【マツダ】 デミオがマイナーチェンジ SKYACTIVエンジンは30km/L

マツダ・デミオがマイナーチェンジを行い、フロントマスクが全グレードとも最新のマツダフェースに変更されている。しかし、もっとも注目するポイントは、新しいコンセプトで開発されたSKYACTIV(スカイアクティブ)エンジンを搭載したことだ。消費燃料がリッター30kmというガソリンエンジンでは最高の省燃費を達成したエンジンであり、6月30日から販売を開始する。


デミオ13-SKYACTIV デミオ13-SKYACTIV_R

2007年に登場したマツダ・デミオがビッグマイナーチェンジを行い、同時にこれまでティザー・キャンペーンが行われてきた新技術、SKYACTIV(スカイアクティブ)を採用した新エンジンも追加設定された。受注は6月9日から開始され、30日から発売する。なお、デミオのマイナーチェンジは当初3月末の予定だったが東日本大震災ため6月にずれ込んだ経緯がある。同様にアメリカで発売予定のSKYACTIV-G、2.0Lを搭載するアクセラ(マツダ3)も計画より大幅に遅れている。

新型デミオの開発コンセプトは、統一感のある上質な走り、エコとファンツードライブを両立させるドライバーサポート、ハイブリッドカーに迫る30Km/Lの燃費、クラストップの安全性能という4点だ。

まず、その上質な走りとは、ドライバーの操作に対してリニアに反応し、さらにエンジンの音質や遮音のリニア感などを狙ったものいい、エコとファンツードライブを両立させるための装備としてi-DMを新設定(新グレード13-SKYACTIVに設定)した。これは既存のエコドライブインジケーター機能だけではなく、アクセル開度センサーやブレーキ、操舵角センサーの情報を利用し、G(加速度)の発生の滑らかさ、操作の滑らかさを判定して、ドライバーに運転操作の判断材料を与え、なおかつ運転終了後には運転のアドバイスを行う、同時に運転スキルのレベルを表示するというというユニークなものである。

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運転スキルをレベル表示してくれる

パワーユニットのラインアップは、従来からのMZR系エンジン、すなわち1.3L(MJ-VE型/91psとミラーサイクルのMJ-VEM型/90ps)、1.5L(ZY-VE型・113ps)。これに追加して新開発のSKYACTIV、すなわちP3-VPS型/84psが加わる。トランスミッションは5速MT、4速AT、CVTがあり、P3-VPS、MJ-VEMはCVTのみ、1.5Lエンジンは5MTかCVTという組み合わせになる。

P3-VPS型 デミオ_CVT

このSKYACTIV技術を採用した新設計の1.3Lエンジン(P3-VPS型)は、CVTとの組み合わせで10・15モード燃費30km/L(JC08モードでは25.0km/L)を達成している。なお従来通りラインアップされる1.5Lでも19.2〜20.0km/L、1.3Lは17.8〜23km/Lという省燃費である。

なお、この新型13-SKYACTIVは、燃費チャンピオンカーの役割を担うため、i-STOP(アイドリングストップ)を採用している。そして、専用の空力フルアンダーカバーやリヤスポイラーなどを装着し、Cd=0.29と空力性能を向上させている。その他に使用スプリングを少なくしたネット(網)式シートバックを持つ専用軽量シート、専用の軽量アルミホイールなども装備している。

デミオ アンダーフロアーへの空力パーツ採用部位
高い空力性能を発揮するアンダーカバー

グレードでは、1.3Lにのみe-4WD、1.5Lに7速 MTモード付きCVTを備えるSPORTを設定。車両重量は、最軽量の1.3L/5MTが970kg、1.3L/CVTが990kg、13-SKYACTIVが1010kgとなっているが、アイドルストップ機能はこの13-SKYACTIVグレードだけに装備され、他のモデルには設定されていない。

マイナーチェンジされたボディは、フロントカウルアッパー、リヤゲートまわりなどに補強が追加された。またシャシーでは、リヤのトーションビームの取り付けブッシュの弾性硬度の方向が変更さている。これらはいずれも、ハンドリングのリニアリティの向上や、乗り心地の向上を狙うための変更だ。安全性では、全車種にDSC(ESP)、後席中央の3点式ベルト・ヘッドレストとクラストップの装備を標準化している。

リヤサスペンションのブッシュ取り付け角度
ブッシュの取り付け角度を変更することで、ハンドリング性能の向上と優れた乗り心地を両立した

 

SKYACTIV本当の実力

今回、新採用されたP3-VPS型の1.3Lエンジンは、今後展開がされる注目のSKYACTIV-G、つまりSKYACTIVエンジンのガソリンシリーズの第1弾にあたる。ただし、デミオへの搭載はマイナーチェンジのため、SKYACTIV本来の仕様を全て盛り込むことはできなかった。その代表が、排気管の絞込みタイプが4-2-1排気マニホールドの不採用だ。サブフレームなどと干渉するため、今回は採用できず、4-1タイプの排気マニホールド+直下型触媒にしているのだ。

