2016年11月10日、マツダは電動式リトラクタブル・ハードトップルーフを装備した「ロードスターRF」を正式発表し、同日から受注を開始した。発売は12月22日から。「RF」という車名はリトラクタブル・ファストバックの頭文字だ。
ロードスターRFは、2016年3月のニューヨークオートショーで北米仕様の「MX-5 RF」としてワールドプレミアされた。日本では8月に幕張メッセで開催された「オートモビル カウンシル 2016」でデビューを飾り、その後はファンクラブ・イベントでも披露され、10月末からは主要都市でプロトタイプ先行展示イベントが行なわれている。
また10月5日にはマツダ宇品第1工場でヨーロッパ、北米向けのMX5 RFの生産が開始されている。これらのクルマは船積みされ、2017年初頭から現地で販売が開始される。つまり、日本の方が世界で最初に発売されるわけだ。
■開発コンセプト
ソフトトップを装備するロードスター、ND5RC型は初代ロードスターのライトウエイト・オープン・スポーツカーを現在に蘇らせたモデルで、ロードスターというボディ形式、ソフトトップ、そして軽量スポーツカーという存在は、戦後のイギリスのスポーツカーの様式、コンセプトを忠実に再現したといえる。
新たに開発されたロードスターRF(型式名:NDERC)は、単にベース車のロードスターにリトラクタブル・ハードトップを装備したモデルではなく、ハードルーフから生み出されるファストバック・スタイルにより、より流麗に見えるスポーツ・クーペという新しい価値観を付け加えている。
ピュアなコンセプトで、いわばマニアックなロードスターに対し、RFはより幅広い人にスポーツカーならではの普遍的な美と、電動リトラクタブル・ルーフとすることで日常の使用も、オーブン走行でのロードスターの爽快な走りも両立させることができるという付加価値が加えられているのだ。このためロードスターの派生モデルというより、新たに追加されたニューモデルともいうことができる。
電動リトラクタブル・ハードトップを採用したことで車両重量は100kgほど重くなるため、搭載エンジンは2.0LのPE-VPR・RS型が搭載されている。またインテリアもより落ち着きのある上質感を追求したことで、ソフトトップのロードスターより1ランク上の車格を漂わせ、美しさや上質さなスポーツカーを所有する喜びを訴求するモデルだということができる。
ロードスターRFのグレードは、S、VS、RSの3モデルで、RSは6速MTのみ、それ以外は6速MT、6速ATを選択できる。RSモデルはRFシリーズの中で最も走りを重視した設定だ。
■RFはソフトトップとどこが違うのか
電動リトラクタブル・ルーフは、以前のモデルとは違ってスイッチ操作だけで、オープン、クローズし自動ロックするフル電動式を採用。可動ルーフは3分割構造で、前側のルーフはアルミ製、中央部は中空断面のスチール製、そしてリヤのファストバックを形成するCピラー部分はSMC複合樹脂製だ。
なおルーフサイド部、リヤルーフはボディカラー同色で、ルーフトップ部はピアノブラックの2トーン(VSモデルにオプション設定)か、ボディ同色の2種類がラインアップされる。
このリトラクタブル・ルーフの開閉機構はマツダとベバスト・ジャパンの共同開発で、ルーフ部の組み立てはベバスト社が担当し、ボディへの組み付けはマツダの工場で行なわれる。ちなみにベバストはドイツの企業でコンバーチブル・ルーフの製造では長い歴史を持ち、マツダはRX-7の脱着式ルーフ、先代のリトラクタブル・ルーフなどもベバスト社製だ。
このルーフは、10km/h以下の走行中でも開閉操作可能で、開閉時間は13秒。ルーフの開閉時にはサイドウインドウも自動的に昇降するようになっている。もちろん挟み込み防止機構も採用。またルーフの可動状態は、メーターパネルの右側ディスプレイに画像表示されるの便利だ。
RFは側面から見るとファストバック・スタイルでルーフラインはリヤエンドまでスムーズに繋がっているが、リヤから見るとCピラーはトンネル上で、リヤガラスはルーフラインの延長上にはなく、直立に近い形に処理されている。そのため、リヤから見るとミッドシップのような印象を受ける。
実は企画の初期にはリヤガラスがルーフラインに繋がる形状を模索していたが、ルーフの格納のための動きが複雑化することが分かった。デザインとルーフ格納機構を両立させるために、最終的にトンネル形のリヤガラス配置としている。
またルーフを格納した状態でも、透明なアクリル製のエアロボードが取り付けられており、後方からの排気音や風の巻き込みをコントロールできるようになっている。
トランクは、ソフトトップ・モデルと同等レベルの127Lで、中型サイズのキャリーバッグを2個積載できるだけの容量を持っている。
■インテリア
インテリアデザインそのものはソフトトップ・モデルと共通だが、メーター部は3眼メーターの左端のインフォメーションディスプレイ(4.6インチ)に、リトラクタブルトップの開閉動作のアニメーションが表示される。
シートは3種類で、Sモデルはファブリック表皮、VSは赤褐色のナッパレザー表皮、RSはレカロ製スポーツシートで、アルカンターラとナッパレザーの組み合わせとなっている。
オーディオシステムはSが6スピーカー。VS、RSは9スピーカーのBoseサウンドシステムが標準装備される。またインフォテイメントは、「マツダ・コネクト」を装備し、ナビゲーションはSDカード式で、別途購入できる。
■エンジン、シャシー
エンジンはPE-VPR・RS型の2.0L直噴エンジンを搭載。158ps/200Nmを発生する。1.5Lエンジンは7000rpmで最高出力を発生するのに対し、この2.0Lは6000rpm(最高許容回転数は6800rpm)。最大トルクも50Nmの差があり、2.0Lエンジンはよりフレキシブルで扱いやすい特性となっている。
なおロードスターRFに2.0Lエンジンを搭載するのは日本とアメリカで、ヨーロッパは1.5Lエンジンが搭載される。
RFはボディではセンタートンネル部の中央にX字形のトンネルメンバーを追加し、剛性を向上。サスペンションやステアリングは、より上質で落ち着きのある走りを目指し、専用チューニングを行なっている。
ダンパーは、ガス圧を変更し、リニアタイプの減衰特性とし、前後ダンパーともに有効ストロークをやや増大させている。またフロント・サスペンションはスタビライザーを強化し、ロール剛性をアップ。リヤのダンパーはバンプストッパー、スプリングレートも変更している。
ステアリングは、パワーアシスト特性を専用チューニングし、より手応えがあり、リニアな操舵フィーリングを追求。ソフトトップ・モデルとはやや異なる味付けとなっている。
ブレーキはRSモデルにオプションとしてブレンボ製15インチ対向4ポット・キャリパーを設定している。ブレンボ・ブレーキはBBS製鍛造ホイールとのセットオプションとなっている。
ドライバー支援システムとしては「i-ACTIVSENSE」を設定。ブラインドスポット・モニタリング、ハイビーム・コントロール、車線逸脱警報などをもVS、RSには標準装備されている。