2024年1月にマツダ・ロードスターが大幅商品改良を行ない、新たな運転する楽しみを作り出していた。その改良モデルに試乗することができたので、お伝えしよう。
改良ポイントは電動パワーステアリング制御の手の内化やLSDカム左右非対称タイプを投入。そしてモータースポーツ用のDSC制御の追加がある。加えて、エンジンの出力向上、吸排気デバイスによるエンジンサウンドの作り込みといったことも同時に行なっている。
またコンフォート系機能やOTAといった領域でもE/Eアーキテクチャーの全面刷新による、さまざまな変更が行なわれていた。
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笑顔がこぼれるEPS制御
個人的には今回の大幅改良ポイントの中で、最も気持ちよかったのはEPSの改良だ。ハードとしてはデュアル・ピニオンタイプで変更はないが、ラックとの接点位置を変更するなどレイアウト変更を行ない、またピニオンの押し付け荷重の変更、モーター出力変更など細部に渡り変更している。
そして最もポイントになるのが、制御プログラムをマツダ内で行なったことが挙げられる。ハードは日立アステモ製(ショーワ)だが、制御を内製化して手の内化できたことで思い通りの仕上がりなったというわけだ。またロードスターの場合、ハイグリップタイヤを装着するケースもあるので、トルクセンサーの容量アップという変更も行なっている。
実際には、ステアリングの切り戻しの戻り方がSATのように自然と戻ってくる。特にセンター付近での戻り具合は、ステアリングが意志を持ったかのように、クルマが真っ直ぐ走りたいと主張するかのごとくなのだ。思わずニヤニヤしてしまった。
逆1.5Way LSDを新開発
もうひとつは「アシンメトリックLSD」の採用だ。左右非対称のLSDカム構造のLSDで、減速側と加速側の差動制限力に差異を持たせることで、旋回性や旋回の質の向上を狙っている。ロードスターはハードブレーキング時にリヤ荷重が薄くなり、グリップが抜けやすくなる傾向があるが、それをLSDで減速時の抵抗を大きくしてトルクを発生させ、グリップ力に繋げる狙いのものだ。
一般的に1.5Wayと言われるLSDは加速時にトルクが大きくなるように設定しているが、このアシンメトリックLSDは減速時にトルクが大きくなるので、「逆1.5Way」式LSDというわけ。
走行シーンではコーナー進入時の減速Gを高く、ハードブレーキングをしながらターンインしていくと、確かにリヤの接地感は増し、安定してコーナリングが始まる。これは旧型と比較試乗できたので、その違いが明確にわかり、安定方向に効果があることがわかった。
また同時にボディコントロール制御技術のKPCも従来通り制御されており、コーナリング時の姿勢は安定方向になる。つまり、シャシーはLSDで、ボディはKPCで制御することで高い次元での安定したコーナリングが実現できるわけだ。
しかしながら、クルマを振り回わしたり、暴れることを抑える醍醐味は薄れ、面白味は薄れるかもしれない。そういう人には、グレード「S」などオープンデフもラインアップしているので、そちらのモデルを選択すればいい。アシンメトリックLSDは装備されないので、従来の走りが楽しめるのだ。
ドライビングマニアはクルマが安定すると、より高い速度域、旋回速度を狙っていく欲求が顔を出すため、次第にエンジンパワーに物足りなさを感じるかもしれない。が、これは人によるか。
騒音規制対策兼心地よいエンジンサウンドを
モータースポーツ用DSC制御に関して、今回はサーキット走行ではなかったのでテストしていないが、DSCの介入タイミングを遅らせ、レースでも使えるDSCというのを狙い、今回追加装備している。
またスカイアクティブG1.5Lのエンジンも制御の見直しをし、ハイオクガソリン用のセッティングを追加している。その結果3kWの出力向上があった。制御のポイントではアクセルの戻し操作時の応答性の改善を図っているが、これはロードスターオーナーは、その違いを体感しやすいと思う。
もうひとつの改良では、上質という言葉がいいように思うが、インダクション・サウンド・エンハンサーを装備し、エンジン音の雑味を消し、いい音が聞こえるようにエアクリーナーボックスを変更している。
ダイナミック性能に関係する主な変更点は以上だが、他にもE/Eアーキテクチャーの全面刷新がある。これはまずADAS関連で、ロードスターに初めてACCが搭載された。マツダ・レーダークルーズ・コントロールとスマートブレーキ・サポート(後退時検知機能)を採用した。こちらは今回テストをしなかったが、常時スポーツ走行するわけでもなく、淡々と移動する状況などではありがたい機能と言えるだろう。
E/Eアーキテクチャーの全面刷新
そしてサイバーセキュリティ法への対応も行なっている。こちらは法規対応になるが、継続販売車両にも求められている法規で、ロードスターを今後も継続販売するためにも対応を行ったと言うわけだ。
そしてナビが変わった。これは8.8インチのセンターディスプレイになりスマホとの連携やコネクテッドサービスの利用も可能になった。
じつはここに裏話があり、E/EアーキテクチャーはCX-60で採用している世代のもと共通のものが今回ロードスターに搭載したそうで、その結果、従来のナビが使えなくなり、ヘッドライトなどはLEDしか使えなくなったという。そのため、ヘッドライトやテールランプも今回の大幅改良でLEDになっているのだ。またメーター系のデザインも一新され、液晶にアナログ表示を基本とし、またブラック基調で統一されており、視認性も高くロードスターによく似合うスパルタンな印象になった。
走る楽しさ、爽快感をもたらすロードスターが、今回も新たなこだわりの武器を手に入れ、ドライブマニアに響く商品に仕上げてきたと言える。