マツダ・ヨーロッパは2023年1月13日、予告通りベルギーのブリュッセル・モーターショーで、今春に発売予定のロータリーエンジンを発電機として使用するPHEVモデル「MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV」を初公開した。
2020年に発売されたMX-30はマツダ初の量産バッテリーEV、マイルドハイブリッド搭載モデルをラインアップし、マツダ電動化のトップランナーで、特にヨーロッパ市場を意識したモデルだ。ただ、EVモデルのバッテリー容量は35.5 kWhで、CセグメントのEVとして最小限の容量であり、ヨーロッパモードで航続距離は200kmとなっていた。
さらなる航続距離を目指して投入したのが今回のシリーズPHEV「e-SKYACTIV R-EV」なのだ。このシステムはシングル・ロータリーエンジンを発電用の動力として使用し、バッテリーを充電する。
マツダは2013年に、実証実験用のデミオEVをベースに発電用のロータリーエンジンを搭載したプロトタイプ「デミオEVレンジエクステンダー」を発表している。つまり10年にわたる開発が行なわれていたのだ。この当時のデミオEVのバッテリー(容量20kWh)による航続距離は200km(JC8モード)であったが、ロータリー・エンジンによるシリーズ・ハイブリッド化により航続距離を400kmまで伸延した。
発電用エンジンとしてレシプロエンジンよりロータリーエンジンが選ばれたのは、エンジンの体積がコンパクトで、運転時に振動が低く静粛であることが理由だ。もう一つ、ロータリーエンジンは、マルチ燃料に適合させやすく、バイオ燃料、ガス燃料、水素にも適合性を備えているのが特徴である。
デミオEVレンジエクステンダーの場合、このロータリーエンジンはリヤのラゲッジスペースに搭載されていた。シングル・ローターの300ccで、ベルトにより2倍増速して発電機を駆動する方式を採用しており、ロータリーエンジン用として9.0Lの小さな燃料タンクが設置されていた。
なお、シングル・ローターエンジンは、従来のロータリーエンジンより薄くし、ロータリーエンジンの欠点であるS/V比(燃焼室の総面積/容積の比率)を改善し、冷却損失を抑えるようにしていた。
MX-30 e-SKYACTIV R-EVは、バッテリーEVとしての使い方を拡張したシリーズ式PHEVハイブリッドモデルだ。デミオの場合はロータリーエンジンによるレンジエクステンダーと呼んでいたが、このMX-30は、発電能力を高めたシリーズハイブリッドとしている。
日常の幅広いシーンでバッテリーEVとして使える85kmのEV走行距離(ヨーロッパWLTPモード)を備え、発電によってさらなる長距離ドライブにも対応している。EV走行距離85kmであればヨーロッパでもアメリカでもPHEVとして問題なく認定される。
またシングル・ロータリーエンジンは、フロントに横置きの駆動モーターの隣に並列配置されている。搭載するバッテリーの容量はEVモデルより減らされ17.8kWhで、ガソリンタンク容量は50Lとし、ハイブリッド状態での航続距離を十分に確保している。
また、ヨーロッパ製のPHEVは普通充電のみで急速充電に対応していないが、MX-30は普通・急速両方の方式に対応し、さらに1500Wの給電機能も搭載している。走行モードは、「EVモード」、「ノーマルモード」、「チャージモード」の3つのモードを備えている。
MX-30 e-SKYACTIV R-EVのヨーロッパ導入にあたり、特別仕様車「Edition R」を設定した。黒基調のボディ色および内装色としながら、ルーフサイドにはマツダ初の乗用車である「R360クーペ」のルーフ色を復刻したマローンルージュメタリックを採用。また、フロアマットやシートのヘッドレストには、ローターの形状を模したバッジやエンボス加工など専用デザインになっている。
なおこのMX-30 e-SKYACTIV R-EVは、ヨーロッパ市場では今春から発売予定で、日本への導入は夏以降と推測される。