nmの向上はインバーターの刷新による効果なのだ。
そのため0−100km/h加速は従来型より15%短縮、60km/h−100km/hの中間加では30%短縮するなど、加速性能が大幅に向上し、さらにレスポンスの良さ、加速の滑らかさなどモーター駆動のメリットと合わせ、新型リーフはEV特有の気持ち良い走りを実現している。
リチウムイオン・バッテリーは、これまでと同じパッケージ・サイズで、ラミネート式のバッテリーセルも同じだが、電極の改良、セルを組み合わせたモジュールを増大させることで、容量40kWhと、これまでの30kWhを30%以上増大させている。その結果JC08モードでの航続距離は400kmに達している。初代リーフの初期型は航続距離200kmだったから、2倍に伸延していることになる。
また新型リーフは走行中の静粛性能を徹底的に追求。ノイズの侵入経路となる隙間を防ぎ、フロントガラスに遮音ガラスを採用するなど、低速域から高速走行時までDセグメントのプレミアム・クラスと同等レベルの静粛性を実現している。このエンジンを搭載せずモーター駆動ならではの圧倒的な静粛性も、リーフのアピールポイントのひとつだ。
そしてノートe-POWERから採用されているワンペダル・ドライブ「eペダル」も新採用されている。初代リーフは、電気自動車ならではの特性を抑え、エンジン車から違和感なく乗り換えできることを重視してきたが、新型リーフはいよいよ電気自動車ならではのメリットを前面に打ち出したわけである。
eペダルは、ノート e-POWERの機能に追加してアクセル・オフで停止すると自動的にブレーキが掛かり保持するオート・ブレーキホールド機能が加わっている。さらにモーターによる回生ブレーキと油圧ブレーキを協調させることで、通常は前輪だけにかかる回生ブレーキを使用し、滑りやすい路面などでは4輪にかかる油圧ブレーキを併用することで、安定したブレーキがかけられるように進化している。
ちなみにリーフのeペダルでは最大0.2Gの減速が可能で、ノート e-POWERの0.15Gよりさらに強力になっており、市街地の運転の90%はアクセルのオン/オフだけで運転できるという。
■プロパイロットとプロパイロット・パーキング
新型リーフは、先進技術としてプロパイロット、プロパイロット・パーキングを新設定(メーカーオプション)している。
ドライバー支援システムのプロパイロットはセレナから導入されているが、リーフでは初のモーター駆動との組み合わせとなる。そのためACCを使用して前走車に追従しているような場合の減速や再加速などのシーンではエンジン/トランスミッション搭載車よりはるかにレスポンスが向上し、ストレスの少ないアシスト・システムとなっている。
また、新たに進入禁止標識検知、車線逸脱警報、前後方向の誤発進防止(前進時は歩行者も検知)、リヤ側方車両検知警報、後側方車両検知警報など幅広い運転アシスト機能も追加されている。
日本車で初採用となる自動パーキング・システム「プロパイロット・パーキングは」、ステアリング操作、ブレーキやアクセル、前進、後進のシフト切り替え、パーキングブレーキ操作を不要にした自動パーキングシステムだ。
駐車のパターンは、縦列駐車、後進駐車、前進駐車のいずれも適合できる。プロパイロット・パーキングはが作動中にドライバーがブレーキを踏む、ハンドルを操作する、アクセルを踏む、パーキングスイッチを離すといった操作をすると、ブレーキの場合は減速しながら制御を継続、それ以外の場合は制御を中止して停止ようにフェイルセーフがかけられている。
システム構成は、前後左右のカメラ(4個)、前後各4個、左右各2個(合計12個)の超音波センサーを組み合わせ、カメラと超音波センサーで駐車可能スペースを判定し、プロパイロット・パーキングのスイッチを押すと、ハンドル操作、アクセル、ブレーキ操作、前進/後退の切り替えが自動で行なわれるようになっている。
このように新型リーフは、電気自動車としての性能を高めただけでなく、最新の技術を投入し、クルマとしての走りの楽しさや新感覚の魅力を盛り込み、EV旋風が吹き荒れるグローバル・マーケットに投入される。
なお新型リーフは、日本の追浜工場だけでなくアメリカのスマーナ工場、イギリスのサンダーランド工場でも生産され、グローバルで月1万台の販売を見込んでいるという。日本は10月2日、アメリカは12月、ヨーロッパは2018年月から発売される。
また、2018年中にはさらに高出力のモーターを搭載し、60kWhの大容量バッテリーを備えたリーフの高性能モデルも追加される計画だ。この高性能モデルは60kWhバッテリーを搭載しているため、JC08モードの航続距離は500km〜550kmに達するというから、大いに待ち遠しい。