その一方でSKYACTIV-Gは、本来は輸出も考慮した設計であるため、使用燃料はユーロプレミアム(オクタン価95)を前提にしているが、今回のデミオ用は国内専用のためレギュラーガソリン(オクタン価91)という仕様になっている。

P3-VPS型はまったくの新設計で、排気量は1298cc、ボア・ストロークは71.0×82.0mmとスモールボア、ロングストロークの設計である。これは単に低速型の設計というより、燃焼速度を早め、ノッキングを抑制する目的がある。さらに冷却損失をできる限り少なくするために、スモールボアを選んだという意味もある。そして、アルミ製シリンダーブロックはハーフスカート式で、クランクを支えるロアブロックを持つ。圧縮比は14.0と高圧縮である。なお、プリウスに搭載されるエンジンもレギュラーガソリンで圧縮比13.0としているが、これはアトキンソン(ミラー)サイクルで運転することが前提での高圧縮比である。

P3-VPS型_2
燃焼効率を高め、できる限りエネルギー損失を抑える

P3-VPS型も軽負荷時にはミラーサイクル運転を行うが、高負荷ではミラーサイクルを使用しないため、直接噴射による燃焼室冷却、ノッキングの発生を抑制するキャビティ(窪み)付きピストン、自己着火を遅らせるためのEGR(再循環排気ガス)水冷クーラーを採用している。

SKYACTIV-G 1.3 クールドEGR
ノッキングの発生を抑制するクールドEGR

シリンダーヘッドは、チェーン駆動式DOHC、ローラーロッカーアーム式バルブ駆動を採用し、吸気カム側には電動可変バルブタイミング、排気側を油圧式可変バルブタイミング・システムとしている。吸気側に、よりコストの高い電動式可変バルブタイミングを採用した理由として、これまでのミラーサイクルエンジン(MJ-VEM型)の最大可変角80度に対してP3-VPS型は110度と大きく、かつ作動時間もより早くするためだ。

この吸排気可変バルブタイミングは、軽負荷時には大幅な吸気遅閉じを行い、同時に排気の遅閉じを行うことで内部EGR量を制御し、スロットル開度を大きくしてポンピングロスの低減を行っている。エンジンの負荷が増大すると、吸気カムは瞬時に最進角されるのだ。つまり日常的な運転ではミラーサイクル運転を多用するのである。だから常に高圧縮の状態ではなく、圧縮比も常に可変しているということだ。

インジェクターは燃焼室に向かって横方向から噴射するレイアウトをとる。最高燃圧は200気圧とガソリン用としては世界トップレベルの燃圧だ。またインジェクターはソレノイド式で、噴口は6ホール。微粒子化した燃料で2段噴射を行い、燃焼室の冷却と均質な燃焼を行う。(BMW、メルセデスが採用する高圧直噴も最高200気圧。コモンレール式/ピエゾインジェクターによるスプレーガイド噴射方式で、これは燃焼室真上から噴射し成層燃焼、希薄燃焼を行うシステムで、同じ高圧直噴ながら使用法は異なる)

ちなみにこの高圧噴射と、電動可変カム、水冷EGRクーラーがコストアップ要素だが、ダウンサイジングコンセプト・エンジンのターボやインタークーラー装備よりは安いということになる。そして、大量EGRを使用しての運転となるため、点火プラグは両電極が針形状のプラグ(針-針プラグ)を採用し、着火性を確保している。また点火プラグの根元にはプレ・イグニッションセンサーを装備し、ノッキング制御を行っている。

P3-VPS型は新設計されたため、内部のフリクション低減にも最大限の配慮を行っている。シリンダーヘッドではカムジャーナルの鏡面加工、ローラーロッカーアーム、そしてバルブスプリング荷重の低減が行われ、最大出力は5400rpm(従来のミラーサイクルでも最高出力回転数は6000rpm)で、かなり低い。

内部パーツでは軽量ピストン、低張力ピストンリング、細軸鋳鉄クランクシャフト、さらには2段可変式オイルポンプとし、最高油圧も4kg/cm2 弱にしている。エンジン出力は84ps/5400rpm、最大トルク112Nm/4000rpmで、従来からのミラーサイクルエンジンより約50cc排気量が少なく、出力、トルクもやや低めになっている。

出力トルク

このP3-VPS型はアイドリングストップも装備しているが、従来のマツダのシステムを改良し、Dレンジだけではなく、L、Pレンジでもエンジンを停止する。また停止時に吸気カムを遅閉じにすることで、再始動時のエンジン振動を少なくするなど、細かな改良が加えられている。

バッテリーも従来は2個搭載していたが、今回からは大型1個に変更された。さらに高出力オルタネーターと充電制御を組み合わせ、減速時の発電性能を従来比2倍に向上させ、走行中の燃費向上に役立てている。

バッテリーシステム

トランスミッションは従来から設定されているアイシン製CVTで、アイドリングストップに対応して電動油圧ポンプを追加しているのみだ。ただし、エンジン負荷とCVTの最適変速を制御するため、総合トルク制御を採用し、P3-VPS型の燃費性能と走りを最大限に引き出すようにしている。

文:編集部:松本晴比古

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