日産自動車は2025年3月11日、経営体制を刷新すると発表し、現在の内田誠CEOは3月末で退任することを発表した。後任には、4月1日付で現在チーフ プランニング オフィサー(商品企画担当)を務めるイヴァン・エスピノーサ氏が新CEOに就任する。

日産は同日に開催された取締役会の決定で、代表執行役となるイヴァン・エスピノーサ氏と新執行役体制、そして、その担当業務が決定された。
なお日産は、ゴーン体制直後の2019年からコーポレイト・ガバナンスを強化するため、取締役会は「指名委員会等設置会社」へと変貌している。この体制では、取締役会は指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会で構成され、しかも各委員会の委員の過半数は社外取締役で構成されるという仕組みになっている。

つまり、CEOを始め取締役員は社内で選出、決定されるのではなく、社外取締役が中心で実行することになる。そして初代の取締役会の議長には元経済産業省官僚の豊田正和氏(2023年に退任)が就任し、指名委員会委員長として現在の内田誠氏をCEOに選出している。
その結果、COOに選出された関潤氏の退任、後任COOのアシュワニ・グプタ氏の退任などの混乱が続いた。現在の取締役会は下記のような構成となっている。

取締役会議長の木村康氏は旧日本石油出身、永井素夫氏はみづほ銀行出身、井原慶子氏はレースクイーン、レースドライバー出身。
現在の指名委員会委員長のアンドリュー・ハウスシはソニー出身、ブレンダ・ハーヴィー氏はIBM出身、朝田照男氏は丸紅出身、得能摩利子氏はフェラガモ・ジャパン出身で、全12名の取締役会の中で、日産側は内田CEOと坂本副社長の2名。
ルノーに属するジャンドミニク・スナール氏(ルノー会長)、ピエール・フルーリォ氏(ルノー筆頭社外取締役)、ベルナール・デルマス氏(ミシュラン出身)の3名以外は自動車業界とは関係のない社外取締役が7名という構成だ。
この構成からもわかるように、ルノー側の影響力は依然として大きいといわざるを得ない。また、こうした自動車業界とは関係のない、社外の人物が多数を占める取締役会でCEOを始め執行役員が選出されるのであるから、その責任は重大で、内田体制を支持して現在の苦境を招いた原因ともいうことができる。
にもかかわらず、現在の取締役会の内田氏、坂本氏以外は留任するとしており、6月の定期株主総会では波乱の発生も予想される。
現在まで副社長の坂本秀行氏(車両生産技術担当)、星野朝子氏(ブランド・カスタマー担当)、渡部英朗専務役員(経営企画担当)、中畔邦雄常務役員(車両計画・車両要素技術開発担当)は退任となる。
新体制では主要な担当は以下の通りになる。
・ギョーム・カルティエCPO(チーフ パフォーマンス オフィサー):アフリカ・中東・インド・ヨーロッパ・オセアニア・マネジメント、グローバルマーケティング、カスタマーエクスペリエンスを担当
・赤石永一常務役員:チーフテクノロジーオフィサー(CTO)車両計画・車両要素技術開発担当
・ジェレミー・パパン最高財務責任者(CFO):留任
・クリスチャン・ムニエ(アメリカ担当):留任
・スティーブン・マー(中国担当):留任

4月1日付でCEOに就任するイヴァン・エスピノーサ氏はメキシコ出身で現在46歳だ。メキシコの工科大学・機械工学科を卒業後、2003年にメキシコ日産に入社し、2008年からは日産本社でタイ担当、アセアン担当などを経て グローバル商品戦略&商品企画を担当しており、一貫して商品企画畑を歩んで来ている。
内田体制で5年余を経過し、経営状況は危険水域にある状況でイヴァン・エスピノーサ新CEOが新たな舵取りを行なうことになるが、工場の削減、アメリカ、中国市場での立て直しなど前途は多難である。