2012年12月5日、日産はミドルクラスのセダン、「シルフィ」をフルモデルチェンジし、同日から発売すると発表した。
2000年に初代シルフィがデビューし、2005年にモデルチェンジを行い2代目が登場しているが、いずれもかつての「サニー」の後継モデルとして登場している。しかしながら車名は「ブルーバード・シルフィ」が正式名称とされ、国内ではサニーとブルーバードのポジションをカバーするモデルという位置付けだったのだ。
しかし今回の3代目で伝統ある「ブルーバード」の名称は消え、「シルフィ」という単独のブランド名になっている。日産のセダンのラインアップでは、ラティオが5ナンバーサイズ・セダン、シルフィがグローバルCセグメント・セダンという位置付けである。
3代目となる新型シルフィは、2012年4月の北京モーターショーでワールドプレミアを行い、7月から中国、9月からタイ、北米(車名はセントラ)、オセアニア(車名はパルサー)で順次発売が開始され、最後が日本市場でのデビューとなった。シルフィは、中国、タイ、アメリカでも生産されるなどグローバルCセグメントのセダンで、最終的には世界120カ国で年間50万台の販売が見込まれている。なお日本仕様は、従来通り追浜工場で生産されるが、約50%の部品がタイや中国のサプライヤーの部品と共通化されているため、タイや中国などの現地生産工場向けのパーツを国内に逆輸入して組み立てるという、新たな取り組みを採用している。
新型シルフィの開発コンセプトは、「上質とくつろぎの本格派ジャストサイズ・セダン」で、ボディ全幅は従来モデルより65mm拡大されて1760mmとなり、全長は4615mmで、日本ではMクラス・セダン、グローバルサイズではCセグメントのセダンと位置付けられる。中国市場ではメインとなるセダンで、その一方でティアナなどLサイズ・セダンからのダウンサイズの受け皿となりサイズ、快適性、質感を追求している。日本市場でのセダンは縮小したマーケットだが、他の諸国ではメイン車種となるため、デザイン的にもセダン本来の美しさを追求し、クラスを超えた快適性の実現を目指している。
デザインのキーワードは、高級感、美しさ、ダイナミズムで、アーチ状のビッグキャビン、ひとクラス上の存在感や質感を狙ったという。インテリアも上質でエモーショナル、セダンらしい仕上げとしているが、風合いの良い仕上げ、精巧な作り込みを重視し、大型クラスのセダンに匹敵する上質感を与えている。
パッケージングは、従来型シルフィより全高を15mm低め、より長く見せるとともに全幅は一挙に65mm拡大。全長は+5mmで先代とほぼ同等。2700mmのホイールベースも変更なしだ。なお全幅の拡大により室内幅を30mm拡大し、それ以外はドアの厚みを増してデザイン性の向上や重厚感を生み出している。また日常での運転のしやすさを追求し、前方視界を一段と改善しているのも特徴だ。トランク容量は510Lで、まさにLクラスセダン並み。
室内の快適性の向上では、特に後席の足回りのスペース拡大が行われ、大人がゆったり座ることができ、足を組むこともできるスペースが確保されている。またステアリングの操舵力は低速時に従来より軽くされ、さらに最小回転半径5.2mというクラストップの小回り性も実現されてる。室内はアイドリング時から高速走行時までティアナと同等以上の静粛を追求。長距離ドライブでも快適に過ごせるようにしている。
装備では「X」、「G」は左右独立式温度調整エアコン、後席用エアコン吹き出し口、本革巻きステアリングなどを標準装備。また全車がファインビジョンメーター、ECOモードインジケーターなどを装備している。
エンジンは新開発の1.8L、MRA8DE型が搭載されている。従来からあるMR18DE型ではなく、MR系エンジンのボア・ストロークを変更し、排気量を抑え、ロングストロークにした新開発エンジンを採用。燃費と走りの両面を追及している。新たに吸排気VTC(無段階バルブタイミングコントロール)の採用で低負荷時にはバルブオーバーラップを拡大し内部EGRを使用する。内部のパーツではバルブリフターのDLCコーティングや低摩擦バルブスプリングなどを採用し、フリクションの低減を図っている。さらに低回転でのトルクの強化と高回転域での伸びを両立させるため、吸気マニホールドにパワーバルブを追加するなどにより、131ps、174Nmの出力としている。燃費は15.6km/L(JC08モード)。
トランスミッションは副変速機付きのCVTで、変速比幅は7.3となっている。加速性能は、MR20DE(2.0L)エンジンを搭載していた従来型シルフィとほぼ同等でありながら、燃費は約16%向上させている。
サスペンションは従来通り、フロントがストラット式、リヤはトーションビーム式だが、フロントのサスペンションストロークを増大させ、荒れた路面での乗り心地を向上。また今回のシルフィは全車VDC(横滑り防止・車両安定装置)が標準装備されている。
新型シルフィのグレードは、フル装備の「G」、最量販車種とされるミディアムグレードの「X」、ベースモデルの「S」というシンプルな3車系とされており、メーカーオプションの装備はナシとされている。なお、オーテックの特装仕様として回転助手席使用車は設定されている。